見出し画像

東風戦のススメ

麻雀の東風戦と聞いて、どんなイメージを浮かべるでしょうか。特にネット麻雀においては「あくまで麻雀を覚えたばかりの小手調べであり、本領は半荘にある」という認識が主流かと思います。実際、雀魂の玉の間だと夕方の常時接続数5000人に対し東風は500人と、実に1/10の人口しかおりません。しかし私は、玉の間だからこそ東風戦が熱いのではないかと感じています。

私も以前は半荘をメインとしていました。結婚して子どもが出来てからというもの、まとまった時間を取りづらく自然と東風戦を選ぶようになりました。半荘だと平均30分はかかるところを東風戦だと15分で終わるので「気づけば子どもをお風呂に入れる時間だった」とか「家族でそろそろ買い物に出かけないといけない」という状況に対応しやすいという実生活でのメリットがまずあります。これはまぁ時間拘束を考えると当たり前ですので、それ以外で東風戦ならではの熱さ及び上達のためになるメリットを語っていきます。


①バトルロワイヤルである

半荘だと最低8局に対し東風はたった4局で終わります。8局もあると「他家がリーチ合戦等で自滅するまではとりあえず様子見」という戦法を取れなくもないですが、東風でじっくり構えていると地蔵ラスが非常に起きやすいです。どれだけ振込を避けていても、麻雀にはツモがあるため僅かな親被りでもラスに直結します。降りても敗北、攻めても返り討ち。攻防が激しいため生死を賭けた匂いがプンプンと漂い、徒手空拳で地下闘技場に放り込まれた様相を呈しています。守るだけでは始まらないので、たとえリーチに対してでも喰いタンのみで躱しにいくという行為が見た目以上に優位に働きます。データ解析サイトである牌譜屋で調べると、全段位において半荘より東風の方がそれぞれ和了率も放銃率も段位ごとの平均が0.5%は上回っていることが確認でき、いかに参加率がモノをいうかを実感させられます。ネット麻雀をやっていると、段位が伸び悩んできた⇒ラスを引かないようにしよう⇒今度はトップ率が下がってきた…というスランプはほぼ必ず訪れますが、あくまで麻雀の本質は闘争であるという事実を東風戦は教えてくれます。


②速攻が上達する

半荘は満貫を作るゲームですが、東風はザンク(3,900点)を作るゲームといっても過言ではないかと考えます。親が一周すれば終了、25,000点開始の30,000点返しという条件下で他のプレイヤーも1,000~2,000点で一抜けできれば十分と行動するため5,000点さえ作れればトップという状況もザラにあります。例えばタンピンドラの一向聴で、6巡目ぐらいで早々と鳴いて聴牌にとることも往々にして見られます。もう少し面前で耐えてリーチすれば一気に基準点をクリアできるじゃないかというのは勿論ありますが、こと東風戦においては確実に和了しておくことにより重きを置かれます。牌譜屋を見ても高段位ほどダマ率が上がる代わりに平均打点が下がっていく傾向が見られるので、決定打を焦るのではなく少しでも確実な優位を選択しておくほうに軍配が上がるようです。プロでも副露率が高い方ほど成績を安定して上位にキープされているので、やはり聴牌は偉大なのだと実感します。鳴きのフットワークが軽くならないと東風戦では生き残れないため、ここで臨機応変さを養っておくと半荘でも活かせるので良い練習になるのではないでしょうか。

③2倍の早さで上手くなる

半荘は東場で事故を起こしても「まぁ南場で盛り返せばいいか…」と気を持ち直せるものの、前述のとおり東風戦は一度直撃を喰らえばイコール致命傷となります。東風戦という響きだけだとライトに感じますが「半荘で全員がほぼ初期点のまま南場に突入した」と言い換えるとその緊張感が伝わりますでしょうか。オーラスが近づくにつれ、通常の麻雀技術(牌効率・押し引き・副露判断・読みetc...)に加え、点差状況の把握が非常にシビアに求められます。場の平均打点自体が低い上に4~6局程でオーラスを迎えるため、最終局の各家点差が±5,000点以内という接戦を迎える頻度が高いです。「リー棒出すだけで着順変わっちゃう」「聴牌料さえ取れて3位がノーテンならラス脱出できそう」「リーチで和了すれば無条件で着順UPするけどダマならツモ直…どうする?」というオーラスならではの絶妙な判断を迫られる状況を2倍の早さで経験するともいえます。上手い人はやはり、こうしたイレギュラーな局面を制することに長けておりラス前から様々なケースを想定して動いています。東風戦だと平場は東一局ぐらいなもので、東二局からは常に点差を強く意識して動かざるを得ないため自然と着順に対する繊細な調整が身についていきます。

