恋をしていた5 / 友達以上恋人未満。毎日の自分の思いだけが頼り。

私の好きな人は、彼氏ではありませんでした。

抱きしめてくれた。キスをした。体も重ねた。大好きと目を見て言ってくれた。

でも、一度も彼女だと言われませんでした。

外国人だから、告白って文化がないだけだと言ってくれる友人もいました。でも私はそうではないことがわかっていました。彼は日本語も話せて日本人の友達もたくさんいて、日本人と関係を持ったこともある人です。

彼が、日本特有の告白して付き合うという文化があるということ、日本はセフレに関してオープンではないことを理解しているのだという確信が私にはありました。

私はちゃんとはぐらかされていたのです。彼は理解した上で、あえて私を彼女にしませんでした。私も、結局彼に告白したりしませんでした。私が帰国することを、お互い忘れたことはありませんでした。

こういう関係はとても難しいものだと思います。私の場合、私の友達にも彼の友達にも公認だったので、オープンかつ両思いのセフレでした。

こんな風にいうと、私が勘違いしているだけだというように、哀れみの目を向けてくる人がいます。私も、本当にわからないのです。彼が私を思っていてくれたことなど、自分の直感を信じるしかなかったのです。

彼が見つめてくれたその目の優しさを、触れてくれたその指の温かさを、寝起きのキスを、髪を触りながら名前を呼んでくれるその少しかすれた声を。信じるしかなかったのです。

それは君が信じたかっただけだよと言われればそれまでです。そうやって騙される女がごまんといると言われれば、私もそうなのかもしれません。私は彼のことが好きだったと答えるしかありません。バカかもしれないけれど、それでもいいと思っていました。

温かい気持ちも、静かな不安も、いっそ彼に縛られたいという強い欲望も、私の中に確実に生まれて積もっていきました。

言い訳なのか本心なのか

初めは彼女になりたいなんて思っていなかった。彼女なんかになったら彼を忘れて帰れないと思っていたから。

でも、彼女ではない自分がすっかり今どこにいるのかわからなくなっていた。優しすぎる私の彼。気持ちがないのならいっそ冷たくしてほしいとも思うのに。セフレにしては優しすぎるからと、一人で自分に語りかける言葉はいつも大きな言い訳の形をしていて、彼女と言われない事実から目を背けていたかった。

彼女になった方がいっそすがりつけるから？あなたは私のものだと言えるから？他に好きな人なんか作らないでって言えるから？

彼女になったとして離れたら何になるんだろう。それが言えたとしてだからなんなんだろう。私は彼の半年間の記憶になって終わるんだろうか。彼は私の中から滲み出して、そのうちすっかりいなくなってしまうのだろうか。

 きっと彼も一緒にいたいとは言うだろう。私も、一緒にいたいとばかり思っていた。そう思って今までは過ごしてきた。

でも、一緒にいることが叶わないなら、私たちは一体どうすればいいというんだろう。私たちはもうどうすることもできなかった。ただきつく抱きしめ合う時間だけを心に留めた。時間が流れるのに抗っているかのように見せかけて、私たち自身から目を背けるしかなかった。