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【短編小説】魔女の弟子になりたくて第二話
「魔法薬店 調合手伝い等 未経験可」をクリックすると他の求人票と同じ様式の求人票が出てきた。
魔法薬店 Lily(リリー)
魔法薬店 調合手伝い等 未経験可
職種 魔法薬調合手伝い、薬草収穫、店番(接客有)、掃除、他
勤務時間 1日3時間からOK
薬草収穫期は残業をお願いするかもしれません
給与 時給1,100円(研修期間は1,000円)
勤務地 ○○駅徒歩15分
職場環境 裏庭があります 四季を感じられる職場です
猫がいます(猫好き大歓迎!)
求人理由 長年働いていたスタッフが定年をむかえたため
普通を装っているけど、ところどころおかしい。
しかし、勤務条件はそれほど悪いようには感じなかった。勤務地も学校の隣の駅だ。できれば、もう少し時給が高いほうが嬉しいが、はじめてのアルバイトだと思えば、まぁ、許容範囲だろう。
それに「魔法」という言葉に花菜(はな)は心を奪われていた。
(本当の魔法かな?)
もしかすると、魔法と剣の世界が身近にあるかもしれない。本の世界だけではないかもしれない。そう思うとこのページを閉じて次の求人票を検索する気になれなかった。
しかし、正気な自分もいる。
(魔法とか言って怪しいお店かもしれない。犯罪まがいのことしているかも)
長い間正座のまま、唸りながら考えていた花菜だったが、年長者の意見を聞こうと立ち上がった。
長時間正座をしていたから足がしびれていたが、何とか階段を降り、リビングのドアを開けた。母親の陽菜夕飯の支度をしていた。
「あ、!ちょうど夕飯できるところ!ご飯よそって!」
「はーい」
花菜は自分と陽菜(ひな)のお茶碗を棚から出すとご飯をそった。その間に陽菜はおかずをダイニングテーブルに運んでいた。
いつ言おうかとタイミングを見計らいながら、お茶碗をテーブルに並べ、箸やお茶の用意をした。
「お、ありがとね!じゃ、食べよ!」
「「いただきまーす」」
父親の優土(ゆうと)は大体遅く帰ってくるので、夕飯は別でとる。
食べ始めてしばらくして、いつ言おうか考えていると陽菜のほうから
「そういえば、アルバイトどうなった?何かいいのあった?」
と、話を振ってきた。
(今だ!)
花菜は持っていたスマートフォンの画面を陽菜に見せた。
「これいいなと思ったんだけど、どう思う?怪しいかな」
「どれどれ?」
と言いながら陽菜はスマートフォンを受け取った。
「行動あるのみ!警察と病院にお世話にならなければなんだってやってみること」が口癖の母親が、怪しい判定をしたらあきらめようと花菜は思っていた。その反面「いいんじゃない?」って言ってくれることを期待して心臓がどくどく脈打っていた。
「いいんじゃない?」
「あ、え?いい?」
「うん、やってみれば?」
「あ、そ、そう?じゃぁ、これ応募しとくね」
「うん。未成年だから親が書類書くことあると思うから早めに言ってね」
「うん、わかった」
想定外にすんなりいったことに花菜は、戸惑ったが、ここで何か言って「やっぱり、辞めれば」と言われたくなかったので、黙って食事に専念することにした。陽菜のほうも、すでにこの春始まったドラマの話で勝手に盛り上がっている。花菜は高揚している気持ちを隠しながら、適当に相槌を打った。
さっさと夕食を終え、自分の部屋に戻った花菜は、さっそく求人票の「今すぐ応募」ボタンをクリックし必要事項を書き込んだ。早くしないと他の人に決まってしまうかもしれない。もう決まってしまったと言われたらどうしよう。はやる気持ちを抑えて、打ち間違いがないか確認し、「送信」ボタンを押す。
返信はすぐに来た。何度かのやり取りでさっそく明日、面接をすることが決まった。
メールでのやり取りを終え、ほっと一息ついた。
(とりあえず、面接はしてもらえるんだ)
気が緩んだ花菜は、椅子の背もたれに寄りかかり、ぼんやりと天井を眺めた。
さっきまでは、とにかくこのチャンスをものにしなくては、と焦っていたが、落ち着きを取り戻すといろんな疑問がわいてきた。
実際行ってお店の雰囲気を確認しなくてもよかったのか?
本当に魔法なのか?
魔法とか言って、本当は詐欺まがいのことをしているんじゃないか?
薬を作って売ってるって法律的にちゃんと許可とってるの?
学校の人たちにはなんていえばいいの!?
嫌な汗がじっとり出てきた。
「私、また、失敗したかも」
(つづく)
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