「ポーランド旅行」 アルフレート・デーブリーン
岸本雅之 訳 鳥影社ロゴス企画
独立ポーランドの二つの側面
今日から今年の2月に買った、デーブーリンの「ポーランド旅行」読み始めた。 デーブーリンはもともとはポーランド出身のユダヤ系の家系。第一次世界大戦後、独立したポーランドへ向かってベルリンから旅立つ。
ドイツの作家であるという出自、ポーランド出身であるという出自、ユダヤ系であるという出自、とまあ3つ重なってのポーランドへの旅。独立を果したポーランドには好意的だが、ナショナリズムが強くなってきているポーランドには警戒的。出だしはワルシャワから。 結局、デーブーリンの杞憂通り、もう一度大戦が起ってしまうのだが…
(2008 10/07)
ヴィリュニスの城とルブリンの扉
「ポーランド旅行」は現リトアニアの首都ヴィリュニスへ。この当時はポーランド領ヴィルノと呼ばれていた。といっても、別にヴェルサイユ条約でそうなったわけではなく、その後新生ポーランドが「大ポーランド」目指して戦争を起こし占領したところ。
昔、中世にはポーランドとリトアニアは連合し大きな国を作っていたのだが。 果たして、この両国、仲がいいのだろうか? お隣の大国ロシアもいることだし。ウクライナも半分はポーランド(の時代があった)。そして、現在は? 行ってみなければなるまい。
(2008 10/09)
デーブーリンの「ポーランド旅行」も中盤。昨日も書いたヴィリュニスからルブリンへ。ヴィリュニスの城では、ロシアの圧制者の不安と下水設備不良による臭気を巧く結び付け、ルブリンでは、これまた古い10世紀!のホテル?と称して開け閉めがうまくいかない扉の錠と取っ手をユーモラスに描いている。
この作品は紀行文なはずなのだが、こんなところにもデーブーリンの空想が入り交じっていて楽しい。 この2箇所などみていると、読んだことのまだないデーブーリン小説の作風が窺える。それに、怪談などやらせたらとってもはまるのではないか、とも。
(2008 10/10)
グダンスクとユダヤの習俗
だんだんデーブーリンの意識は明白になってくる。「人間も卵を産めばよい」などという提案?などを経つつ、また作曲家シマフノスキとの会合もしつつ。ここでの「ギリシャ精神」や「ロマン主義」の意味するところに安易な理解をしないように注意をしなければならない。ただ確かなのは「ギリシャ精神」や「ロマン主義」を利用したのがナチス・ドイツであったということだ。デーブーリンはポーランドでハーゲンクロイツを目撃する。
(2008 10/14)
今朝、デーブーリンの「ポーランド旅行」読み終えた。最後はこの当時(1920年代)国際連盟の自治都市だったダンツィヒ(ポーランド名グダンスク)。当時はポーランド本国より豊かだったらしいのだが、逆にデーブーリンは幻滅したとまでいかなくてもポーランドに懐かしみを感じるのであった。
この「ポーランド旅行」の読みどころの一つはポーランド各地のユダヤ文化の描写。先に述べた通りデーブーリン自身がユダヤ系だった為、精力的に廻っていく。第二次世界大戦で文化も壊滅的な影響を受けた当地のユダヤ文化を偲ぶことのできる文献になっている。
(2008 10/15)
ポーランド旅行とベルリン・アレクサンダー広場
昨夜、論文検索のサイトでデーブリーンと検索したら、「ポーランド旅行」に関する論文があってそれを見てみる…っと、論文自体は作品紹介みたいなところが多かった…
自分的なポイントはデーブリーンがこの作品でもコラージュ的な、または意識に引っ掛かった何気ない広告文などを挿入する、という手法をとっていたことを確認できたこと。前に「ポーランド旅行」読んだ時にはあんまり気づかなかった(もしくは忘れている)けど…これが「ベルリン・アレクサンダー広場」では最大展開されている。
(2013 02/25)