攻撃時4-3-3、守備時5-2-3
20/21 ラ・リーガ 第31節
アトレティコ マドリード vs ウエスカ
~アトレティコに見た、ポジショナルな攻撃とプレッシング~
今回は、先日に行われたラ・リーガ第31節のアトレティコvsウエスカにて、アトレティコの敵陣でのポジショナルな攻撃とプレッシングの局面が非常に面白いと思ったため、分析していきます。
スタメン(home : アトレティコ)
(away : ウエスカ)
結果 : アトレティコ 2 - 0 ウエスカ
( 前半 1 - 0、後半 1 - 0 )
アトレティコの攻撃
(敵陣でのポジショナルな攻撃)
① 陣形
アトレティコは敵陣でのポジショナルな攻撃時、主に下図のような配置となっていた。具体的に数字で表すなら「2-3-5」となり、FWラインでは、CFのコレア、ウイングのマルコス・ジョレンテ(右)、カラスコ(左)、SBのトリッピアー(右)、ロディ(左)が5レーンを埋めていた。
② プレー展開
プレー展開としては、ポゼッションによりボールを保持しながらサイドのエリアから攻撃することが多く、配置による位置的な優位性を活かして、または密集による数的な優位性を活かして相手の背後を狙うことが多かった。
③ 相手最終ラインの背後を取る方法
主にサイドのエリアから攻撃する中で、FWラインのハーフスペースに立つウイングのジョレンテ、カラスコが下図のようにハーフスペースから裏へ抜け出し、大外でボールを受けたSBのトリッピアー、ロディがこの裏のスペースへのパスを狙うというシーンが多く見られた。
このとき、サイドのエリアに数人が密集することもあった(下図2枚目)。この密集により、数的優位によって相手最終ラインの背後を取ることができたり、または仮にボールを失ったとしても予めボール周辺に密集している状態であるため、カウンタープレッシングによりボールの即時奪回に成功したというシーンも多く見られた。
(シーン1)
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(シーン2)
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アトレティコの守備
(プレッシング)
① 陣形
アトレティコはプレッシング時、下図のように右ウイングのカラスコが右ウイングバックの位置に下がり、右インサイドMFのサウールが1列前に出て「5-2-3」のような陣形となっていた。
② スイッチと追い込み方
プレッシングのスイッチは主に2つ設定されていたように見えた。
1つ目は、相手のバックパスに対して1枚がボールの受け手へ寄せに出たとき。この試合では、下図のようにCFのコレアが寄せることが多かった。このときは、全体を押し上げながらパスが出されたサイドのエリアでマンマークとなり、ボールの受け手に対してそのマーカーがプレッシャーをかけるという動作を全体で連続して行っていた。
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2つ目は、ボールがサイド(大外)のエリアに配球されたとき。このときは、前線に立つサウール、コレア、マルコス・ジョレンテが中央へのパスコースを消すように立つ、かつお互いの距離感を狭く保つことでボールをサイドのエリアへ誘導し、大外でボールを受けた相手に対しては主にウイングバックの位置に立つトリッピアー(右)とカラスコ(左)が寄せていた。ここでも、ボール周辺のエリアでマンマークとカバーリングを適切に行っていた。
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今回、アトレティコの配置を見て面白いと思ったのは、攻撃時(敵陣)では「4-3-3」における偽ウイングとして前線の内側(ハーフスペース)に位置していたカラスコが、守備時にはウイングバックとして5バックを形成していたこと。このことから、現代のサッカーではフォーメーションという概念はなくなりつつあり、タスク(役割)によってそれぞれの局面の配置が決められているのだと思った。
今季のアトレティコは、カラスコに上記のような役割を与えることが多い。個人的には、もともとのウイングとしての攻撃的な素質(テクニックやドリブル、瞬発力など)に加え、走力、体力、守備力を持ち合わせた選手を3バックシステムのウイングバックの位置に起用することは攻守両局面で非常に有効だと思う。例を挙げるとカラスコのほかにユベントスのフェデリコ・キエーザが当てはまると思う。今後は、このような選手の価値が上がることを期待したい。