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「ラブレー周遊記」 宮下志朗

東京大学出版会


ラブレー周遊記

「ラブレー周遊記」は第1部。いろいろとあるのだが、特にこのルネサンスの文学に見られるという作品のちょうど真ん中辺りに作品の鍵を配置して、その周りを様々な異種な声で取り囲むダイアログ形式というのが面白かった。玉葱構造とでも言えばいいのかな。
あとは、第一の書で既に第三、第四の書の予告をしていたり(いろいろ寄せ集めたように書かれているけれど、実はラブレーはかなり容易周到)、スクリーチがバフチーンの研究をきっぱり取り入れなかったように?宮下氏もどっちかというとバフチーン理論には懐疑的だとか、先のスクリーチは中世騎士道物語のパロディーであると同時に実は法律書のパロディーでもあるという指摘もしているとか。
(2014 07/13)

今日読み終え。
故意に古い書体である折衷ゴシック体使っている(第一、第二の書)こと、記憶から記録への図書館の変容についてのラブレーのアンビバレンツな気持ち(「ある意味では彼自身もパンタグリュエルなのであった」(p197))、ビーバーの棲む川からゴブラン織りの下水流れる汚水の川へ(それが貴婦人と尿の川のエピソードが先駆けて伝えている)など。

 ルネサンス時代には、世界を大宇宙(マクロコスモス)とし、人間を小宇宙(ミクロコスモス)として、両者は照応するものという考え方が再浮上した。人体解剖が本格的に始まったのも、こうした観念を背景にしてのことである。
(p179)


(2014 07/19)

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