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「その年、私たちは」-あらすじ
季節は初夏だった。
クク・ヨンスは成績学年1位で、チェ・ウンは最下位。
その両極端な2人が、学内で一緒に過ごすドキュメンタリーを1ヶ月間撮ることになる。
性格も正反対の2人。
ヨンスは無駄な事が大嫌い、周りに合わせない、友達も全くいない、肩肘の張ったとにかくキツい性格。
学年ビリのチェ・ウンは、学校にいる間中、寝ているか、絵を描いてるか、本を読んでるか、ただひたすらにしたいことだけをしているマイペースな性格だ。
合わない2人は衝突ばかりする。
「クク・ヨンス!!」
相手の名前を叫び咎める声が、校舎に響き渡る。
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時間は10年後へ。
「想像と違う。こんな人生のはずじゃなかった」
そんな思いを抱える20代の終わり。
仕事に邁進するヨンスは、5年前に別れた恋人に仕事のオファーをしなければならない状況に陥る。
画家として成功したかつての恋人の家のインターフォンを押したその音は、再び2人の物語が動き出す始まりの鐘だった。
絶対に会うことはないだろうと思っていた、傷つけ合って別れた相手、同い年の彼氏チェ・ウン。
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物語は10年前へと戻る。
人と関わろうとしない点では同じだったウンとヨンスは、一緒にいるうちに、次第に普段と違う顔を見せるようになる。
初夏の陽光は、イタズラをして楽しそうな顔の2人を照らしていた。
そうして撮影の最終日、にわか雨の中という偶然のハプニングの中、青春の真っ只中にいる2人は、瞬間、距離がなくなり、唇が重なった。
一瞬は永遠になり、制服の恋が始まった日となった。
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幼い恋は、高校、大学と一緒に過ごした5年を経て、ヨンスがウンをふる形で終わりを告げる。
理由が全くわからないウンは、立ち去る彼女の後ろ姿に向かって思い切り叫んだ。
「理由は?教えろよ、、僕たちが別れなくてならない理由は?」
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それからさらに5年後、画家となったウンをヨンスが仕事で訪ねてくる形で、再会の機会はやってきた。ウンはいきなり、ヨンスの顔に水スプレーをかけて撃退しようとする。
ばったり出会う時のために彼はそれをずっと練習していたのだと、ウンの親友のキム・ジウンはささやく。
別れて以降、1回も会わなかった2人は、それから偶然によく出会うように。
高校生の頃のように、幼稚にもまた反発しあうヨンスとウンだった。
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あの頃、傍観者として撮影を見ていたウンの親友キムジウンはTV局のPDに。ドキュメンタリーの続編を撮らせてほしいと2人に依頼する。
最初は拒絶していたヨンスとウンだったが、ヨンスへの嫌がらせになると考えたウンは承諾し、仕事のバーターとして仕方なくヨンスも承諾する。
広告プロジェクトのパートナーとして、ドキュメンタリーの相棒として、2人は共に過ごす機会が増えていく。
「僕が真剣に向き合っていたら、受け止められた?」
「もし真剣だったら、どう行動したの?」
恋人だった時の気持ちが瞬発的にぶつかり合ったりもした。
描いてきた絵をヨンスに見せている最中に、
「君が僕の人生を壊した。ボロボロに」
言うつもりのなかった言葉もウンは吐き出す。
なぜヨンスにこんなにも腹がたつのかわからなかった。
ウンの画風を盗む画家ヌアの、逆にウンが盗作者ではないかと世間に疑いをかけられる。意に介してないウンだったが、ヨンスの会社が企画したドローイングショーでヌアと対決することになってしまう。
怒りをぶつけた後で100時間絵を描く姿を撮すチャレンジを始めたウンを心配して、夜中ヨンスは家に行くが、不眠症であるウンは睡眠薬により朦朧としていた。
ショーは成功し、その後ヨンスはひとり、友人のソリの店で泥酔してしまう。
ひたすら絵を描き続けていた真剣なウンと自分の現在とを比べて落ち込むヨンス。
ウンは、眠る自分の傍にヨンスがいたことが夢なのか現実なのか、確かめに会いに行ってしまう。
酔って帰宅したヨンスは、待ちぶせていたウンが昨夜のことを覚えていない様子に安堵する。
すぐに家に入ろうとするヨンスに
「明日は君が覚えていないふりをして」
静かに声をかける。
「これでいいのか?
