ポジションではなく各選手の役割をみる3
21/22 プレミアリーグ 第4節
レスター シティ vs マンチェスター シティ
シティに見た、敵陣でのポジショナルな攻撃
今回は、先日行われたプレミアリーグ第4節、レスターvsマンチェスターシティから、シティの敵陣でのポジショナルな攻撃の局面についてチーム全体の戦術から各選手の役割や能力・特徴までを分析していきます。
スタメン(away : マンチェスター シティ)
(home : レスター シティ)
結果 : レスター 0 - 1 マンチェスター シティ
( 前半 0 - 0、後半 0 - 1 )
マンチェスターシティの攻撃
(敵陣でのポジショナルな攻撃)
● 陣形とプレー展開
シティは、敵陣でのポジショナルな攻撃時、主に下図のような配置となっていた。具体的には、FWラインにWGのグリーリッシュ、ジェコス、インサイドMFのB・シルバ、ギュンドアン、CFのF・トーレスが順に大外レーン、ハーフレーン、中央レーンを埋める。そして、MFラインでは中央にアンカーのロドリ、ハーフレーンにSBのカンセロ、ウォーカーが立ち、DFラインではCBのラポルテ、R・ジアスが後方から攻撃を展開する。
プレー展開としては、サイドの幅を使ってポゼッションを行うことで相手の守備ブロックを崩そうとしていた。その中で、ポジショナルプレーのプレー原則に基づいた配置(下図)による位置的な優位性や、サイドに密集して攻撃を行う数的な優位性、さらに、個の質的優位性を活かした攻撃が見られた。
ここから、各選手の動作から読み取れる役割やプレーから見られる各選手の特徴に注目することで、シティの敵陣でのポジショナルな攻撃の構造をより詳細に分析する。
① R・ジアス、ラポルテ(CB)
【役割・特徴】
1)DFライン中央で攻撃の方向とタイミングを決定する。これは、R・ジアスとラポルテの精度の高いパスを活かしたものである。
2)DFライン大外レーンなどへ移動し、ボールを逆サイドに展開するため一旦戻す必要がある場合にはその出口として機能する。
3)ロングボールを用いて敵DFラインの背後や逆サイドで孤立した味方を積極的に狙う。これは、R・ジアス、ラポルテの正確なタイミングで精度の高いロングボールを送ることのできるという特徴を活かしたものである。
4)MFラインへ自らボールを運ぶことで、中盤やボールサイドに数的優位を作り出す。
5)ネガティブトランジションに備え、相手FW(ヴァーディ)を予防的マーキング、または最終ラインを予防的カバーリングする。
② カイル・ウォーカー(右SB)
【役割・特徴】
1)MFラインのハーフレーンにポジショニング、またはCB(R・ジアス)の脇へ下りてサポートすることで、ファイナルサードへ向けた前進を助ける。
2)MFラインでハーフレーンと大外レーンを行き来することで、敵を動かしスペースを作る。
3)ネガティブトランジション時の被カウンターに備え、危険なエリアとなるDFライン前方のハーフレーンを予め埋めておく。これは、ウォーカーのスピードと高い対人能力を活かしたものである。
③ カンセロ(左SB)
【役割・特徴】
1)MFラインのハーフレーンにポジショニング、またはCB(ラポルテ)の脇へ下りてサポートすることで、ファイナルサードへ向けた前進を助ける。
2)状況に応じて、クロスボールを上げるためにFWラインまでボールを持ち上がったり、敵DFラインの背後へオーバーラップ/インナーラップする。
↓
3)前方でボールを持つ味方の斜め後方でサポートする。
④ ロドリ(CMF)
【役割・特徴】
1)CB前方の中央のスペースにポジショニングし、ポゼッションの中継役となる。これは、ロドリの特徴である正確なダイレクトパスを活かしたものである。
2)前方に位置する選手をサポートできる位置に移動する。
3)クロスボールに対してペナルティエリア前方のエリアをカバーする。また、必要に応じてペナルティエリアへ入り、エリア内の密度を高くする。
