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金曜日「絵本たちのいるところ」 2021.3.12/譜面合間日誌(平日)

~「かいじゅうたちのいるところ」の段~

こんにちは。
「譜面合間日誌」金曜日担当の河﨑です。


突然ですが、みなさんは束の間の友情を育んだことはありますか?
連絡先を交換する手段がない環境等で、誰かや何かと知り合い、やがて離れていく。
現代ではなかなか成立しにくいシチュエーションではありますね。


ということで今回紹介する絵本はこちらです。

かいじゅうたち 表紙

©︎モーリス・センダック


『かいじゅうたちのいるところ』
作:モーリス・センダック
訳:じんぐうてるお
出版社:冨山房
発行年:1975年


あらすじは以下の通りです。
「いたずらっこの男の子マックスは、今夜もおおかみのぬいぐるみを着ると大あばれ。

「この かいじゅう!」

おかあさんに怒られても平気で言い返す。

「おまえを たべちゃうぞ!」

とうとうマックスは夕飯抜きで寝室に閉じ込められた。

ところがその部屋に、にょきりにょきりと木が生えだして……気が付けばすっかり森の中。そこへ波が打ち寄せてマックスは船に乗り込んだ。長い時間をかけて航海すると、たどりついたのは「かいじゅうたちの いるところ」。すごい歯をガチガチさせて、うおーーっとほえて、目玉をぎょろぎょろさせ、すごい爪をむきだしている。なんて恐ろしい! でもマックスだって負けていない。

「しずかにしろ!」

怒鳴りつけると、マックスは魔法を使ってあっという間に彼らの王さまになってしまったのだ。彼らは一緒に踊り、遊び、森の中を行進し……。」

(出典:かいじゅうたちのいるところ|絵本ナビ


この譜面合間日誌金曜日のタイトルである「絵本たちのいるところ」の元ネタとなった作品であります。
モーリス・センダックは『かいじゅうたちのいるところ』以外にも『まよなかのだいどころ』、『まどのそとのそのまたむこう』など日常から非常にシームレスな形でファンタジーの世界へ登場人物が迷い込む作風が特徴です。
中でもこの『かいじゅうたちのいるところ』はファンタジー世界に住人たち(かいじゅうたち)と明確にコミュニケーションを取り、そこで生活が営まれいるのです。

かいじゅう 中身

©︎モーリス・センダック


先ほど挙げた『まよなかのだいどころ』ではファンタジー世界に住人たち(コックたち)自体は存在しますが、ほとんどと言っていいほどコミュニケーションを取ることができず「ファンタジーな世界」という点だけが際立つ形となっています。
しかし、『かいじゅうたちのいるところ』でマックスはかいじゅうたちと会話を交わし、かいじゅうおどりを踊り共に眠ります。
マックスとかいじゅうたちは友情は育めなかったかもしれません、共生はできなかったかもしれません。
しかし、それぞれ現実を忘れ生き物として共にその場所に存在できていたように私は感じます。
そんな中、寂しくなったマックスはとおいとおいせかいのむこうから流れてきたおいしいにおいを嗅ぎ家に帰ることを決意します。
いつだって私たちを現実に引き戻してくれるのは生活の香りなんだなと改めて感じました。

2010年には『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズによって映画化されました。
あまり強くお勧めというわけでもありませんが、映像は綺麗ですし特殊メイクも素晴らしいのでお時間がある方はぜひ鑑賞してみてください。


それでは。お元気で。
良い週末を


【今週の何か】
最近読んで面白かった本
『料理の四面体』玉村豊男
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