④勝っても負けてもすぐ次へ

常に緊迫感のある東風戦ですが1回のプレイはやはり短いです。親倍直撃などのほぼ負け確イベントが序盤で発生してしまっても15分耐えればハイ次ですし、そもそもポイント増減が半荘の半分なので精神面の負担でもかなり楽な部分があります。同じ時間遊ぶにしても、東風は半荘の2倍の早さで結果が出るので本来の腕前が反映されるまでの確率の収束が早いのではと考えます。半荘で5連ラスを引くのと東風で10連ラスを引くのはほぼ同じ減りになりますが、10連ラスはそうそうないため間に何勝かの浮きは挟むと思います。それだけでもだいぶ気持ちが変わってくるでしょう。


⑤自分で考える癖がつく

これは当たり前のようで当たり前でなかったりします。一つ一つの局面に対して、手組で迷ったら5ブロックで構えましょうとか先制リーチに対して一向聴以下なら基本は降りましょう等、ほとんどの悩みどころに対して先駆者が定石を用意してくれています。近年では統計データを解析されている方が、非常に難しい局面での攻め降り判断についての回答を示されていたり、AIがこっちを選んだからコレが正解らしいということでより総合的な有利・不利を加味した答えが出揃ってきている感はあります。なので、そういった情報をある程度覚えてしまうと後は体が勝手に打牌選択していくようになるため「本当に自分の頭で考えていること」というのは、いくら麻雀が膨大な情報量のゲームであるといっても意外と額面通りの量ではなかったりします。これはある程度打ち慣れた方なら実感するところかもしれません。しかし注意すべきは、それらの定石は基本的に半荘を前提としていること。東風戦は全てが攻め寄りのバランスで成立しています。一回も和了できなければ地蔵ラス候補、これを逃して果たしてあと3局の間にもう一度和了できるチャンスが来るのか? というリスクの中で「役無しドラ無し愚形はリーチ非推奨」が本当に正しいのか? ということです。東風での定石はまだ一般に確立されておらず、ネットで調べても全体的に展開が早い傾向があるといった漠然とした所感に留まっており研究が進んでいない分野ではあります。攻め気味でよいといってもじゃあどこまで踏み込むのがベストかを誰も答えてくれないため、それこそ自分で考えるしかなく咄嗟の判断力を鍛えるための良い練習になると思います。

東風戦なんて運ゲーじゃないか、と見る向きもあるかもしれません。確かに短期決戦ですが、イコール実力が反映されないということではなくむしろ逆です。上述したような予断の許されない場面の連続ですので当然ながら強い人が強いです。一般に、雀豪の課題は押し引きを習得すること。雀聖以降は総合的な地力をとにかく上げるしかないといわれますが、雀聖においてはもう少し具体的なポイントとして、前述の「オーラス間近の立ち回りの上手さ」が重要かと考えます。雀聖以降はラス一回でトップ二回分が吹き飛ぶためラス回避は喫緊の課題ではありますが、魂天までいける人というのは凡百の雀聖(たとえば私のような)と違って最終的な順位を想定した行動選択を確固とした軸として持っています。ここの感覚はオーラス前を何百回、何千回と経験しなければ身につかないため、短いスパンで決着を繰り返せる東風戦はやはり自己鍛錬に最適ではと考えます。

以上です。言うまでもありませんが東風・半荘のどちらに優劣があるかということではなく、東風は東風で良さがあるよという話でした。

余談ですが、東風のポイント配分がそのまま半荘の2倍になるわけではありません。玉の間の雀豪、雀聖で確認したところ、トップを取る場合として東風の約1.78倍のポイントが半荘のトップとなる計算です。その比率でラスを引いた場合の減りを計算すると雀聖1までは東風戦で打ったほうがほんの少しだけポイント減が甘いです。代わりに、雀聖2以降は東風で打つほうが損になります。でも私は皆さんに、雀聖2以降も東風で殴り合いをしてほしい…。麻雀とは魂と拳が持つ熱量がすべてなのだから。






いいなと思ったら応援しよう!