フットボールの面白い戦術分析します(マンチェスターシティに見た、敵陣でのネガティブトランジション②)
19/20 UEFA チャンピオンズリーグ
ベスト16 1leg
レアル マドリード vs マンチェスター シティ
~マンチェスターシティに見た、ネガティブトランジション時のゲーゲンプレッシング~
今回は、ネガティブトランジションの局面における戦術の第2回目です。2回目はマンチェスターシティです。
ペップのマンチェスターシティでは、「ネガティブトランジション時には、相手の相互作用を崩した状態から即時奪回を試みる」というプレー原則が設定されていることから、ネガティブトランジション時にはゲーゲンプレッシングを行うことが分かります。
そんな、マンチェスターシティのネガティブトランジション時のゲーゲンプレッシングの仕組みを、19/20チャンピオンズリーグベスト16の対レアルマドリード戦から分析したいと思います。
スタメン(home : レアル マドリード)
(away : マンチェスターシティ)
結果 : レアルマドリード 1 - 2 マンチェスターシティ
(前半0-0、後半1-2)
① 敵陣でのポジショナルな攻撃時
まず、シティは敵陣でのポジショナルな攻撃時は下図のような陣形になる。
このとき、右SBのウォーカーは右サイドのエリア(ハーフスペースあるいは大外)を、ボランチのロドリ、ギュンドアンはどちらかがDFラインの前の中央のエリアを予防的カバーリングできる配置に、さらにCBのラポルトとオタメンディはDFライン中央のスペースを予防的カバーしつつ、相手CFをあらかじめ予防的マーキングできる配置となっている。
② ネガティブトランジション時
敵陣でのネガティブトランジション時、シティはゲーゲンプレッシングを行う。
具体的には、ボールエリア周辺の3~4枚ほどでパスの受け手の前に入り、ボールホルダーからのパスコースを塞ぐようなゲーゲンプレッシングを行う。
このとき、ボランチの1枚(ロドリ)は中央のエリアを、右SBのウォーカーは右サイドのエリアを予防的カバーリング。また、CBは2枚でDFラインの背後のエリアをカバーしつつ相手CFを予防的マーキング。
また、逆サイドのSB(メンディ)は自陣方向へ戻りDFラインをカバーする。
この試合、シティのゲーゲンプレッシングとレアルマドリードのロンド(近距離でのパスワーク)の攻防はとても面白かったです。
この形(パスコースカット型)のゲーゲンプレッシングは組織でパスをカットするため、1対1の守備能力が低い選手でも効果的に行うことができるという利点があると思います。
そのため、以上のようなペップシティのゲーゲンプレッシングは、一昔前のペップバルサでもよく行われていました。
またこの試合、シティは開始2分ほどから、2トップにデブライネとBシルバ、左SHにジェズス(4-4-2システム)という配置に変更し、2枚のFWがゼロトップの動きをするという新しい攻撃(ダブルゼロトップ)を行っていました。このビックマッチで新しいことをやってのけるペップとシティの選手たちは見事だと思いました。