「入門ユダヤ思想」 合田正人
前に少しだけ読んだ、「思想史の名脇役たち 知られざる知識人群像」(河出ブックス 河出書房新社)を始めとする合田氏の、興味出てきそうだけどまだ自分には捉えきれない世界の入口案内になるかな、と。
冒頭はボブ・ディラン(彼の家系も東欧出自のユダヤ系?)、最後はダニエル・バレンボイムがスピノザ「エチカ」を本がボロボロになるくらい持ち歩いて読んでいるというエピソード。バレンボイムはエチカに自由の思想を見い出すという。
(2018 07/08)
無限と多島海
序章を昨夜読んだ。
ここまで読んだ感触ではユダヤ教、ユダヤ人のことを語りつつも、その特殊性にではなく、人類一般の共通性へと広げる考え方なのかなと思った。この後どうなるのか。一番の中心はスピノザ、それも「神学統治論」らしい。
合田氏の思索の大元にはこの「無限」というものがある。もちろんレヴィナスの中心思想ではあるけれど、レヴィナス以外にもそれを通して世界を見ようというのが根幹にあるようだ。「名脇役」でもそうだった。
この章では他に切断線とハイデガー、作話機能とベルクソン、ユダヤ始めとする一神教と多島海(グリッサン)など気になる話題。最後のはまた「名脇役」に通じる合田氏の独自性。
(2018 07/28)
「入門ユダヤ思想」は第1、2章。カフカの橋のところの関係性の哲学は、今日最初だけちら読みした大江健三郎「ピンチランナー調書」ともつながるかな? フロイトの「モーセと一神教」に始まる、モーセ=エジプト人説。第2章差異と類似との関係。
まだなんだかわからないけれど、これ読むと完全に理解できたというのは錯誤に過ぎないという(もちろんそれでいい)のはわかる。
(2018 07/29)
レヴィナスと貨幣
第3章はメンデルスゾーン(作曲家の祖父の哲学者)と「市民」について。
第4章はマルクス、エンゲルスに共産主義を導いたというヘスと「貨幣」について。
レヴィナスの言葉。レヴィナスは貨幣に人間関係の基礎を見ている。マルクス始め貨幣には否定的な論者が多い中で、珍しい例。
(2018 07/31)
言語とユートピア
「入門ユダヤ思想」まずは第5章「言語」から
ヘヴライ語聖書の書き方から。母音は符号として付される。
最後には、「スピノザ派」のリクールと、それに対するレヴィ=ストロースという図式が示されるが、まだ自分は消化不良。ただしレヴィ=ストロースも「野生の思考」でスピノザ的「自然」を「構造」に発展させた、という。
続いて第6章「ユートピア」
次はカフカの事例。カフカはパレスティナへ行き、農業労働者として働こうと真剣に考えていたらしいのだが、病のためこれは夢に留まる。
シオニズムでの社会主義的共同体思想の変遷。ランダウアーのいう「人間の国家とは異なる別の諸関係」(p219)は現在ではネット社会とか移民社会とかそっちのモデルになりそうだけれど、ここでは「民族」ということらしい。プルードンの「所有とは盗品である」とかいうのはマッカーシー「アメリカの鳥」にも出てきた。
砂漠の音楽
終章から気になったところを。
P258の書き手で、p259の「彼」であるバデュとレヴィナスとの対立がこの終章での中心話題になっている。どこで対立しているのか、対立していないところはどこでどれくらいなのか、そこらへんもよくわかっていないけど、バデュはレヴィナスの他者論を「他者をある属性で規定してしまうもの」と言っているらしい。
ラストは、自分がこの本の初紹介でも書いたバレンボイムの言葉を。
ここでバレンボイムが「すべては動いている」と言う時、日本人が感じるような水、川、海の感性ではなくて、一見全く動かない、一神教の故地の風景たるパレスティナを奥底で思い浮かべながら、恐らくは語っているという視点を忘れないでおきたい。
(2018 08/05)
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