戯曲『良いキャンペーン』冒頭版
《(主に)登場するキャラクター》
この作品の上演は5人の俳優で行うことを想定しており、
以下のように演じる役の配分をする。
シーン1〈2074年〉
1=ノア、学生B
2=フタバ
3=ファウナ
4=占い師(綴)、学生A
5=出題者、占い助手、おーちゃん先輩
シーン2〈2047年〉
1=体験者、ノア
2=フタバ、業者
3=ファウナ
4=イオリ
5=アサヒ
《記号説明》
☆・・・同時に発語しても良い
シーン1〈2074年〉
開演
1、登場
1 本日はご来場いただきありがとうございます。開演に先立ちましてご案内申し上げます。携帯電話、音や光の出る機器は電源からお切りください。
ペットボトルなどの蓋つきの飲み物でしたら飲んでいただいて構いません。
地震などの有事の際はスタッフが案内いたしますので、その場にてお待ちください。上演時間は約○○分を予定しております。途中休憩はございません。(本日終演後に、トークイベントがございます。準備が出来次第開始いたします。よろしければご参加ください。)
1は空間を見渡す
空間に流れる空気を確認する
その後、深く息を吸い、喋り始める
1 ○月○日(上演日)。
1は、再び息を吸い込む
1 聞いて欲しくて、美味しかった話ね。うなぎ。うなぎっす。鰻重とかってどう? 好きかな? ま、そのお店の鰻重はね、結構ね、衝撃的な美味しさだったんだよね。正直、店内の、雰囲気とかも趣があって、だから、期待上がっちゃってたんだけど、そのハードルを余裕でひょいと飛び越えたんだよ。むしろ、雰囲気で美味しさが倍増する、みたいなこともあると思うんだけどね、いや、そうじゃなく、まず、うなぎがね、まずね、シンプルに美味い。柔らかくふっくら。脂も乗ってて、とろっと溶ける。備長炭かな、それで焼くから外はちょいパリ。肉厚で食べ応えもある。あとはもちろん、お米とタレ。これも完璧な仕上がりで、本当に美味い。 鰻重ってね、考えると、シンプルが故にね、全ての食材に相乗効果があるんだな〜って。全ての食材がマジで欠かせない。そう思った。本当に美味しい。
2、登場
2 それはさ、その鰻屋さんに行こうと思ってたの? たまたま?
1 たまたまだったんだよね〜。だから、運命?
2 はい(ドリンクを1に二つ渡す)。
1 ありがとう。いくら?
2 いいいい。
1 え、なんでよ。
2 ちょっと遅れちゃったから。ごめんってこと。
1 ん〜。どうも〜(ドリンクを飲む)。
2 えーてかさ、最近鰻食べることないかも。
1 え〜、逆に?
2 そうね、ブームすぎちゃったかもな。
1 まだ鰻ばっかかも。正直。私。
2 えー。
1 こことかちゃっかり、名物になってるし。
2 ま、そだね。安いし。
1 てかあっちの、お煎餅屋さんの隣さ、串に刺さった玉子焼き売ってたけど、あれも美味しそうだったね。
2 美味しいよあれ。
1 え〜いいないいな。
2 おすすめはね、海鮮を焼いたやつ出してくれるとこなんだけど、
1 え、どこどこ。
2 お城側の、はちみつ屋さんの方。
1 あ〜、そっちか。
2 ホタテ焼いたやつとか、美味しかったな。
1 絶対美味しいじゃん。
2 バター乗せてくれる。
1 最強かよ!
2 最強です。
1 これ(飲んでいるドリンク)はどこの? 美味しい。超冷たくてグッド。
2 あ、それはね、海側のちょっと外れた方にあるんだけど、
1 あ、この通りじゃないんだ。
2 そうそう。
1 ふえ〜。てかこの城下町、距離すごい長いよね?
2 長いねー。海の方とお城までを結んでるからね。
1 すごいな〜。このクオリティ高い街並みが横になが〜いのも魅力なんだろうね。
2 そうね。でもやっぱね、路地入った方が名店多いよ。
1 あ〜あるあるだね〜。さすが地元民。
2 任せてくれい。
1 頼りなるわ〜。
2 あのさ、いや、腹立ったんだけど、腹立ったっていうか、何?って話なんだけど、いい? 話全然変わっちゃうんだけど、
1 え、いいよ。
2 ありがとう。いや、今日さドローンタクシーで来たんだけどさ、
1 え〜リッチ〜。
2 いや急いでたからさ。
1 あ、うん。
2 ま、乗り場までさ、エレベーターで向かうじゃん。屋上だからさ。
1 うんうん。
2 エレベーター上から降りてくるでしょ。降りてくる人もいるからさ、外でボタン押して待ってるじゃん。
1 そうだね。
2 全員降りて、いざ乗るぞってなった時にさ、「すみませーん」って。
1 え?
