境界線の島、与那国島(島を旅する vol.28)
島を旅するのが好き。島に旅をしに行くのが好き。
島は、「その島に行こう」と思わないと向かわない。
なんとなくついでに立ち寄っちゃったって流れは、あまりないんじゃないのかな。それだけ「訪れる」という意識が働きやすい旅先だと思ってる。
そして、行ってみると、当たり前だけど周りは全て海。
この島の中で、完結して、生きていっている、という覚悟がそこはかとなく伝わってくる。凛としていて、時に孤独や閉塞感があったとしてもそれさえも包み込むような、島全体の空気。
これまで39の島を訪れてきたけれど、なかでも この与那国島は、その空気が特別なものだった。
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*与那国島がどんな島かは、まず去年2021年5月初訪問時のこちらの写真をどうぞ⇒https://note.com/fullsail33/n/nb69fd3d559dd
*与那国島は、あの「Dr.コト―診療所」の撮影場所となった島。
ドラマ撮影のために建てられた診療所の設定の建物が今も入れる形で保存されています。
またこの島を舞台に映画の撮影が始まるとのこと、楽しみ。
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車で一周45分ほどの島。
巡り始めると、それほど時がかからずに気づくものがある。
あちらこちらに見えてくる、
色々な「境界線」。
まず、国境。
一番近いのが、西に111キロの台湾で、東の石垣島までは127キロもある。
日本最西端の地、まさしく境界にある場所。
次に感じるのが、あるようでないような「立ち入り禁止エリアの境目」(ゆるいから、どこからが禁止かわからない‥)。
さらにこれまた独特なのが、
「馬と人の住む場所の境目」(テキサスゲートという)。
簡単に説明してみると‥ 道路に横幅いっぱいの数本の溝が作られていて、
馬は 渡ろうとするとその溝に足が落ちそうで渡れない、という仕掛け。たまに仔馬が間違ってはまるらしい。溝の深さを確かめてみたら60センチぐらいあったから、細い溝だけど落ちたら動けなくねるよね…
そして、日本で一番西にある○○(ポスト、居酒屋、カフェ、宿、学校・・・など)。
こんな風に、様々な「境界線」が存在する中で、
去年も今年も自分を試される「境界」があった。
先ほども書いたように、安全なエリアと危険なエリアと境界がゆるいので(これ自体は語弊を恐れず言えば素敵なことだと思うのだけど)、
行こうと思えばどんどん行けてしまう。やろうと思えばできてしまう。
例えば、断崖絶壁になっている大きな岩の端っこまで行ってみるとか。
その端っこで腹ばいに寝っ転がって、頭だけ出して、遥か下(50mぐらい??)の波が岩に当たって砕ける様子を見下ろす、とか。
止めるものが無いなかで、どこまで行くのか。
どこまでだったら、怖いと思いながらも、自分の身体を信じて進むことができるのか。
去年の私は、本当に恐る恐るだった。
高所恐怖症だから、足がすくむ。目を瞑りたくなるほど怖い。
それでも、”近隣の島”もなく ただただ海に囲まれて1つ存在し続ける この島の「アイデンティティ」を本当の意味で感じるには、
この野放しの豪快な地形とちゃんと対峙して、身体で心で感じ取らないといけない気がして。
一緒に行っていた仲間が、どんどん自由に豪快に味わいに行っているのに100歩ぐらい遅れて、やっと意を決してそろりと動き出して
抜き足、差し足、へっぴり腰で、できる所まで這っていく。
本当は私もフリーダムにどんどん行きたいのに 身動き取れない感じが、なんとももどかしくて、ずっと自分の中で小さな闘いが繰り広げられていた。
でも、今年は。
動けた。
今年の旅は、リトリートを主催するという形での、3月18日から21日(春分の日)まで4日間だったのだけど、直前に、一緒に創り上げてきたもう1人の主催者が来られなくなってしまって、ひとり開催となり。
リトリート主催者としてはまだまだ初心者、案内はできるけれど、それ以上のことは その場その場の流れに助けてもらいながら進めていく状況で、
こう決めるしかなかった。
「まずは、私が 楽しもう」。
怖いと思うのなら 怖いと思いながら、この島をちゃんと味わおう。
行ける所まで行ってみよう。
私がまず楽しめば、参加者も自由に楽しんでくれる。
そう思ったら、動けた。
もちろん、すぐにガンガン行けるわけではなく、
相変わらず最初は葛藤から始まる。
「怖い、怖いけど、どうする? 行かないと後悔するかもよ?」と。
迷う自分を責めずにじっくり時間をかけているうちに
ふとしたゆらぎで「あ、行こう」が一瞬現れる。
そうしたら、まず身体を動かして進んでみる。
慎重に、大きな岩を一段降りて、大丈夫だと思う。
「もっと行きたい?」と自分に問うて、「行きたい」が現れたら、何も考えずにまた進む。
そうこうしている内に芽生えてきたのが <自分の身体への信頼>。
「私の身体が変に動いて、私を裏切るわけがない」。
今までの私は、
脚を滑らせてしまうんじゃないか、
断崖絶壁に立ったら、急によろけたり、あちら側に踏み出してしまうんじゃないか、
そんな不安を覚えて、自分の身体を信頼できていなかった。
(それは、自分を信頼できていなかった、ということでもある)
でも、とりあえず先へ進みたいんだから進むんだ、と動いている内に、
「この、伸ばして岩をしっかり掴んだ自分の右手」を、
「3点確保をしっかり確かめて次の段に掛けた、この自分の左足」を、
大丈夫、信頼していい
そんな気持ちがどんどん沸いてきて。
気付いたら、参加者に「高所恐怖症なんて嘘でしょーーーー?!」と驚かれるほどに、軽々と自由に、
与那国島を形作る 何万年もかけて隆起した岩の上を、飛び回っていた。
「自分の身体を、信じる。」
それは、何よりの自分への信頼。
そして、このリトリートのテーマは「境界線を、含んで超える」。
怖いと感じながら、その先へ行ってみる。
去年5月に下見に訪れた帰りの飛行機で、自ら定めたそのテーマを、
自分で実行できたんだ。
与那国の地の神様からのギフトのようにも思えた。
与那国の「町の花」テッポウユリ
そして、これを書いているのは、2022年の夏至、6月21日。
与那国島リトリート「境界線を含んで超える」は、3月21日春分の日に完了し、
その春分の日に参加者が自分宛に書いてくれた手紙は、
夏至の日の今日、参加者の元におそらく届いているはずだ。
”始まり”の春分の日から、”陽極まる”夏至の日まで。
それぞれ リトリートで持ち帰ったものが、ぴったり3か月のこの旅路の間に、どんな風に育っていったのだろう。
私は。
自分の身体を信頼する=自分を信頼することで、色んなことが今までより乗り越えやすくなった。
それこそ身体のことで大きな不安にさいなまれた日々もあったけれど、信じていたらケロッと元通りになったりもした。
西の境界線に息づく島 与那国島からもらったギフトを、しっかりと自分の中に置きながら、
自分と 自分の身体を信頼して
今年の後半も日々生きていこうと思う。
春分の前の日、午後8時前、沈んだ夕陽の光が残る西の空
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