養豚術の呪い4
前回までの話
固定概念の呪い
麗華は、初めて見知らぬ人にDMを送って、
ドキドキしていた。素顔の自分ならこんな事しないだろう。コスプレの自分は異次元の自分だからかもしれない。
麗華は、鏡をみるのが嫌いだった。麗華という名前とは裏腹な顔をみては、この名前をつけた両親を恨んだ。名前とのギャップが嫌で、真剣に整形を考えた事もあった。
麗華という名前の思い込みは、漫画やドラマの影響なのか、凄まじいものがある。
美人で頭がよくお嬢様でお金持ちで。
そんな他人の好き勝手な固定概念が、麗華を傷つけていく。
そんな時に、全くの別人になれるコスプレの世界に足を踏み込んだ。
そこは、麗華という名前もいらない、コスプレをするキャラクターの名前で、堂々としていられる。ウィッグと化粧と衣装、そのキャラクターに似せていくうちに、どんどん現在の自分では無くなる。
最初は、それだけで満足していた。
誰かにみてもらいたい。
誰かと共有してみたい。
ただそれだけだった。
名前の呪縛は、消えたはずだった。
初めて会う人には、本名は明かさない。
コスプレに本名はいらない。
だから、DMが送れたのだ。
自分と同じ感覚の人がいい。
あだ名だけでやりとりしたい。
そう思っていた。
返信が戻ってきた。
内容はとても以外なものだった。
名前は聞かれなかった。
聞かれたの性別だった。
相手のコスプレ名は、ライムだった。
つい、女性だと思いこんで、DMを送ったが違うのかもしれない。
麗華はふと笑った。
私も固定概念、思い込みがあるのだと。