マンツーマンによるハイプレスとゾーンによるミドルプレス
UEFA EURO 2020 グループB
デンマーク vs ベルギー
~デンマークに見たプレッシング~
今回、デンマークのプレッシングの特徴は、ハイプレス時はマンツーマンを原則とし、一方ミドルプレス時はゾーンディフェンスを原則としていた点であった。
そこで、デンマークのハイプレスとミドルプレスの局面について、それぞれがどのような構造になっていたのか分析する。
スタメン(デンマーク)
(ベルギー)
結果 : デンマーク 1 - 2 ベルギー
( 前半 1 - 0、後半 0 - 2 )
デンマークの守備
(プレッシング : ハイプレス)
① 開始点
デンマークはハイプレス時、主に下図のエリア(黄色)がプレッシングの開始点となる「超攻撃的プレッシング」を行っていた。
② 陣形
陣形は、相手の配置に合わせマンツーマンとなる。
また、下図のように相手がビルドアップ時の陣形を変えてきた場合(3バック→4バック)でもマンツーマンを最優先とし、相手に合わせて配置を変えていた。
③ スイッチと追い込み方
追い込み方としては、ボールをサイドのエリアへ誘導させ、そのエリアでアグレッシブなプレッシングを行っていた。つまり、ボールがサイドのエリアに配球されたときがプレッシングのスイッチとなっていた。
具体的には、最前線の選手(CFのポールセンやブレイスウェイト)が相手CBへ内側を消すようにアプローチを行うことでボールをサイドへ誘導させる。このとき、相手CBの体の向いたサイドへ全体が連動してスライドし始める。その後、ボールがサイドへ配球されたのをスイッチに1枚がボールホルダーへアグレッシブに寄せ、全体がボールサイドへスライドし、ボール周辺のエリアでマークの強度を高くする。また、逆サイドのWB(ヴァス、メーレ)はDFラインへ戻り、最終ラインのカバーを行っていた。
(右サイド : 相手3バック)
↓
(左サイド : 相手4バック)
↓
デンマークの守備
(プレッシング : ミドルプレス)
① 開始点
デンマークはミドルプレス時、主に下図のエリア(黄色)がプレッシングの開始点となる「守備的プレッシング」を行っていた。
② 陣形
陣形は、下図のようにコンパクトな「5-2-3」となっていた。ここではハイプレス時とは異なり、相手の配置には合わせずゾーンで陣形を構えている。
しかし、CBのケアーは相手CF(ルカク)を常にマークするというタスクが与えられていた。
③ スイッチと追い込み方
追い込み方としては、ハイプレス時と同様にボールをサイドのエリアへ誘導させ、サイドのエリアでアグレッシブなプレッシングを行っていた。
ここで、サイドへの誘導の仕方は、全体をコンパクトにすることで中央の密度を高め、相手ハーフDFに対してシャドーの位置に立つ選手(下図のシーンではブレイスウェイトとポールセン)が中央へのパスコースを消すことによりサイドへボールを誘導する。
そして、プレッシングのスイッチは主にWBのヴァス(右)、メーレ(左)で、大外レーンに立つ相手にボールが出たところをアプローチする。ここで同時に、全体をボールサイドへスライドさせ、ボール周辺のエリアに密集し相手をマークすることでボールを奪おうとしていた。
(右サイド)
↓
↓
(左サイド)
↓
↓
ビルドアップ時にショートパスによるポゼッションで前進しようとするベルギーに対し、デンマークのマンツーマンによるハイプレスは非常に有効であったと感じた。特に、デンマークの先制点は、このマンツーマンハイプレスによるものだった。
特に、ビルドアップ側が相手のハイプレスに対してプレス回避し、チームを敵陣まで押し上げられる確率は10~20%ほどとされている。そのため、守備側は最終ラインの背後が大きく空いてしまうというリスクを犯してでもハイプレスに出る価値はあり、敵陣の高い位置でボールを奪うことができたのならそれはゴールに迫る最大のチャンスになる。