ずっとオードムーゲのままでいて
ずっと気になってた。道路脇にたなびく《オードムーゲあります》の緑色した幟(のぼり)。
あえてなのかナチュラルになのか、デザイン性という点はすっ飛ばして、ひたすらまあまあの太字で「オードムーゲ」と迫ってくる。
文字に比べるとかなり小さめに、白っぽい容器のイラストも入ってるのだけど何なのかはよくわからない。とりあえず「オードムーゲというものがある」ことを訴えているのだ。
幟の前を通るたびに、なんなんだろうオードムーゲ気になるわと思ってたら、たまたまこんな記事が引っかかった。インターネッツの海は何でもあるな。
『食べるな:オードムーゲ食べたい→食べてみた』。安定のねとらぼ仕様だけど、こういう記事になるぐらいだからそれだけ「気になる」ものがあるんだろう。僕は当たり前のように、まんまと釣られて記事を読む。
というか、いままでオードムーゲ知らずに生きてきたの? いまごろ? という驚きの声が遠くからさざなみのように聞こえてきそうだけど、そんなものだ。知らないことなんていっぱいある。
まあ、オードムーゲの正体はねとらぼさんの記事を読んでもらえばいいし、たぶん1億人ぐらいには既知の話なので。
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それより、静かに胸をなでおろしたのは「オードムーゲ」の名前がちゃんと残ったところだ。
もともと1950年創業の老舗、医薬品・医薬部外品・化粧品メーカーのロングセラー商品で2013年に、あの小林製薬に子会社化されて、いまは小林製薬ブランドとなり商品リニューアルもされている。
こういうケースでは、商品名も一緒にリニューアルされてしまっても不思議ではないのだけど「オードムーゲ」の名前を変えるのは「我慢した」らしい。
あの小林製薬がよく我慢したなぁと思う。わかりやすい商品名にあれだけこだわってる会社なのに。
もともと「ムーゲ」という商品があって、何ものにもとらわれず自由であるところの「融通無碍」(メーカー的には、何ごとにも差しさわりがないという意)から取った商品名。そのオード(液体)版なので「オードムーゲ」。
そんなのふつうはわからない。だけど、老若男女問わずファンがいるオードムーゲは「オードムーゲ」という名前だから愛されるし、ずっと謎のインパクトを持ちつづけられるのだ。
わかりやすいものが正義で、ものづくりやマーケティング、メディアいろんな現場で「もっとわかりやすくしないと売れない」「誰でもすぐわかるようにしてください」と言われるのだけど、もしオードムーゲがわかりやすい名前のわかりやすい商品だったらどうなってたんだろう。
たぶん、僕は興味を持つこともなかったと思うし、なんならちょっと使ってみたいとさえ思い始めてるのもなかったと思うのだ。
わからないけど気になる。そういうのって昔もいまも大事だと思うよ。