2 いやなんか、人が来たのよ。私より後に来て、そのままエレベーター乗りやがった人がいて。
1 え〜。
2 器小さいかもだけどさ、「いや、それは違うくない?」って。すごい思った。
1 「あなたのために開けてるわけじゃないよ〜。」だよね。
2 そう! 到着した時に「ひらく」を押してどうぞ〜ってのはいいんだけどさ、
1 うんうん。
2 しかも、降りるときも、こっちが「ひらく」押してそのまま、その人降りてってさ、
1 え〜いやだね。
2 「ありがとう。」とか言ってくれたら許せたんだけどさ、それもないし、
てか、そもそもその人めっちゃ変だったんだよね。なんかさ、髪も全部なくて、身体もカリカリというか、クシャクシャというか、
1 お年寄り? おじいちゃん?
2 いや、ポテトのさ、すんごいしなしなのやつあるじゃん。最後の方に残ってるやつ。
1 うんわかる。
2 あれみたいな。
1 え? あ、そう。
2 いや、そのさ、私的にも、そういう見た目のことをすごい、言いたいんじゃなくてさ、
1 うん。
2 いや、なんか、靴もボロボロだったんだけど、ていうかね、足に釘が貫通してたと思うのよ。多分。
1 え、どゆこと。なに?(笑)
2 いや、ごめん。多分ね、そうなのよ。
1 歩いてるんでしょ? そのしなしな? カリカリの人は。
2 うん。
1 じゃあ元気なんじゃんか〜。
2 まぁそうだよね。うん。
1 平気平気。なによ〜。
2 そうだよね〜。
1 え、元気?
2 え?
1 フタバはさ。
2 あ、うん元気元気。ノアは? 元気?
1 うん。すごい元気。ロングタイムノーシー。
2 ロングでーす。てーかさ、マジで超久しぶりだね。
1 ほんと、久しぶりに会うね〜。ご機嫌ってこと?
2 うん、普段はね、ぜんぜんご機嫌だよ。
1 いいね〜。や、ほんと、フタバに会うためにだよ。ほんと会いたくてさ。ね〜?
3 (頷く)
1の近くには3が座っている
2 マジであれから何年経った?
1 えっとバスツアーから20年以上?
2 え、ほんと?
1 下手したら30年近いんじゃないの。
2 やばすぎる。ほんと、ノアたちが会いに来てくれて嬉しい。
1 いえ〜い。あれ、まだやってるの。バスツアーって。
2 やってないよー。もう随分前に終わっちゃった。
1 あ、そうなんだ。
2 そういう伝承する役割は、あの城の中にぱんぱんに詰まってるからさ。
1 役割終わったんだ。バス。
2 そうなのよ。
1 あ〜。てかこんだけ街が盛り上がったら回るとこ残ってないか。
2 そうね、生の声を語れる人も街から減り始めたし。
1 あ〜そうだよね。
2 ま、でも、映像でね録画してそれを展示してたりね。
1 え〜すごい。お城で?
2 そうそう。当時さ、私たちにバスツアーで話してくれた人いたでしょ、イオリさん、
1 うん。イオリさん。バスガイドの。うん覚えてるよ。え?
2 その人、館長になってね、今あそこにいるのよ。
1 え〜マジか。そうなんだ。偉くなってまぁ。
2 ちなみに私の映像も二個目の展示室で見れるよ。
1 え、マジ。見たい。
2 え、全然大真面目なやつだからね。
1 なおさらなおさら。
2 真面目に見て?
1 見る見る〜。
3 (手を挙げる)
1 ん、
3 私も見たかった。
1 そうだよね。
2 で、てか、どうしたの。
1 え。
2 いや、話あるって言ってたじゃん。
1 あ、うん。その通り。何を隠そう!
