iPhone16はスマートホーム化への伝道師
iPhone16の発売に伴いタイトルを「無印iPhone15は買うな、買うならProかPro Max」から変更しつつ記事もアップデートしてみた。
まずは昨年のiPhone15祭りの時に書いた元記事
パソコンはMac、タブレットはiPadを使っているがどうしてもiPhoneだけは使いにくくて2009年にDocomoが初のAndroidフォンHT-03Aをリリースして以来、ずっとAndroidユーザーを貫いている(途中2度ほど2台持ちでiPhoneを使ったことはあるが、使い勝手が悪すぎて投げ出した)。
なので、新しいiPhoneが出てもいつもスルーしているのが通例だが、今回はThreadが搭載されているということを聞いてテンションが上がった。
Threadと言えば、スマートホーム業界で話題の新標準規格Matterでネイティブサポートされている通信プロトコルの1つ。
※Matterって何?という人は、過去にnoteしたこちらの記事を参照。
Threadは広く普及するBluetoothやWiFiと同じく2.4GHz帯を使うIPv6ベースの通信プロトコルだが、同じくメッシュをサポートするBluetoothと比較して格段に遅延が少ない。ちなみにBluetoothはMatterの規格の中でも活用されるものの遅延と電波の到達距離が短いことからデバイスの初期セットアップのみで使われる。
Bluetooth比でどれだけThreadが遅延が少ないかは
下記の動画を見てもらえると一目瞭然である。
左側がBluetoothメッシュ対応のスマート電球、右側がThread対応のスマート電球という構成になっていて、Homepodに「Hey Siri, ランプオン」「Hey Siri, ランプオフ」と言ったときの反応速度に注目。
動画ではスマートスピーカーを使っているため、クラウド折り返しの分だけ遅延が見られるが、物理的な照明スイッチを押したときの動作は通信を使っているとは思えないほど遅延が少ない。
Apple製品で言うと、HomePod Miniや第5世代以降のApple TVなんかがThreadを搭載しているが、今回まさかのまさかiPhoneにThreadを搭載してきた。
Threadは家庭内でThread機器同士のネットワークを作っていくため、家に常時置いてあるデバイス向きと言われていただけに、日々イエソトにも持ち出すiPhoneにThreadを搭載してきたことは海外のスマートホーム業界でもどんなユースケースを想定しているのか、と話題になっている。
ちなみにAppleはThreadをどんな用途に使うかはまだ明かしていない。
ここからは想像(妄想?)の世界。
まず考えられるのは、Matterゲートウェイ(Matterの世界ではコントローラとかアドミンと呼ばれる)がなくてもThread対応デバイスを直接操作するというユースケース。
日本でもBluetooth対応のスマートデバイスが散見されるが同じ2.4GHz帯のネットワークプロトコルでもThreadは上記ビデオでも見られるように圧倒的に遅延が少ない。加えて、Bluetoothは実環境下では数メートルしか電波が届かないがBluetoothよりも電波の到達範囲が広いため、スマートホームの初心者がMatterゲートウェイを持っていなくても、対応のスマートプラグやスマート電球を手に入れたらiPhoneだけでスマートホームを楽しめる世界を想像しているのかも、という点。
直接Threadデバイスを操作できるとなると、いずれ出てくるであろうThread対応のスマートロックを直接操作なんてこともできるだろうけど、この点においては遅延を除いてはBluetoothに対する大きな優位性は感じられない。Bluetoothを使ったハンズフリー解錠は、反応速度が遅いことで知られているので、遅延が極端にないThreadの特長を活かした若干のUXアップなんかは期待できるけど。
次に考えられるのは、いずれ使い古されたiPhoneをMatterゲートウェイとして活用するユースケース。移動型ゲートウェイとしても使えるため、オフィスやホテルなどに言ったときにも周辺機器をパーソナライズして使うなんてことができるかもしれない(その辺の認証やセキュリティ周りの作り込みが複雑そうだが)。
あと考えられるのはパーソナライズでの用途。もちろん、最近のiPhoneにはLTE/5G、WiFi、Bluetoothに加えUWBなんかも入っているので、ThreadがパーソナライズなUXにどれだけ寄与するかはわからないが、前述したようにThreadはBluetoothよりも電波が届くため、家に近づいてきたことを検知して家のオートメーションが動作する、家から離れたことを検知して家のオートメーションが動作する、なんてことを想定しているのかもしれない。
今はまだiPhone15でもPro/Pro MAXのみの対応だが、いずれこれが普及してくれば在不在を検知する手段としても有効になると思われる。
いずれにしても今は妄想の世界を抜けられないが、これからAppleがThreadを活用したユースケースを徐々に明らかにしていくと思われるので、近未来が楽しみで仕方がない。
ここからiPhone16祭りに合わせて更新した記事