このままでいいのか?」
ヨンスに近づいていく。
「僕たちの話だ。僕たち本気で好きになって、辛い別れ方をした。再会した時、
『元気だった?』『どうしてた?』
そう聞かれたら、
『つらかった』と言ってもいい、僕たち。」
ウンの瞳にはこぼれそうに涙が滲む。
「『元気だった?』『どう過ごしてた?』」
言った言葉通り、そう訊ねるウン。
ヨンスの頬にも知らぬうち涙がつたう。
けれど何も答えられない。
別れた理由は、独りでも生きていけると思っていた傲慢さ。全部自分のせいなのだと思っていた。
顔を会わせづらいウンとヨンスは、示しあわせたわけでもないのに揃って撮影をサボり逃亡する。が、図書館でばったり会ってしまう。
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高校生の時も撮影からそれぞれ逃亡したことがあった。やはり図書館でばったりと会ったのだった。
その時と同じように、結局2人でごはんを食べに行く。向かったのはウンの両親の店だ。
「まだ君の返事を聞いてない。」
またもやヨンスに訊ねるウン。
「『どう過ごしてた?』」
返事を待つ。
「就職して仕事をして、特に何もない。元気にしてた」
無難に答え、昨日は仕事が大変だったせいでどうかしてたと、泣いたことをなかったこととしてごまかそうとするヨンス。
店から出た帰り道、ウンは無口になる。
そして、
「思い出した。この気持ちだ。
以前付き合ってた時と同じだ。
僕は無力で、君がどんどん遠ざかるのを見てるしかできない。
君の大丈夫を信じるしかないし、何でもないと言われたらそれ以上心配もできない。
別れようと言われたら受け入れるしかできない。
再び君が現れて、なぜ現れたかわからなくても、受け入れるしかない」
と口を開いた。
「...もう...うんざりだ」
攻撃は最大の防御とばかりに、ついにウンはヨンスに言ってしまった。
気まずさからもう会えそうになかった2人だったが、ジウンたちは、彼らを逃げ場のない山中の撮影旅行へと連れ去るのだった。
ぎくしゃくして上手く対話のできないウンとヨンス。
だが、かつて制服の恋が偶然の雨から始まったように、偶然の雨が、旅先でのハプニングを生んだ。
撮影場所で通り雨にあって立ち往生したヨンスを迎えに来たのはウンだった。
まだ気まずい状態の2人。
うんざりだと言われたことが頭にあるヨンスから
「ここにいる?去る?」
「ここにいる?去る?」
そう繰り返し問われたウンは、にわか雨に魔法をかけられたあの初夏と同じく、吸い寄せられるように突然キスをした。
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再会した2人の関係は、大きく曲がり角を迎える。
旅行から帰宅して以降、ウンのことで頭がいっぱいになってしまうヨンス。
ウンからは何の連絡もない。
酒の力を借りた彼女はウンの家を訪ね、私に何か言うことはないのか、と問い質す。
「謝ってほしいの?それが望み?勢いでしてしまったと。僕はイヤだ」
妙に平然としているウンに、
「ならどうしたいの?」
ヨンスはますます戸惑う。
「やり直すつもりはない」
ウンは意外な提案をするのだった。
「僕ら、友達になろう」
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再会の物語は、恋人だった過去の5年間の映像をコラージュさせながら進んでいく。
幸せだったシーン。
悲しかったシーン。
悲喜が混ざりあう色とりどりの記憶たち。
様々なことをその映像は教えてくれる。
彼らがお互いを大好きだったこと。
誰にも言えずに抱えているコンプレックス。
別れなくてはならなかった本当の理由。
想いが残っているのに、どうしてまた手を取り合えないのか。
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そうして厳しい道のりを生きてきた彼らの過去も知っていく。
祖母と2人暮らしで借金を抱え極貧だったヨンス。
母に顧みられることなくいつも1人ぼっちだったジウン。
善良で愛情深い両親から育てられた子であるはずのチェウンが、実は、子供を亡くした夫婦の元へと養子に来た捨て子だったこと。
モノローグとセリフで紡がれる彼らの過去は、とても、痛々しい。
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そして、夏から秋、秋から冬へと変わっていく現在のシーンに映し出されるのは、ウンとヨンスだけでないさまざまな恋の物語だ。
トップアイドルである孤独なNJが、覆面画家だったウンの絵に惹かれ、彼の人となりに触れるたび段々と恋に落ちてく姿は、恋する者たちの共感を呼ぶだろう。
ウンをバス停でみつけた時のNJの笑顔。あれこそが恋をしている瞬間の姿だった。
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秘密の片思いをしているジウンのヨンスに対する初々しい反応は、微笑ましさよりも、切ないという感情を運んでくる。
ジウンは、落ち込むことがあったらいつもウンに会いに行った。ウンは何でもジウンに分けてくれた。色々なものを分けあってきた。唯一分けあえないのがヨンスだった。
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そんなジウンに恋をしているTV局の後輩チェランは、学生時代のジウンのように、好きな人の恋する姿をただひっそりと見ているだけだ。
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恋する者たちのときめきも苦しさも、リアルな息吹で「その年、私たちは」の中できらめいている。
けれど駆け足であらすじを書いてみれば、激しい起伏もなく、私たちの隣にある平凡な人生の物語だ。
でもだからこそ、自分や友人がどこかにいるようで、強く、彼らの世界にいざなわれるのでしょう。
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ここまで、ドラマ前半9話までのあらすじを詳しく記した。
6話までが過去と再会のイントロダクションで、次に、彼らが内面に降り、それぞれ自分と向き合い、枠を越えていく12話までの章がある。
残りの最終章で、これからどう生きていくのかが描かれる。
「その年、私たちは」は恋愛物語であり、癒しの物語であり、再生の物語だ。
傷に囚われ自分というものを決めつけていた彼らは、ゆっくりとステップを踏み、心を解凍していくように自分と向き合う。
過去と現在と未来を見つめる場所にどのようにたどり着いたのか。
自分の人生をどう生きていくのか。
私たちはドラマ後半、彼らの心の旅を見ることになるのだ。
あらすじはここまでにして、次の記事で、彼らの心の軌跡を私なりに考察していきたい。
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