空気は読めないのでなく読まない
どうやら仙人の国は本当にあったらしい。21世紀の日本に。神通力のごとくふしぎな力を当たり前のように操る人たち。
なんのことはない。僕らだ。誰に教わったわけでもなく当たり前のように空気を読み、当たり前のように察する能力を持っている。
あらためて考えたらすごいんじゃないか。
そんなことを考えたのは、妻からこんな話を聞いたからだ。
あるところで年上の知り合い(とくに親しい関係ということでもない)から「LINE交換しよ?」と言われて、一瞬、謎の間が生じたときに「そんな嫌な顔しなくてもいいじゃん笑」と言われたことがあったらしい。
妻的には「嫌な顔」なのではなく、そもそも必要性を感じないのに誰とでもLINEを交換したりもしないから「なぜ?」というナチュラルに疑問の顔だったのだ。
「私からは何も連絡しないですよ。それでもよければ」
妻の返しに、相手は「いいよ」と言ったので、本当にそれでもいいならとLINE交換したのだという。ふつうに空気を読んで考えれば、まあまあのハードルを越えてきてる。
まじか。女の人同士、しかも自分より年上の女の人に「ちゃんと思ったこと」言うんだ。空気読んで「ぜひぜひー」とか言わずに。
以前なら思っても言わない選択をしてたのが、あえて言うように変えたらしい。
いや、いいと思う。なぜなら「本当に」思ってることは、空気読まずに言ったほうがいい結果になるのを経験的に知ってるから。LINE交換のくだりも、本当に思ったことを伝えて、そこをちゃんと越えてるわけだから結果的には逆にお互い嫌な思いをしてない。
そこは仙人になって空気読めるより「読まない」ほうが、ちゃんとしたコミュニケーションが成り立つんじゃないかと思う。
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「空気を読んで」思ってもないことを言ったり、行動してもそんなのは所詮その場しのぎだし表面的だから薄っい。
表面的なものでいいと思ってる相手ならそれでもいいかもしれないけど、ある程度の人生を生きてる相手だと、そういうのは伝わってしまってる。
だったら、空気読まずに「本当に思ったこと」を言ったほうがいい。一瞬、空気が変わるかもしれないけど、そっちが本当の空気なんだから仕方ない。それでもいいよという相手なら、そこから何か生まれるかもしれないし。
空気読めないことで悩む人もたまにいるけど、そもそも本当に「読めない」人は悩まないんじゃないか。
みんなを困惑に陥れる空気読めないは「思ってもないこと」を平気で言ったり「そこで言わなくてもいいこと」言う人の話で、あえて空気読まずに「思ったこと」言うのはむしろ誠実だと思うんだけど。