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パリのビルドアップvsアタランタのプレッシング

19/20 UEFA チャンピオンズリーグ
ベスト8
アタランタ vs 
パリ サンジェルマン

~パリのビルドアップvsアタランタのマンマークプレッシング~

 今回は、前回の「パリのポジショナルな攻撃vsアタランタのブロック守備」に引き続き、パリのビルドアップvsアタランタのプレッシングの局面について分析していきます。


スタメン(アタランタ)

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スタメン(パリ サンジェルマン)

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結果 : アタランタ 1 - 2 パリ サンジェルマン
( 前半 1 - 0、後半 0 - 2 )


パリ サンジェルマンの攻撃
(自陣でのビルドアップ)

① 陣形
 パリは自陣からのビルドアップ時、下図のような陣形になる。分かりやすく数字で表すなら「2-3-2-3」となる。

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② ダイレクトなビルドアップ
 この試合、パリは基本的にはロングボールを使ったダイレクトなビルドアップを頻繁に行っていた。
 具体的には、ロングボールを送るのはGKのナバスで、ロングボールを送る基準点はFWライン中央に立つネイマールである。ロングボールの質は、ネイマールの手前に落ちるようなボールを送る。

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 このとき、ネイマールはGKからのロングボールをダイレクトプレーで味方にパスし、FWのサラビア、イカルディやインサイドMFのゲイェ、エレーラと連動して相手のDFラインを崩す。
 ※開始2分のネイマールのビックチャンス(GKと1対1)はこのビルドアップが起点となった。

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 また、状況に応じてネイマールとFWラインのサイドに立つサラビアorイカルディがポジションチェンジし、中央に移動してきたサラビアorイカルディがロングボールを送る基準点となることもあった。

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③ ポゼッションによるビルドアップ
 パリは、アタランタのプレッシングの強度が少し落ちると、ショートパスで相手プレッシャーラインを剥がそうとするポゼッションによるビルドアップを行う。
 このとき、下図のようにGKを含めたDFとMFの8枚で陣形を保ちながらポゼッションを行う。

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 ここで、相手の第1プレッシャーラインを越えるパスを出すのは主にCBのキンペンペとチアゴ・シウバ。また、攻撃のタイミングや方向づけを司っているのはアンカーのマルキーニョスであった。

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 パリは、このポゼッションによるビルドアップでは、なかなかアタランタのハイプレスを掻い潜ることが出来ていなかった。


アタランタの守備
(敵陣でのプレッシング)

① 陣形
 アタランタは敵陣でのプレッシング時、下図のような陣形となる。これはパリの陣形に合わせてマンマークとなるため、見た目では「3-4-2-1」となる。

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 このとき、原則としてオールコートでマンマークとなる。マンツーマンと言うよりは近くで監視するイメージ。

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② 開始点
 プレッシングの開始点(エリア)として、下図の黄色のエリアでプレッシングをする「超攻撃的プレッシング」を行う。
 ※厳密には、自陣ブロック守備でボールを追い出した後などは守備的プレッシング(ミドルプレス)も行っていた。

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③ スイッチ
 プレッシングのスイッチは、相手GKからボールが配給されたとき、または、相手GKが何らかのアクションを起こそうとしたとき
 ここで、パリがダイレクトなビルドアップを行うときは、両WBのゴセンスとハテブール、ボランチのフロイラーとデ・ローンが下りてDFラインの密度を高める。

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 一方、パリが後方からポゼッションによるビルドアップを行うときは、下図のようにマンマークを維持しながら全体を押し上げる。
 このとき、ボールサイドとは逆のウイングバック(WB)は、DFラインに下りて数的優位を確保する。

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 また、相手アンカーに入ったときは、周辺の相手に対するマークの強度を高くして、相手にバックパスを行わせる。

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 また、状況に応じて相手GKが何らかのアクションを起こそうとしたときをスイッチに、FWのパシャリッチあるいはサパタが相手CBへのパスコースを切りながら相手GKへアプローチすることもあった。(これをカバーシャドーという)

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 特にアタランタの先制点は、以上のようなマンマークを基本原則としたハイプレスからボールを奪ったところからスタートした。しかしながら、超攻撃的プレッシングの弱点でもある「DFラインの後方のスペース」を使われると、非常に危ないシーンもいくつかあった。(ネイマールのGKとの1対1など)


 今回紹介した、「パリのビルドアップvsアタランタのプレッシング」の局面は、この試合の中で最も面白い局面だったと思います。
 パリのビルドアップは、完全にアタランタ対策と言えるもので、ネイマールの個人技を活かしたビルドアップは素晴らしかったと思います。
 また、近年はプレッシングが注目されているだけに、アタランタは今後も注目すべきチームだと感じました。

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