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あいまいな終わりとゆるやかな始まり

過去、振り返ってみると、卒業、とか、退社、開業、そういった節目のはっきりした記憶が、ぼくにはない。

勤続○○年叙勲の高級時計とか、映画で見たことがあるけど、フリーランス自営業は節目の記念品を仲間からもらうことも無い。
そんなわけで節目はいつも曖昧で、日々追われているうちに忘れてしまう。

昨日8月31日は、7年間運営してきた立町のギャラリーアトリエ・アルティオの賃貸契約終了日だった。

がらんとした室内で鍵を返すために管理会社の立会人を待っていると、「こんにちは!」と女性と子供の声が。
振り返ると扉の向こうに、通り向かいの「すまいる立町保育園」の先生方と園児たちだった。

「今日がアルティオさん、終わりですね。みんなでこれを作りました。受け取ってください」と先生から促されちびっ子の手から渡されたのは、ハロウィーンの時の写真をコラージュした、色紙。
下には「2021年8月31日」の手書き文字。

節目に記念品を貰うなんて初めてのことだった。
じわっと視野の端が滲んだ。

いつも何かの終わりの時には、すでに新しいことが動き始めていた。
だから何が終わりで、何が始まりだったかは常に曖昧なままだ。
それはあたかも旅で町から町へ移動するがの如く。

町境に人が立てた標識はあれど、その周囲の空気に線引きは、無い。

ぼくの異国旅は、その繰り返しだった。曖昧な終わりと緩やかな始まり。
日常もそれでいいと思う。
色紙は、額に納めて秋からオープン予定の森のアルティオのプライベートに飾っておこうと思います。ゆるやかに。

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