自陣でボールを失った際のプレー原則
~インテルとミランに見た、
自陣ネガティブトランジション時の
プレー原則~
今回は、自陣ネガティブトランジション(攻撃→守備)時の局面において、失点を防ぐためにはどのように対応するべきか、どんなプレーを遂行するべきかといったプレー原則をインテルとミランを例に紹介する。
自陣での攻→守
(ネガティブトランジション)
まずは、インテルとミランそれぞれにおいて、自陣ネガティブトランジション時のシーンを紹介する。
※どちらのシーンも自陣ビルドアップの局面にてボールを失ったシーンである。
・インテルの自陣ネガティブトランジション
・ミランの自陣ネガティブトランジション
ここでインテルとミランの例より、自陣にてボールを失いネガティブトランジションの局面となった際にチーム全体で遂行しなければならない、最も優先度の高いプレー原則(主原則)は以下のようになる。
・主原則
出来るだけ早くゴール前に帰陣し、密集してブロックを形成する。
ここで、ブロックの陣形や配置は関係なく、とにかくゴール前のエリアに密集することが最優先となる。(私の考えでは、GKを抜いて6枚以上が理想的)
また、この原則について「ゴール前」とは、インテルとミランの場合は「ペナルティエリアの横のラインの前後5mほど」となる。また「密集」とは、「ペナルティエリアの幅よりもコンパクト」となる。
敵は「敵陣でのポジティブトランジション」の局面となっていていて、ペナルティエリアの幅以内で攻撃を行う傾向があることからも上記の原則が重要となる。
次に、上記主原則を大前提としてプレーすべき原則を3つ紹介する。
① ボールが中央(ペナルティエリアの幅よりも内側)にあるときは、中央に立つ選手がボールに寄せる。
中央のエリアでは中央に立つ選手がボールに対してアプローチすることで、中央から突破されるのを防ぎ、ボールをサイドへ逃がすことができる。さらに、ボールがサイドに出た際にも後方の選手が寄せることができるため、敵のカウンターを遅らせることが可能となる。
② ボールに対しては中央へのパスコースを消すようにアプローチする。
上記原則は、敵ボールホルダーに対して、中央へのパスコースを消すようにアプローチすることで、シュートコースやより危険なエリアへの侵入を防ぐと共に、ボールをサイドへ逃がすことが狙い。これにより、敵のショートカウンターを防ぐ。
③ ボールがサイド(大外)へ出た際には、必ず1枚がアプローチする。
上記原則の目的は、サイド(大外レーン)から敵がフリーでクロスボールを上げさせないようにするため。さらに、ボールを後方へ下げさせることができればなお良い。
今回は、自陣ネガティブトランジション(攻→守)時に、「出来るだけ早くゴール前に密集をしてブロックを形成する」というプレー原則を遂行することを大前提として紹介した。
一方で、自陣であってもボールを失った瞬間に2~3枚でカウンタープレスのような振る舞いをし、ボールの即時奪還を狙うような原則(主原則)を用いるチームも少なからず存在する。
ここで、自陣ネガティブトランジションとなる前の局面は、決して自陣からのビルドアップの局面だけではない。その他に、自陣ポジティブトランジション、セットプレー、フィフティーな局面(どちらのボールか判断がつかない局面)がある。
そのため、自陣ネガティブトランジション時にどのようなプレー原則を採用するかはあまり重要ではない。むしろ大切なのは、そのプレー原則に明確な目的が設定されているということ、そして、プレー原則は、持てる選手のクオリティを最大限に活かすものでなければならないと思う。
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