「共生のイスラーム ロシアの正教徒とイスラーム」 濱本真実
シリーズ・イスラームを知る 山川出版社
今日は「共生のイスラーム ロシアの正教徒とイスラーム」を読んだ。
黒海とカスピ海の北方草原地帯のムスリムと正教徒の共生の歴史。持っている本としては「ヴォルガ・ブルガール旅行記」と、「スルタンガリエフの夢」の間の時代。
イヴァン雷帝のカザン・ハン国征服(1550年代)以来、一定の宗教的寛容の時代を経てだんだん正教への改宗が強くなってきたこと。しかし、スペインなどど異なり「改宗か国外追放か」というものではなくムスリムも留まることができ、特に一般農民の改宗はほとんど進まなかったこと。
ヴォルガ河流域と沿ウラル地域では異なり、前者では徐々に正教の改宗圧力が強まったのに対し、後者ではロシアの東方拡張政策の影響もあって返ってムスリム化が進展したこと。それとあいまってタタール商人層が繁栄し、またムスリム留学生がブハラなど中央アジア、またカイロまでも留学した(ロシアへの諜報活動という側面も少しはあったみたい)こと。
エカテリーナ2世時代には啓蒙思想の影響でムスリムの地位が向上したが、ロシアの中央アジア侵略が進みロシアが国民国家として求心的になった19世紀には、ロシアとロシア・ムスリムとの格差は歴然となったこと。こうした事態をみて、イスラム改革運動がウラマーなどの層で起き、またロシアに学ぼうとする知識人層も出てきた。両者は別々に交流もあまりなく進展したが、19世紀末両者を結びつけるような人も出てくる。まとめ?箇条書き?はこんなところ。
(2011 09/12)
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