恋をしていた6 / 欲張りとそれを恐れる私

誰かを縛りたくないし縛られたくない

私はそう強く思いながらも、そんなのさっぱりきれいごとだと思ってしまいました。
恋愛をして、相手を自分のものにしてしまいたいと思う衝動に駆られない人などいるのでしょうか。相手に、自分のものと印をつけられたくなることがないのでしょうか。

恋をして、自分の汚いところにたくさん気付かされました。
些細なことで嫉妬する自分が嫌でした。
彼の友達ですら、彼のことを知っていて羨ましいと思ってしまいました。
もっと彼と一緒にいたいから、友達との時間より優先していました。

好きな人ができるまで、こんなことはなかったのに、こんな女になりたくないと思っていたのに。私は自分で思った以上に彼が好きで、好きというのはこういう見にくい気持ちも孕んでいるのかと落ち込みました。

落ち込むと言ったらまだ可愛いかもしれません。その事実がショックで、で求めることもできなくて、それに気づくと孤独で、静かに心が塞いでいきました。

そして、何が自然なのかもわからなくなりました。自然な私ってなんだろう、自然な二人ってなんだろうわからなくなって、好きという気持ちだけが溢れそうで、それを抑えようとしたらよそよそしくなって。

でもこれは私の欲望なのかと、愛情かなのかどうかもわからずにいたのが私でした。


甘えたがり、欲張り。

今更、二人きりでないときはどうしたらいいのかわからなかった。友達がいたりすると恋が始まった時のように、目が見られなくなったりしていた。一緒に過ごした翌朝も、抱きしめられない距離感の中では二人は戸惑ったようにテレビを見つめたりすることが多かった。

私はどんどん欲ばりになっていった。甘やかされたがりになっていた。彼に会えたらいつでもキスが欲しかった。彼の家に行ってから2日も経てば、彼からの連絡は待ち遠しくて仕方のないものになっていた。でも、自分からは連絡したくない。都合のいい女の子になってしまいたくはなかったから。

 何もかも振り切って走り出したいのに、行くべき方向のわからない場所にいるようだった。私は、もう、どうしようもなかった。

孤独に、欲望に、まみれていく

一人でいる時も、授業中も、彼から連絡のないときは、抱く時の彼の目を、髪を、肩を、唇を、手の感触を、鮮明に思い出すようになっていた。その体温も、私の名前を呼ぶ声も、思い出すと焦がされるような生々しいものだった。

 はじめの頃はただ温もりを思い出すだけだったのに、私は自分がどんどんおかしくなっていると思った。思い出したら、すぐに会いたくなっていた。まっすぐに私の目を見つめて、かたく抱きしめて離さないでほしいと思うようになっていた。

 これを欲望と言うのなら、私はそれにたしかにまみれていた。まみれていてもいいと思った。それより早く迎えに来て欲しかった。溺れている私に息をさせるのは、もう彼しかいなかったから。

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