株式会社 俺のポケットWi-Fi

「なんだか遅いな……」

YouTube、Netflix、様々な娯楽コンテンツが、消費者の可処分時間の奪い合いがしのぎを削っている。自分もまた消費者であり、YouTubeやNetflixには大変お世話になっていた。

通信機器の発達で便利な世の中になり、スマホひとつでほとんど解決できる。今では考えられないほどである。

便利になるということは何かが犠牲がつきものだ。むしろ、そのしわ寄せは必ず出てくるもの。

「くそう、もう3日で10G超えてるやん……!」それはそうだ。

毎日のようにネット回線を繋いだまま、2時間以上の動画を繰り返しているのだから、データがいっぱいいっぱいになるのも無理はない。当然のことである。

家庭用の回線を引くべきなのだろうか。ただ、今まで以上に動画コンテンツが乱立しており、Twitter、FacebookなどのSNSもまた動画が主流になっているのだから、検討してみるのもありなのかもしれないが、毎月の通信費だってバカにならない。

はじめてiPhoneを購入してから、月額1万円を超えることは決してなかった。こういった固定費といったものは毎月のこと。自分の生活を第一に考えてからでないと、後の祭りになるのが目に見えている。

ホイホイ契約を変えてしまうと、引き落としのときに後悔が残る。
「また考えなしに契約しておる……」と、

数年後、格安スマホが登場することになった。

SIMを変えれば、三大キャリアではなくても日本ではどこでも繋がるインフラが整っている。そして、安くできるのならどんどん固定費は下げたい。

幸いにも、自分はポケットWiFiとスマホのセットで毎月の固定費は6500円。しかも、無制限の契約だ。(3日で10G制限あり)

むしろどこまで安くできるのだろうと、格安SIMを取り扱う店舗に出向いて「通信費のお見積もりをしたいのですが……」というほどだ。

正直なところ通信費の安さの限界突破をしてみたい気持ちもある。

考えるとキリがないのだが、政府は国民の通信費を4割程度引き下げようと考えており追い風もある。

「そしたら、3日で10G制限という概念がなくなるのでは?」

今後、5G回線になり今まで以上に繋がりやすくなる。通信料金すらどんどん安くなっていき、タダ同然になるのも時間の問題なのでは?と期待してしまうほどだ。

しかし、株式会社俺のポケットWi-Fiも黙っていないだろう。
契約者の希望に応えるべく休みなく働くのである。「24時間働けますか?」と、


「YouTube入りました〜!」
「Netflixが回線に入ります〜!」
「Facebookライブだって!?聞いてないぞ!」

ポケットWi-Fiの指揮系統に様々な指令が入るであろう。想像しただけで恐ろしい職場環境である。ただ一人の要望に応えるべく、一つの回線では処理できない情報量が一気に押し寄せる。

「すみません!!もう処理できません!!」従業員の一人がついに悲鳴をあげたのである。

「一つのポケットWi-Fiにpc、タブレット、スマホの3つのガジェットは……」
さすがのポケットWiFiの役職もお手上げ状態であった。

「まいったな、これは少し回線を遅らせるか……」電波は一個人のものではない。契約した人たちが平等に使える権利である、独り占めはいけない。

「ここまで制御したら、本人も気がつくだろう」


困った表情をしながら、作業傍にある通信回線の通路弁を調節するのであった。

「うそやん!もう今月、100G超えてるやん!!」1Kの部屋に声が響く。

確かに、某ウイルスの影響で自宅にいる時間も増加した。外出しようにもできない状況が続いている。実際に対面で人に会うことも少なくなった。そして、オンラインコンテンツがどんどん溢れている。

本人が気がついていないほど、情報の交通渋滞が自分の頭の中で巻き起こっているのだ。

「あ、コンテンツも見なきゃ!あ、これも捨てがたい!」きちんとした判断なのかすら怪しい。

冷静に考えると、様々な情報を取得したくて、損したくなくって、気持ちが前面に出ており闇雲になっているのだろう。

「また!3日で10G超えて遅くなってるやん、やっぱり家庭用のWiFiを別に契約するべきだろうか」

積み重なる通信量を見て驚き、手元にある財布の中身の金額を見てため息をつく。

「今月も固定費がかすむなあ」とぼやきながら、財布の口を閉めるのであった。

ただ、本人は気がついているのだろうか。

動画コンテンツの見過ぎにより、自分のポケットWi-Fiの職場環境を劣悪なものにして、ブラック企業にしているのは自分自身であり、電波の奴隷になっている現実を彼はまだ知らない……。



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ふみー
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