世田谷式ポジショナルプレー
2022 東京都社会人4部リーグ 第2節
Horifoot vs 世田谷ユナイテッド
先日、私が監督を務める社会人サッカーチームのHorifootは、東京都社会人4部リーグにて、世田谷ユナイテッドと対戦する機会を得ることができました。
試合では、世田谷ユナイテッドの斬新なポジショニングによるビルドアップに大変苦しめられました。まさに、ポジショニングで優位性を担保する「ポジショナルプレー」そのものでした。
そこで、そのポジショニングの方法とポゼッションによるビルドアップが非常に面白かったため、分析していきます。
【フォーメーション】
・Horifoot
・世田谷ユナイテッド
【結果】
Horifoot 0 - 5 世田谷ユナイテッド
世田谷ユナイテッドの
自陣からのビルドアップ
① 陣形
世田谷ユナイテッドは自陣からのビルドアップ時、主に以下のような陣形となる。
特徴としては、SBの選手が大外の位置と中央の位置(CMFの脇)を行き来するようにポジショニングを取っていた。さらに、CBの選手は、比較的サイドに開いてボールを受けようとすることが多かった。
また、インサイドMFの選手が後方のサイドのスペース(SBが内側にポジショニングすることで空いたスペース)に下りることで、フリーでボールを受ける / 敵中盤の選手を誘い出し結果的に中央のスペースを空けるというプレーも見られた。
ここで、SBやCBが上記のように移動するなかで、ボール周辺のエリアではお互いが常に斜めの位置関係となるようなポジションを取っていた。
そして、前線のエリアでは、ウイングの選手が常に大外レーンに立つことで敵SBをピン留め。中央レーンでは敵CBの間にCFの選手が立つという配置であった。
② プレー展開
プレー展開としては、後方からショートパスによって前進を試みる「ポゼッションによるビルドアップ」を主に行っていた。
ここで、ポゼッションの中心選手(前進するにあたり最も多くボールをさわる選手)はCBの選手であった。また、CMFの選手は足元のテクニックとパスの精度が非常に高く、あらゆる方向にパスを展開するというような役割を担っていた。
上記でも示した通り、SBの選手が中央(CMFの脇)にポジショニングすることで、敵のマークを混乱させ、敵のマークが厳しい中央のエリアでフリーでボールを受けることが可能となっていた。さらに、SBに対して敵が中央へ付いてくる場合には、サイドのスペースが空くことになり、そのスペースをインサイドMFが下りて利用したり、開いてボールを受けたCBの前方への持ち運びに利用することで、サイドのエリアから敵のプレスを回避するというシーンが多く見られた。
③ プレス回避
ここから、プレス回避のシーンを紹介する。
以下のシーンは、左SBの選手が中央のCMFの脇にポジショニングし、左サイドへ開いたCBからボールを受けたシーンである。この動きにより、SBの選手は中央のマークがタイトなエリアでフリーでボールを受けることが可能となった。さらに、左インサイドMFの選手が後方に下り、SBの選手から斜め前方の位置でボールを受けることにより、クリーンな形でスムーズに敵DFラインの背後へボールを送った。
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【まとめ】
今回は、世田谷ユナイテッドの自陣からのビルドアップの局面について分析しました。
対戦をしてみて一番の驚きだったことは、やはり、ビルドアップ時のSBの選手の中央へのポジショニングと、チーム全体のポゼッションの上手さでした。
SBの選手の中央へのポジショニングに対して、Horifootは敵陣でのプレッシング時にウイングの選手がマンマークするという対策は取ったものの、世田谷のSBの大外と内側を行き来する動きに対して結果的に捕まえきれなかったり、マークすることでサイドのエリアが空いてしまい、Horifootは効果的なプレッシングを行うことができませんでした。
世田谷のポゼッションの上手さに関しては、ボール周辺のエリアで斜めの位置関係かつ、前線では5レーンを意識した配置となっていて、位置的な優位性を担保していました。この位置的な優位性を活かし、ボールをクリーンな形でスムーズに前線へ送ることが可能となっていました。
世田谷ユナイテッドのサッカーは、見ていて非常に面白いポジショナルプレーを展開するチームでした。今後の活躍に期待したいです。