当時は全くの推測で書いていたが振り返ってみてみると、当時の妄想は当たっていたことが下記のThe Vergeの記事により発覚。古いiPhoneのMatterゲートウェイ化という点は外れていたけれど。
この記事の内容をChatGPTを使って要約させてみた。
今週リリースされたiOS 18により、Apple Homeでのスマートホームデバイスの追加が大幅に簡単になりました。これまでMatterデバイスをApple Homeに追加するには、ハブやボーダールーターが必要でしたが、iOS 18では新しいiPhoneがあればそれが不要になります。これにより、スマートホームを始めたいユーザーにとっては、手軽にデバイスを追加して操作できる環境が整います。
Matterは、スマートホームの標準規格として、複雑さを減らすことを目的としています。iOS 18では、Wi-FiデバイスであればiPhoneのみでApple Homeに追加でき、Threadデバイスの場合は、Threadラジオを搭載したiPhone 15 Pro以降のモデルが必要です。
ただし、ハブは依然として重要な役割を果たします。ハブがあることで、モーションセンサーでライトを点けたり、「おやすみ」オートメーションでサーモスタットを調整したり、外出先からドアのロックを操作するなど、より高度な自動化機能が利用できます。将来的に、より多くのスマートホーム機能を活用したい場合は、HomePodやApple TV 4Kなどのハブを導入することで、さらなる利便性が得られます。
興味深い点として、これは以前のAppleのHomeKitプラットフォームに似た仕組みです。以前はWi-FiやBluetooth経由でデバイスをiPhoneから直接操作できましたが、Matterの導入後はハブが必要になりました。iOS 18により、MatterとHomeKitの機能が再び近づき、Matterデバイスのローカル制御が可能になります。
AppleはHomeKitからMatterやThreadへの移行を進めており、iOS 18ではMatterのWi-Fiデバイスを直接制御できるようになりました。ただし、Threadデバイスは少し複雑で、iPhone 15 Pro以降のThread対応iPhoneと、iOS 18対応のThreadデバイスが必要です。現時点では、Eve SystemsなどのメーカーがThread対応製品の互換性を発表しており、今後さらに多くのデバイスが対応予定です。
特にバッテリー駆動のThreadデバイスに関しては、メーカーからのファームウェアアップデートが必要です。Eve Systemsは、電源接続が必要なデバイスであるEve Light SwitchやEve EnergyプラグなどをiOS 18での操作に対応させており、将来的にはバッテリー駆動デバイスも2025年までに対応する予定です。
このアップデートにより、Matterの「デバイスを購入してすぐに使える」という目標に一歩近づきました。Android 15やGoogle PixelでもThread対応が進んでいるため、他のプラットフォームでも今後同様の機能が提供される見込みです。
じゃ、iPhone16はどのモデルがThread搭載かというと、ジャジャーン!
なんと全モデルThread搭載!
日本のAppleにはHomeというアプリがあるのに、ほとんど使っているユーザーはいなかった。なぜかというと対応のスマートホーム製品が日本では限りなく手に入らなかったからだ。
ところが、Apple Homeに積極対応している中国発スマートホーム企業の巨人Aqaraが日本参入をしてきたこともあり、今後はようやく日本でも遅ればせながらApple Homeが流行ることも期待できる。
日本は世界でも普及率で見るとiPhoneが圧倒しており、これをきっかけにして日本でもスマートホームの普及率がどんどん上がっていくかもしれない。
ThreadやMatterについてもっと知りたい人は下記の動画も参照してください。
著者 : 新貝 文将
スマートホームに特化したコンサルティングサービスを提供するスマートホームのプロ集団X-HEMISTRY株式会社の代表取締役。
2013年から東急グループでスマートホームサービスIintelligent HOMEの事業立ち上げを牽引し、Connected Design株式会社の代表取締役に就任。
2018年には株式会社アクセルラボの取締役 COO/CPOとして、SpaceCoreサービスの立ち上げを牽引。
2019年秋にX-HEMISTRY株式会社を設立。スマートホーム事業に関連するノウハウを惜しみなく提供する形で、多くの日本企業向けにスマートホーム事業のノウハウを伝授しつつ、数々のスマートホーム事業企画/立ち上げにも寄与。
2024年春にはMatterやAliroで知られるConnectivity Standards Allianceの日本支部代表に就任。
リビングテック協会発行「スマートホームカオスマップ」の製作も監修しており、スマートホームのエキスパートとして日本のスマートホーム業界で認知されている。
X-HEMISTRYのコーポレートサイト
https://x-hemistry.com/
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