店長はファンをつくる天才だった話
「店長、やってます!」
目の前には、まっすぐな目をしたショートヘアーの美人がハキハキとした声でそういっている。河原町から歩いて5分ほどのところにある、一風変わった本屋だから、
「なんでもありなのだろうな……」と自分の中で思っていた。
話を聞くと、元々はホテル業界とのことで、自分と同じくライティングゼミを受講して、ちょうどスタッフ募集の記事があり、天狼院のスタッフになったそうだ。
店長に就任して1年足らずなのだが、堂々とした姿をしている。
「いらっしゃいませ、この書店は初めてでしょうか。こちらは一風変わった書店で、本の先の体験を提供する書店でして……」
他のお客様にも同じように、セールスをしているのだが、声のトーン、話し方が自然な感じなため聞き入ってしまう。そんな不思議な能力を持っていた。
昨年末のこと、店長が接客をしていたときに気づいたことがあった。
「いらっしゃいませ、あ、お久しぶりです!」
師走ということで、忙しいのにも関わらず、天狼院のゼミやイベントでよくお会いする方々が、店長に会いに天狼院に来ているのであった。
「今日、お久しぶりしか言ってませんね……」自分でも言っていた。
一度、常連の方に店長の魅力をお聞きしたことがある。
その日は、ファナティック読書会のイベントがあり、
課題本の魅力に関して、お客様とともに熱い思い語り合っていた。
その際に店長が推した本があった。
村上龍さんの本「コインロッカー・ベイビーズ」だったそうだ。
滑らかに読むことができて、店長自身、
何度も読んでいる作品であると、熱い思いをお客様に話していたようだ。
(自分も店長に勧められ、読んでいる途中である)
純粋に「良いもの」を伝えたいという気持ちが全面に出るのが、
お客様に愛される条件のひとつなのかもしれない。
最近、Leicaというカメラを購入したそうだ。
天狼院のFacebookの投稿があり、店長が記事を書いていた。
その文章には嬉しい気持ちが全面に出ていた文章になっていた。
そこから、毎週のように、京都天狼院の「カメラ散歩」というイベントが立ち上がり、カメラをしているお客さんが、こぞって参加表明をして、すぐに満員御礼になっていた。
みんな店長が大好きなのだと思う。
自分もカメラ散歩のイベントに参加をしたことがあった。
京都という町並みは、フォトスポットがたくさんあり、今でいう「インスタ映え」をするところが所狭しとある。風情と情緒が人々に無言で語っているようであった。
そんなときに、色々な写真を撮りたいと思い、人、建物を撮っていた。
夢中になってしまい、はぐれてしまったのである。
焦った自分は、走って参加者の方々に合流しようと向かった。
とある寺院の看板の前で、京都のガイドさんのように話をしているのである。ひと目見て、店長だということがわかったのだが、
そこにいる参加者の方々が、店長の話に釘付けになっていたのである。
「京都歴2年ほどですよ……」と本人は言っていたが、
その語りはまるで10年以上住んでいるのような話し方であった。
「店長は無意識にファンをつくる才能を持っている」
様々な小さな対応、すぐにメッセージのレスポンスをする。当たり前のことかもしれないが、圧倒的な早さで的確に伝えてくれる。そういった小さな積み重ねをないがしろにしないから、お客様から信頼を得て応援されているのだと思う。
一度、自分も店長に「周りの人を味方にする力を持っていますよね?」って聞いたことがある。
「たしかに、周りのお客様にもよく言われますね……」と答えていたことがあった。
間違いはなかった。そういった行動を無意識に積み重ねている。
そんな自分も店長のファンなのである。
「店長、今度、スナックるりこという企画を考えているのですが……」
本人を目の前にして、言うことができるかわからないのだけれど、
むしろ、通りそうのない企画だけども、
いつもお客様に「価値の提供」をしている天狼院のスタッフだからこそ、今度はお客様から「価値の提供」をして、
「ここに居てもいいと思える居場所」を皆で一緒につくっていきたいという妄想を、京都天狼院に向かう阪急電車の中で考えている。
あとがき
ライティングゼミ、ライターズ倶楽部にて、合計7ヶ月、毎週のように書いていた。嬉しいことも、悔しいこともあったりした。
特に悔しいことの方が多かった。
この記事も、毎週のようにお世話になっている京都天狼院のスタッフの方に、届けたくて書いたのだが、駄目だった。
でも、こうして熱中して楽しんでいたら、オンラインサロンで出会った人たちが、しれっとライティングゼミに参加していたり、面白い展開になったりしていた。
カメラ講座の途中でも、
ライティングのワンデー講座があったら参加するぞ。
それでも書くことは楽しいんだ。