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モリアル開墾日記・3

アトリエギャラリーを森の中に構えて半年が過ぎた。森のアトリエアルティオ 。はしょってモリアル整備は少しずつ前に進んでいる。

新緑だった春から梅雨を経て、緑の濃さは勢い増し、気がつけば秋。毎週末仙台から川崎町青根へと通っているわけだけど、7日ごとに自然の色が変わっていくことに驚いている。

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森の暮らしは、やることだらけだ。手を抜くと、というか、なすべきことを先延ばしすると、間違いなくしっぺ返しを食らうことも実地で学びはじめている。

梅雨の時期は、想像越えた湿気との戦いだった。戦い、なんて、言ったところで、暴れたところで湿気が消えるわけでもなく、ひたすらカビを見つけてはふきとる。除湿機フル回転。新聞紙を丸めて床に置く。

学びその1。豊かな山は湿気に溢れているんだ。

某インテリアショップから買ってきたリーズナブルなナチュラルな木の箸なんて、あっという間にカビにコーティングされていた。山小屋で使うなら、そう、ウルシ塗りの食器がいいということも知った。

そんな梅雨から夏にかけて、湿気と並行で戦っていたのが、虫。

もちろん森の中の虫密度の濃さは覚悟していた。けれども「窓は全部網戸がはまってるし、まあ、大丈夫だろう」とタカをくくっていた。

エアコンのない山小屋だ。涼しくするために手っ取り早いのはドアオープンだ。当然開けっ放しは虫を招き入れることになる。どうぞどうぞと言っているようなものだ。開けっ放しにしていなくとも、ドアのちょっとした開閉を狙って、虫たちは侵入してくる。その間髪狙いは見事と言うしかない。

そんなわけで、夏が本格化する前、真っ先にぼくがやったことは、ホームセンターでドア用網戸の購入だった。1枚1万円くらいで売っているのだけれど、ドア周りに木材で枠を作って、そこにはめ込む式のドア用網戸。

導入は大正解だった。カナノコとドライバで半日かからずの日曜大工。たったそれだけで室内に入ってくる虫が激減。映画「スターシップトルーパーズ」を作ったポール・バーホーベン監督は、絶対に山小屋体験で虫と戦ったことがあると確信しましたよ。

室内への侵入は防いでも、外、夏の敷地内の制空権は虫達にある。ぼくらの気持ちは「すいません、森の新参者で…」なのだが、のんびり構えていられない相手も、ブンブンやってくる。そう、アブ、そしてスズメバチがオールウェイズのクロスファイアだ。

そんな所へ、峠ひとつ越えたところの山小屋を構える森暮らしの先輩が教えてくれた。

「森暮らしはね、ペットボトルでスズメバチトラップを作らにゃあかんよ」

ネットは便利だ。ペットボトルアブハチトラップの作り方をていねいに書いてあるサイトがすぐにみつかった。朝飯前のトラップ完成。日本酒と酢、砂糖の混合液を作り、匂いでおびき寄せて一網打尽スタイルだ。ちなみにこの匂い、男子は大概知ってます。カブトムシの飼育箱にスイカ入れて数日取り忘れた時の匂いです。敷地の4カ所にペットボトルトラップをぶら下げて、結界完成。

結界の効き目は、88mm対空砲を対戦車砲に転用したドイツ軍の兵士の気持ちが分かるくらい、絶大だった。(これ、わかる人は友達です笑笑)

しかし、やったぜ…と思っていたのはつかの間だった。「そういえば、なんでこんなにスズメバチが飛んでるのかな???」そう、敷地の法面にそれはあった。トラップに次々かかるスズメバチの本拠地、茂みの枯れ草の中に巣を発見したのだ。写真の穴がそれ。奥に巣。

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さすがに巣のセルフ撤去はあきらめ、森林組合に依頼した。真っ白な対ハチ防具を身にまとい、腰回りベルトに殺虫スプレーを数本差した森林組合の方の姿のなんと心強かったことか。

結果、人のアタマくらいの巣の撤去と同時に、夏が終わった。

そして一気に秋。あれだけ飛んで回っていた虫がどこへやらの減り方だ。虫達の制空権を奪うかのように木々の葉が赤く色付いた。

「嗚呼、季節が変わる…」と舞い降りる紅葉に哲学したのもつかの間、落ち葉掃きとフットパス作りに追われる日々の昨今です。(写真の可愛い家はお隣さんです)

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絵の話が出てきませんね。もちろん描いています。だけど、描くことはぼくにとって仕事でもあり、ごく普通のこと。自然相手のすったもんだの方が刺激大なのです。いずれその体験は絵につながっていくんです、多分きっと。

ちなみに森の生活を始めたら、色に対する感覚が変わりつつあります。これには自分でもびっくりしてます。

そんな話はまた別のタイトルで。最後の写真は、開墾を手伝いに来た娘が小石とドングリで作っていた、直径50センチほどのストーンサークル。

前回の開墾日記にもストーンサークルのこと書いたけれど、どうやら人間は、自然の中に暮らすと「環っか」を作りたくなるようです。…この話題でもひとつエッセイが楽しめそうです。つづく。

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