サイゼランチ・ハードラック風
企画のお知らせがお勧め記事として表示され、気になっていました。
どうしようかな、と悩んでいたところ、フォローしている方がこの企画でお書きになっていて、それがとてもとても良かった!
と、いう訳でわたしも書きたくなりました。
申し訳ないことに目安の文字数を超過してしまいました。
でもこれは「人はサイゼについて語りだすと止まらなくなる」からなのかもしれません。(『サイゼ上げ』な言い訳)
大きな病院の近くにサイゼは多い、と思う。
自分の体感ですが。
子どもの小学校で知り合った人の話。
彼女は予定していた自身の「胆石摘出手術」が急遽中止の仕切り直しとなり、脱力しきって向かったのが病院最寄りのサイゼだったという。小学生がいる家庭のお母さんの入院準備は大変で、それがひっくり返ってしまったのだから「やってらんね」だ。
彼女曰く、
「こうなったら豆を食べないと、って思いまして」
これはわかりみが深い。
こういう時に訪れるのがサイゼだということも。そこでオーダーするのが青豆の温サラダだということも。だって豆、おいしいもんね。
それで「大きな病院の近くにサイゼは多い」だ。これまでの経験を振り返れば、わたしも家族の健康がかかわるシビアな局面でサイゼを訪れたことがあった。
当然、何でもない時にもサイゼに行って、例の豆や羊肉などを頼むけれど、より記憶に残るのはシビアな時に行ったサイゼのこと。
まず、20年以上前に母が開頭して脳動脈瘤のクリッピング手術(簡単に言うと脳卒中を防ぐ手術)をしたとき。そして、10年ほど前に父が初期ガンの切除手術をしたとき。
手術の間待合で待機して、「終わりました」と声を掛けていただいて、麻酔がまだ残っている家族の顔を見に行って無事を確認し、待っていただけなのにどっと疲れて。
「何か食べるか」と向かったのが、病院最寄りのサイゼだった。何を食べたかは覚えていないけれど、サイゼに行くまでのシチュエーションや店内の雰囲気などはしっかり記憶しているのだから不思議。
あと、夫の母が入院していた時、夫と子どもが義母に会いに行ってその帰りに寄ったのも、病院すぐそばのサイゼだったかもしれない。そう聞かされた記憶がある。うちの子どもはサイゼでハンバーグをオーダーすることが多いから、そのときもそれを食べたのではないか?
こんな風におぼろげな記憶がほとんど。けれどわたしがどんな状況で何を食べたかを、はっきりと覚えている回もある。1年ほど前に子どもが入院したときだ。詳細は書けないが免疫が関わる病気に罹った。症状が落ち着くまで絶対安静が必要になり、10日ほど小児科病棟のお世話になった。
その間毎日面会に通った。
病院は自宅からそう遠くはなかった。電車で一駅の距離。けれど、天気が悪くないならば電車は使わずに自転車で行った方が早い。片道の距離は3キロ。着替えなどを載せて、電アシなしの子乗せ対応自転車(クソ重い)で毎日走った。
病気は何でもそうだけれど、免疫系の病気は特に「終わりがはっきりしない」と思う。入院期間が10日というのも、経過が悪くなかったからそうなった。もっと長くなる可能性はあったし、退院後も油断はできない。
正直わたしはすごく疲れていた。病院に通うことにも、先のことを考えることにも。
病院の面会は午後から、そして予約制。できるだけ午後いちの回を押さえて12時台に移動した。昼食は抜くか、帰宅後に適当に済ませることが多かった。
けれどその日は、別の用事もあっていつもよりかなり早く病院の近くに来ていた。そしてこの近所にもサイゼがあった。どうする? このコンディションでサイゼが食べられるだろうか? サイゼは油分が多いぞ。でも毎日片道3キロ走っているのだから食べなければ。
病院の駐輪場に自転車を置かせていただいて、わたしはサイゼに向かった。
オーダーしたのはスパゲッティのランチセット。トマトソースと塩漬け豚肉のアレ。重そうだ。セレクトを間違えたか。
でもとにかく食べろ! と麺を巻いて口に入れた。そしてその時「そうだ」「サイゼの麺は柔らかかった」と思い出した。これなら食べられる。久しぶりのまともな昼食。
多分このときのわたしは「アルデンテの麺」は食べられなかった。サイゼの麺だからお腹に入った。伸びていないのに柔らかい、なんとも言えない食感がありがたかった。
大げさではなく、この時この「パルマ風スバゲティ」はわたしを救った。そしてわたしは理解した。サイゼがどういうレストランなのか。
人生で日常で、当たり前にやってくる大小さまざまな不運をしのぐためにリアルな”メシ”を食べる場所、それがサイゼ。
それを求めてわたしはサイゼに行ったのだ。あの時もこの時も。
胆石の彼女もそうだったのかもしれない。
幸い子どもは現在元気に過ごしている。経過観察も卒業した。当然再発は遠慮したい。けれど子どもが元気でも、また別の不運が……。
きっとそのときもまたわたしはサイゼに行く。そう確信している。
で!
そしてやっぱり、サイゼと言ったら「豆」だよね! 「豆」!
削ったチーズと潰した温玉を混ぜてトロリとさせて、そのまま、または他のメニューに載せて食べる青い豆……。