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唄の輪

あの子の声は
今日もとても美しい
わたしもあの子みたいに唄えるようになりたいな

わたしは鳥のルウ
わたしたちには
とてもたくさんの声があって
みんな思い思いに唄うの

ときどき
ばらばらに唄い始めた声が
いつしかひとつになって
大きなエネルギーになることがあるわ

ばらばらで唄い続けることが
それぞれのよさを活かして
素敵な歌になることもある

だからわたしは
唄うことが大好き

この前
森の学校でハミングを習ったの

わたしはハミングを上手に唄えるようになりたくて
毎日練習をしている

今日も唄いながら帰っていたら
帰り道にいつものあの子がいて
あの子は相変わらず素敵な声で唄ってる

こんにちは
あなたの声は素敵ね
あまりにも素敵な声だから
いつも聞き惚れちゃうわ

声を褒めてくれてありがとう
わたしはね、自分の声があまり好きではないの

えっ!どうして?
とっても素敵な声なのに

わたしの声は高すぎて
ハミングをすると
いつも目立ってしまうの
わたしはみんなと同じように唄いたいわ

みんなが素敵って思っても
本人にとっては
素敵って思えないこともあるのね
自分の声を好きだと思えないこともある

わたしは。。。
自分の声
嫌いではないわ
むしろ好きだわ
あの子みたいな声だったら
もっと素敵かもしれないけれど
でもわたしは
今の自分の声が好きだと思っている

どんな声でも
自分が好きだと思っていたら
それでいいのだと思うし
声さんも喜ぶと思うわ

森の学校の授業で
ハミングの練習をしているとき
いつものあの子を見かけた

あの子はとてもとても小さな声で歌っていた
ああきっと
自分の声が高すぎて目立ってしまうから
目立たないように小さく歌っているのね

帰り道
森であの子に会った
わたしは声をかけてみた

こんにちは

こんにちは

あのね、提案があるのだけど
わたしとハミングしてみない?

えっ?!
わたしと歌ってもきれいなハミングに
ならないと思うわ

きれいなハミングにする必要はないわ
一緒に唄っていくうちに
お互いが気持ちよく唄えるところが
わかってくるわ
わたしはそれがハミングなのだと思う

わかったわ
やってみましょう

わたしたちは一緒に唄い始めた
最初はこわごわと
お互い相手を探りながら
少しずつ声を出して行く

唄っていくうちに
ふと心地よく声が伸びるところがある
ふたりともすーっと声が伸びるところ
声が合わさる場所

唄っていくうちに
合わさる場所は少しずつ増えていって
いつしかそれはとても美しいハミングになっていく

わたしたちは
お互い心地よく
お互いの声に耳を傾け
委ねながら
自分の声を乗せていった

ああ気持ちよかったわ!

唄い終えて
彼女は今までで一番の笑顔で言った

わたしもとても気持ちよかったわ
今までで一番のハミングを唄うことができたわ

ルウ
一緒に唄ってくれて
どうもありがとう
わたしはあなたのおかげで
初めて自分の声を好きだと思うことができたわ

あなたの声は
とってもとっても素敵な声よ

わたしたちは顔を見合わせて
ふふふと笑った

そしてまた
ハミングを唄い始めた

ふと空を見上げたら
空には大きな虹が架かっていた

まるでわたしたちの唄声を
祝福するかのように

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