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マンツーマンハイプレスとそれに対するビルドアップ

20/21 ラ・リーガ 第19節
バルセロナ vs レアル ソシエダ

~マンツーマンハイプレスに対するビルドアップ~

 今回は、先日行われたラ・リーガ第19節のバルセロナvsレアル・ソシエダにて、両チームのマンツーマンハイプレスとそれに対するビルドアップの局面について分析していきます。


スタメン(home : バルセロナ)

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(away : レアル・ソシエダ)

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結果 : バルセロナ 2 - 1 レアル ソシエダ
( 前半 2 - 1、後半 0 - 0 )


バルセロナの守備
(プレッシング)

① 開始点
 バルセロナはプレッシング時、主に下図の黄色エリアが開始点となる「超攻撃的プレッシング」を行っていた。
※時間帯に応じては開始点を下げる

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② 陣形
 陣形としては、下図のようにマンツーマン(監視)となるように相手の陣形に合わせて配置する。

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③ スイッチと追い込み方
 プレッシングのスイッチは、相手GKからのパス出しで、下図のようにボール周辺のエリアでマークの強度を高める。

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 また、相手が再びGKまでボールを下げた時はGKまで追わずに再度マークをセットする。

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④ ロングボールへの対応
 相手がロングボールによる「ダイレクトなビルドアップ」を行う際は、下図のように、競り合い後のセカンドボールを拾うためにボール周辺に密集する。

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レアル・ソシエダの攻撃
(ビルドアップ)

① 陣形
 ソシエダは自陣からのビルドアップ時、下図のような配置となる。ここで、前線の3枚(ヤヌザイ、ウィリアン・ジョゼ、ポルトゥ)は中央寄りにコンパクトな配置を取っていた。

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 また、右ウイングのヤヌザイが中央(トップ下の位置)に、CFのウィリアン・ジョゼが右サイド(内側)にポジションチェンジすることもあった。

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② プレー展開
 プレー展開としては、後方から前線へロングボールを送る「ダイレクトなビルドアップ」を主に行っていた。
 具体的に、前線へロングボールを送るのはGKのレミロであることが多く、ロングボールを送るターゲットとなるのは、CFのウィリアン・ジョゼが多かった。このとき、ウィリアン・ジョゼが競ったボールを拾える位置にウイングのヤヌザイ、ポルトゥが立っていた。

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③ プレス回避
 この試合で見られた「ダイレクトなビルドアップ」におけるプレス回避を紹介する。
 まず配置は、右ウイングのヤヌザイが中央(トップ下の位置)に立つ。その後、GKのレミロからターゲットとなるCFのウィリアン・ジョゼへロングボールを送り、ロングボールを受けたウィリアン・ジョゼがトップ下の位置に立つヤヌザイへボールを落とす。このとき同時に、左サイド側に立つ左ウイングのポルトゥがダイアゴナルな動きで相手DFの背後(中央)へ走り出す。そして、ボールを受けたヤヌザイが浮き玉で、裏へ走り出したポルトゥへスルーパスを出した。

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 まず、バルセロナは「ポゼッションによるビルドアップ」を得意とするソシエダに対して、マンツーマンのハイプレスを行うことにより、予め相手の長所を無効にしてしまうようなゲームプランだった。
 一方、ソシエダはビルドアップ時、全体を後方から順に配置することで前線では3対3の数的均衡の状況を作り出し、そこへロングボールを送ることで、セカンドボールを拾うことができれば一気にゴール前までボールを運ぶことができるといった狙いだったと思う。


バルセロナの攻撃
(ビルドアップ)

① 陣形
 バルセロナは自陣からのビルドアップ時、下図のような配置となる。
 特徴としては、ボランチのブスケツがアンカーの位置に立ち、インサイドMFの位置にボランチのデ・ヨングとトップ下のペドリが立つ。

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② プレー展開
 プレー展開としては、GKのテア・シュテーゲンから一気に前線の選手までボールを送る「ダイレクトなビルドアップ」を主に行っていた。このとき、GKのテア・シュテーゲンはグランダーのロングパスと浮き玉のロングボールを使い分けていた。
 ここで、ロングパスのターゲットとなるのはCFのメッシであることが多く、相手のマンツーマンハイプレスに対し、下図のように人を動かすことでスペースを作り、そのスペースをメッシが利用してボールを受けていた

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 また、メッシがインサイドMFの位置に下りる動きに対して、インサイドMFの位置に立つ選手(下図のシーンでは途中出場のピアニッチ)が相手最終ライン(中央)の裏のスペースを取る動きをし、GKのテア・シュテーゲンがそのスペースをターゲットにロングボールを送るといった構造も多々見られた。

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 ソシエダはバルセロナと同様にマンツーマンハイプレスを行っていた。おそらく狙いはバルセロナのそれと同様だと思った。
 一方、バルセロナのビルドアップ時には、人を動かすことでスペースを作り出し、そのスペースにメッシが降りボールを受け、メッシの質的優位を活かすことでプレス回避を成功させたという場面が何度も見られた。また、メッシが降りた際に相手最終ラインの選手がメッシに付いてきた場合には、インサイドMFに立つ選手がその背後を狙うといったビルドアップも非常に良かったと思った。

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