4)ネガティブトランジション時に中央のエリアでプレスをかけるための準備をする。これは、ロドリの高いボール奪取能力を活かしたものである。
⑤ ギュンドアン(右IMF)
【役割・特徴】
1)FWライン右ハーフレーンにポジショニングし、位置的な優位性を確保する。
↓
2)ハーフレーンから大外レーン後方に下がることでボールを受ける。または、敵を引き付けハーフレーンにスペースを作る。
↓
3)敵DFライン背後のスペースへ積極的にランニングし、ボールを引き出す。(ハーフスペースの敵最終ライン裏や中央レーンへのランニングなど)
4)クロスボールに対し、必ずペナルティエリア内に侵入する。
⑥ B シルバ(右IMF)
【役割・特徴】
1)FWライン左ハーフレーンにポジショニングし、位置的な優位性を確保する。また、左ウイングのグリーリッシュと同レーンに重ならないようにポジショニングする。
2)ハーフレーンから大外レーン後方に下がることで前を向いた状態でボールを受ける。または、敵を引き付けハーフレーンにスペースを作る。
↓
3)ハーフレーンから大外レーンへ斜めにランニングしボールを受け、質的な優位性を活かして突破する。これは、B・シルバの数的不利な状況でも突破することのできるドリブルを活かしたものである。
↓
4)クロスボールに対し、必ずペナルティエリア内に侵入する。
⑦ ジェズス(右ウイング)
【役割・特徴】
1)FWライン右大外レーンにポジショニングし、後方から斜め前方の位置でボールを受けることで、攻撃に幅をもたらす。
2)逆サイドからのクロスボールに対してペナルティエリア角付近からエリア内に侵入し、フリーでのシュートを狙う。
3)全体で密集と孤立の状況を作り出すために、逆サイドにボールがある時は右大外レーンで孤立する。
⑧ グリーリッシュ(左ウイング)
【役割・特徴】
1)FWライン右大外レーンにポジショニングし、後方から斜め前方の位置でボールを受けることで、攻撃に幅をもたらす。
2)大外レーンから中央に向かって、ドリブルや味方を利用してボールを運ぶことで敵の守備陣形を崩す。
シーン1
シーン2
↓
3)大外レーンへ移動したB・シルバに対して、ハーフスペースへランニングする。
↓
4)全体で密集と孤立の状況を作り出すために、逆サイドにボールがある時は左大外レーンで孤立する。
5)クロスボールに対し、必ずペナルティエリア内に侵入する。
⑨ フェラン・トーレス(CF)
【役割・特徴】
1)全体で5レーンを埋めるため、FWラインの中央レーンにポジショニングする。
2)中央レーンの後方に下りボールを引き出すことで敵CBを引き付け、敵DFラインの背後のスペースを空ける。
↓
3)サイドからのアーリークロスに対して同サイドの敵DF背後のハーフレーンへランニングし、ボールを引き出す。
4)右サイド大外レーンに移動し、縦への推進力を活かしてサイドからの突破を試みる。ボールサイドへ移動することで全体としてサイドのエリアで数的優位を作る。
↓
5)クロスボールに対し、必ずペナルティエリア内に侵入する。
今回は、シティの敵陣でのポジショナルな攻撃について分析した。サッカーの試合には、攻撃のほかに、守備、ポジティブトランジション、ネガティブトランジション、セットプレーという局面が存在する。そして、近年は選手に与えられるタスクは多様化している。そのため、敵チームを分析する際には、局面とタスクに注目するべきであり、チーム全体の戦術からグループ(相互関連性の深いポジションを交差する組み合わせ。右CBと右SB、左SBと左IMFと左WG、トップ下とFWなど。)の傾向、個人の役割・特徴までを見る必要がある。そして、その上で有効な対策を考えることが大切になると思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?