「アルゴールの城にて」 ジュリアン・グラック
安藤元雄 訳 岩波文庫 岩波書店
安藤氏は前に詠んだ「シルトの岸辺」の訳者でもある。
アルゴール、アルベール
今日から「アルゴールの城にて」を読むことにする。グラックの処女作。
例によって、というか、今まで読んだものより余計にというか、長い長い文章の折り畳み方で、すらすらと読めるものではなく、またそうした文章の一つ一つがいちいち心に引っかかるので、なかなか大変なのでけれど。なんかそうして読んでいくと、最初からもう物語の終わった情報を作者から投げられているような感覚もしてくる。というわけで、さっき読み終えた「墓地」の終わりを少し。雲の描写。
雲を見ているというより、雲を描いたシュルレアリスムの絵画を見ているかのよう。「賑わす」という言葉が淋しい場面に敢えて使われることで、余計に淋しい風景が強調されている。
アルゴールは城の名前、アルベールは登場人物の名前。
(2016 10/10)
崩壊
作者自身がはしがきで書いているけど、ポーの「アッシャー家の崩壊」への目配せか。でも訪問しなければということは心的事象であるということか。城というのが、ある人達の共有物になっていて、その数人の心の中にしか存在しない、とか。或いは誰も自分が見ていないところでの物の存在を立証できない。そういう意味か。
(2016 10/11)
グラックと能
どっちの文も、夢と現実との境目、入ったらその入った場所からは帰れない…という特徴が読み取れる。
この作品が大好きだった倉橋由美子が、能の舞台と語り手のシテに例えているのが興味深い。能面つけて、登場人物の個人を越えた、関係性の図式のみに還元されていく、そういう仕組み。
(2016 10/12)
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