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「ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス」
竹書房文庫 竹書房
フラヌール書店で購入
竹書房文庫の姉妹編「イスラエルSF傑作選 シオンズ・フィクション」と同時に。
(2023 04/29)
読みかけの棚から
読みかけポイント:これも読みかけ途中…
「はじめに」と「ローズウィード」ヴァッソ・フリストウ
冒頭、「はじめに」と「ローズウィード」を読んだ。この本の中にも作品出してるリナ・テオドルのビジュアルアート展に「明日」というテーマで作品書いてと依頼。それらの作品群に何編か追加した「α2525」というアンソロジーがこの本の元。
冒頭作品「ローズウィード」は、温暖化で水没しつつある街で、ダイビングして建物の安全性確かめる仕事をしている女性が主人公。「明日」というテーマなのに、というかだからか、ディストピア的作品が多いこの本の、これはその典型例。
(2023 05/03)
「社会工学」コスタス・ハリトス
視覚に埋め込まれた情報とか、自然環境が悪化しているようなところは、前の作品(というよりこの短編集自体のテーマか)と似ている。この作品のテーマは選挙。
(2023 06/25)
「人間都市アテネ」イオナ・ブラゾプル
都市の独裁政治、あの丘ではじまり数千年にわたって続いた犯罪は、すべての戦争を合わせたよりも多くの個性や命を消滅させながら、理想としてごまかされてきました。
(p65)
と視点人物マデボ駅長に語る弁務官。
さて、この二人がいる世界は、「人本主義」と名付けられていて、上記の通り都市の「独裁」を防ぐため、絶えず人を新しい町へ移住させて回していく。確か旧ソ連とかそういう政策だったような。この弁務官(女性、ちなみに作者も女性)が立板に水的な勢いでプロパガンダを話している一方で、マデボは前地ルブンバシに残してきた妻エマと息子セバスチャンを懐古する…読んでいくうちに二つの乖離が大きくなってきて、一波乱ありそうだと思っていると、マデボが職場である駅に入る瞬間に記憶はさっと消されてしまう。ルブンバシはどこに…
そして、最後、記憶が消されたマデボ駅長が高らかに、新たに到着したアテネ市民に宣言する…
「仕事はあなたを自由にしてくれる! アルバイト・マハト・フライ!」
(p73)
(言うまでもなく「アルバイト・マハト・フライ」はアウシュヴィッツの入口に掲げられていた言葉)
…ここまで来ると、作者がどちら側にいるのかは明らかなのだが、そこまできても、先のp65の文は何かを考えさせられる。ごまかし自体は依然として存在すると…
(2023 09/03)
「バグダッド・スクエア」ミカリス・マノリオス
「カップリング」というある都市と離れている別のある都市が、なんらかの切断面で交わる技術。ここでは、アテネの公園にバグダッドが交差する。イラクの女性と挨拶できたことで興奮する語り手…
一方、現実のアテネも、何パターンかの「アテネ」があって、語り手の女性と知り合った男性、これは別のパターンの「アテネ」の組み合わせであり、普段は交わるべきではないものが交わっているらしい。どちらかは、もう一方の世界のコピーか創造物?
シミュレーションで再現された祖先の人々は、自分の暮らしが現実じゃないなんて見抜けない。そして、そのシミュレーションされた先祖の総和は、本物の先祖たちの総和よりもはるかに大きい集合になる。
(p92)
このシミュレーション仮説の言及が存在するのは、語り手の世のみ。知り合った男性の方は、この対話が終わった後姿を消す。「仮説の言及がある世界にいる君はコピーの世界にはいない」と言い残して。
(2023 11/18)
「蜜蜂の問題」イアニス・パパドプルス、スタマティス・スタマトプルス
(読んだのは昨夜)
SF的かつタイトルの要素である蜜蜂及び人工蜜蜂ドローンの場と、現代的要素(移民政策)の場が両輪となって進む小品なのだが、SFパートの方が自分はあまり理解できなかった。人工蜜蜂?の技師でもある語り手が、アラブの方から天然の蜜蜂持ってきた男に嫉妬して(あるいは自分の地位を奪われると危機感を抱いて)、農園まるごと焼いてしまうという鮮鋭的な話だけに、両輪の片方が自分はぼやけたまま。まあこれは、この短編集全体の元ネタコラボ先の「明日」というビジュアルアート展覧会に、その参照先があったのかもしれないけれど。読者の予測を裏切って宙に浮いたように終わる結末は迫力がある。
(2024 03/05)