2 や、いいっていいって。
1 ま、先に言うと、私たちも最近会うようになったんだけど、
2 あ、そうなんだ。
1 3、4年前くらいかな。
約2070年・カフェ
「
3 久しぶり、ノア。
1 久しぶり〜。ロングタイムノーシー。びっくりしたよ連絡。
3 びっくりさせてごめん。会いたくてさ。
1 いや嬉しいよ。どしたのどしたの。
3 あのさ、実はさ、ノアがよかったらだけどさ、またツアーに行かない?
1 あ、爆心地の? バスツアー?
3 あ、いや、ツアーっていうか、世界。の行きたいところ全部。
1 ワールドツアー? ってこと?
3 ま そうだね。バスもだし、電車とか船とか飛行機とか全部使う。
1 あー、いいね。うん、いいよ。
3 え、ほんと? いいの?
1 うん。いこいこ。
3 じゃあ、すぐ行こう。
」
2 ワールドツアー。世界旅行ってこと? いいねー。
1 残り少ないんだけどさ、フタバも行こうよ。
2 え、私も?
1 そう。迎えにきたの。
つづく。
公演情報
譜面絵画 vol.15『良いキャンペーン』
■公演期間
2024年5月25日(土)〜6月2日(日)
■会場
アトリエ春風舎
■あらすじ
今より昔この土地で、ある悲劇が起きました。その悲劇を当時目の当たりにした夫婦はつい最近、安楽死を決めたそうです。それはさておき、この土地の周辺にはすっかりいくつもの飲食店や土産物屋が出来て観光地となりました。しかし悲劇は完全に風化したわけではなく「ダーク・ツーリズム」として訪れる人も未だいるようです。
■コンセプト
コロナ禍以降も「土地」と「旅」の話を扱ってきた譜面絵画の超新作です。
大きな寓話から、新たに生まれるかもしれない悲劇やすでに生まれている悲劇の超未来を想像します。「ダーク・ツーリズム」「安楽死」といった現代における重要なトピックについても取り上げます。どちらのトピックについても賛否両論あるものであり、譜面絵画としての視点で描き形にすることを目標としています。
■脚本・演出
三橋亮太(譜面絵画)
■出演
高橋星音
西村由花(青年団)
西山真来(青年団)
新田佑梨(青年団)
林ちゑ(青年団)
■音声出演
小見朋生(譜面絵画)
宮ヶ原萌(譜面絵画)
■スタッフ
宣伝美術 三橋亮太(譜面絵画)
ドラマトゥルク 小野晃太朗(シニフィエ)
セノグラフィー 白金
照明 中村仁(黒猿)
音響 小林遥
制作 大川あやの(譜面絵画)
制作 河﨑正太郎(譜面絵画)
制作助手 落合比奈(譜面絵画サポートメンバー)
演出助手 谷平絵梨
当日運営 宮野風紗音(かるがも団地)
舞台監督 三津田なつみ
舞台監督助手 大野創(アーバン野蛮人)
映像 青春組立式キット
■公演日程
5月25日 土 18:00
5月26日 日 14:00/18:00
5月27日 月 19:30*
5月28日 火 休演日
5月29日 水 19:30*
5月30日 木 19:30*
5月31日 金 19:30*
6月1日 土 14:00*/18:00
6月2日 日 14:00
*ゲストトーク
※受付開始、開場は開演の30分前
※上演時間は約60分〜80分を予定
■ゲストトーク
5月27日 月 19:30* 市原佐都子さん(Q)
5月29日 水 19:30* 柴幸男(ままごと)
5月30日 木 19:30* 岡田利規(チェルフィッチュ)
5月31日 金 19:30* 坂本もも(範宙遊泳・ロロ)
6月1日 土 14:00* はぎわら水雨子(食む派)× 小野晃太朗(シニフィエ)
■チケット料金(全席自由席)
シングルチケット(一般) 3,800円
シングルチケット(U-30) 3,000円
ダブルチケット 5,000円
シングルチケット平日割 3,000円
応援プラス 8,000円
超早割(各回5枚限定) 500円
キラカード割 100円
配信チケット 1,500円
■チケット取り扱い先
https://fumen15.peatix.com/
■劇団WEBサイト、SNS等
WEBサイト https://www.fumenkaiga.com/
X(Twitter) https://x.com/fumen_kaiga
Instagram https://www.instagram.com/fumenkaiga/
■企画制作
譜面絵画
■主催
譜面絵画
■助成
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京[東京芸術文化創造発信助成]
■協力
アーバン野蛮人/かるがも団地/黒猿/シニフィエ/青年団/PARA/(有)レトル
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