Serとはどんなhonorificか
早速週1更新が危うくなり、見事にモチベーションの低下と筆の遅さを晒している……というだけでなく、これからストーブが導入される(※大体11月)まで、寒くて何も出来ない日々が始まってしまっている。基本周囲がうるさいと作業に集中できないので家人が寝静まった深夜、眠気が危険水域に達するまで作業することになるのだが、いきなり山奥ハウスなので、夜間早朝がいきなり冬になってしまったのだ。
それはさておき、先日翻訳されたSCP記事の原文で奇妙な記述を見た。大半の読者の皆様は、英語では名前の前にジェンダーをはじめとした社会的アイデンティティと関連付けられた敬称や肩書のようなものをつけて呼びかけることがあるのをご存じだろう。それがその記事ではこうである。
SCP-3862 collectively refers to three separate objects, previously owned by the Marquessa de Abrantes, Eleanore da Piedade de Lancastre e Tavora and her paramour, Ser Lucien Dutoit.
Ser……Ser? なんだろう……
最初はフランス政府のために働いている(ふりをしている)キャラクターであったため、ははーんこれはSeigneurの略だな? と思ってフランス語辞書を当たってみたが……ない。少なくともWiktionary(英語版)では、ポルトガル語にも人の肩書としての用例はない。勿論念のために英語版ウィキペディアで調べてみてもない。言うまでもなく、英語の辞書にもhonorificとして載っている例がなかった。残念ながら、フォーラムにも突っ込みはない。
では何だというのか? 答えはGoogleで検索する際にtitleを足してやると出てくる。そしてそいつは先程見たWiktionaryの英語項にあった。
(in some fantasy novels) An address or courtesy title to any person, especially if their gender and/or form of address are unknown.
いいのか!?
ちなみに、さらに遡れば近年の代表的用例はゲーム・オブ・スローンズであるらしい。しかし日本語圏での反応を探ろうとしても、機械翻訳臭い物販ページやファンアートの山にぶつかるばかりで、原書や海外メディアをチェックするタイプのファンの反応は窺えないのだった。
"seigneur ser"で出てくる仏語の用例も、おそらくはGOTからの引用文らしいのに、そこはかとない謎の文化的格差を感じる……ここはGOT空白地帯の国、日本……
ちなみに、同じページの中英語の項目にはちゃんとした(?)肩書として載っている(もちろん19世紀は中英語の時代ではないが)。GOTをはじめとしたフィクションでの用法も、おそらくこれにインスパイアされたものであろうとする解説もFAQサイトにあったりする。
(画像はBrian DooleyによるQuinta da Regaleira。作中でPalace of Santosとして登場しているのと同じ城の写真。)