数的優位を活かした前進
20/21 ラ・リーガ 第24節
アトレティコ マドリード vs レバンテ
~アトレティコのビルドアップとレバンテのプレッシング~
今回は、先日に行われたラ・リーガ第24節のアトレティコvsレバンテにて、アトレティコの最終ラインでの数的優位を活かしたビルドアップとレバンテのミドルプレスの攻防が非常に面白かったので、分析していきます。
スタメン(home : アトレティコ)
(away : レバンテ)
結果 : アトレティコ 0 - 2 レバンテ
( 前半 0 - 1、後半 0 - 1 )
アトレティコの攻撃
(ビルドアップ)
① 陣形
アトレティコはこの試合でのビルドアップ時(ミドルサード)、主に下図のような配置となっていた。
② プレー展開
プレー展開としては、後方のDF3枚(エルモソ、フェリペ、ヒメネス)とボランチのコケ、コンドグビアでショートパスでボールを保持したのち、前線へボールを配球するという展開だった。
③ 数的優位を活かした前進
ここで、この試合ではDFラインでの数的優位を活かしたビルドアップを行ったシーンが多く見られた。
具体的には、下図のようにボランチのコケあるいはコンドグビアのどちらか一方がDFラインの外側に下り、DFの3枚(エルモソ、フェリペ、ヒメネス)とともに4バックを形成していた。これにより、相手の第1プレッシャーラインの3枚に対してDFラインで4対3の数的優位を作り出すことができる。
このDFラインでの数的優位を作り出す動きにより効果的に前進したシーンを2つほど紹介する。
まず、下図のシーンは、DFラインの右外にボランチのコケが下りてDFのエルモソ、フェリペ、ヒメネスの3枚とともに4バックを形成し、DFラインでボールを左右に動かすなかで、右大外のコケへボールが渡ったシーンである。ここで、相手第1プレッシャーラインの3枚に対して数的優位が保たれていることにより、コケは比較的に相手のプレッシャーの強度が低い状態でボールを受けることができ、相手最終ラインの背後への精度の高いロングボールを配球することが可能となった。
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次のシーンは、DFラインの左外にボランチのコンドグビアが下り、DFのエルモソ、フェリペ、ヒメネスの3枚とともに4バックを形成したシーンである。ここでは、左大外に立つコンドグビアへボールが出るが、相手のプレッシングにより効果的に前進することができなくなっている。そこで、下図(2枚目)のようにサイドチェンジを行う。ここでもDFラインで数的優位が保たれていることにより、下図(3枚目)のように逆サイドでボールを受けたハーフDFのヒメネスの前方にはスペースが生まれ、ドリブルにより効果的に前進することが可能になった。
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レバンテの守備
(プレッシング)
① 開始点
レバンテは敵陣でのプレッシング時、状況や時間帯に応じてハイプレスとミドルプレスを使い分けていた。今回は下図の黄色エリアがプレッシングの開始点となるミドルプレス(守備的プレッシング)について分析する。
② 陣形
ミドルプレス時の陣形は、下図のような「5-2-3」で、まずは中央でコンパクトに構えていた。
③ スイッチと追い込み方
レバンテはミドルプレス時に、コンパクトな陣形で構えることによりボールをサイドへ誘導し、そのサイドのエリアでアグレッシブなプレッシングを行っていた。
具体的に、まず、陣形を中央でコンパクトに構えるなかで、CFのS・レオンがアンカーの位置に立つ相手へのパスコースを消すことによりボールをサイドへ誘導する。その後、プレッシングのスイッチはボールがサイドのエリアへ配球された時で、大外に立つボールの受け手に対して主にウイングのロチーナ(右)、モラーレス(左)がアプローチしたいた。このとき、全体がボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアでマンマークとスペースのカバーを的確に行っていた。
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まず、アトレティコのビルドアップについて、相手の第1プレッシャーラインの3枚に対してDFラインで数的優位を作るという狙いは、ボールを前進させる上で非常に効果的だったと思う。特にDFラインの右サイドに下りることが多かったコケは、キックの質が非常に高い選手であり、コケからの前線への縦パスやロングボールは有効だった。このように、ビルドアップ時にボールを前進させる能力に長けた選手が最終ラインに下りて数的優位を保つことは、現代のハイレベルなプレッシングに対しては非常に効果的だと感じた。
一方、レバンテのミドルプレスは、コンパクトな陣形によりボールをサイドへ誘導させ、そのエリアでアグレッシブなプレッシングを行うという構造だった。そのなかで、ボールのサイドへの誘導の仕方や全体のスライドは非常に良かったと思う。また、アトレティコが最終ラインを数的優位にする動きをしたとしても、サイドへボールを追い込みそのエリアでアグレッシブなプレッシャーをかけるというプレー原則を柔軟に行うことができていた。