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【乃木坂46】超絶怒涛のスーパーアイドル、最後のわがまま。【山下美月卒業コンサート】

2024年5月11日からの2日間、東京ドームにて、乃木坂46 山下美月 卒業コンサートが行われた。グループを内からも外からも引っ張り続けてきたまさに「3期のエース」の最後のわがままが詰まった卒コンを両日振り返る。

Day1

遠藤さくら、中西アルノの影ナレを経て、OVERTUREがスタート。最初の曲に選ばれたのは、山下の卒業シングル「チャンスは平等」。曲のイントロがスタートすると、セット上部から月のモニュメントに腰掛けた山下が登場。会場に詰めかけた5万人のファンのボルテージが早速上がった。ところで、この曲、初披露となった今年3月のバスラから通算で4回目の披露(バスラ、風とロック、ガルアワ、やまコン)となり、私も風とロックには参戦していたが、その時よりもコールが活発であった。そして、コールが楽しい。卒業シングルらしからぬ曲調に、最初は賛否両論あったが、私はこういう卒業シングルがあってもいいじゃんと思っている人なので、むしろ今後のライブで聴ける回数が減ってしまうのが少し寂しくなってしまうほどである。

ダンスパートを挟んで、「制服のマネキン」、自身が初めて選抜入りした「シンクロニシティ」を、それぞれ山下センターで披露。「インフルエンサー」では、普段のライブよりも多めの炎が演出に使用されたのだが、この炎の熱さは、この日ステージバック席にいた私のところまで届くほどであった。

その後は、山下が参加した「キャラバンは眠らない」と、「会いたかったかもしれない」でファンとの接近戦を繰り広げた。

その後、メンバーが再びステージに戻って、「ガールズルール」を披露。「東京ドーム、騒げぇ〜!!!」の煽りで、ボルテージがさらに上がった。センター・白石麻衣の卒業後、多くの披露の場でセンターに立ってきた山下。卒業後はこのポジションに誰が入るのかが楽しみだが、未だにこの山下の煽りが聞けなくなるのはやっぱり寂しい自分がいる。

MC後は、自らの名前「山下美月」の「美」をテーマにしたブロック。山下、岩本蓮加、小川彩、佐藤楓、池田瑛紗、岡本姫奈、奥田いろは、冨里奈央、中西が真っ赤な衣装に身を包み「欲望のリインカネーション」を披露。バックの映像演出も相まって華麗なパフォーマンスとなったと思えば、今度は山下、梅澤美波、一ノ瀬美空、阪口珠美、矢久保美緒、松尾美佑の、「名前に『美』がつく6人」と、オリジナルメンバーの与田祐希が登場し、「知りたいこと」を披露。ライブではほぼ披露がない楽曲であっただけに、私は1人興奮していた。その後は、センターステージとメインステージの上手下手に大きな椅子が3脚登場。下手側に井上和、上手側に遠藤が登場し、「Rewindあの日」を披露したと思えば、続く「命は美しい」では、アンダーメンバーを従えて披露。抜け目ないメンバー全員への配慮が配られており、山下の深いグループへの愛が伝わった。

するとここで「カトラリー軍団の歴史」なる映像がスタート、過去にグループ内に存在した軍団について説明が。松村沙友理率いる「さゆりんご軍団」、秋元真夏率いる「真夏さんリスペクト軍団」、そして若月佑美率いる「若様軍団」の3大軍団を、「松・秋・若の三国時代」と紹介。牧原俊幸(元フジテレビアナウンサー)さんのピッタリすぎる声質のナレーションも相まって、コメディっぽさに拍車がかかった。

というより、軍団抗争から7年経ったのかというのが素直な感想である。
(ちなみに中の人は、「Sing Out!」新規の乃木オタ6年目)

映像後は、若月軍団長率いる若様軍団のスプーン担当の山下、フォーク担当の阪口、ナイフ担当の梅澤が登場し「失恋お掃除人」を披露。久しぶりに3人の決め台詞も披露され、会場はさらに盛り上がった。

すると最後に、「軍団長、成長した私を見ていてください!」と、若月の代名詞「箸くん」芸を披露。「これからも夢に向かって"はし"り続けます!」と軍団長へ気合いのこもったメッセージと共に、手にしていた箸を高々と掲げた。すると次は、サブステにさゆりんご軍団の衣装に身を包み白米を食べようとする、向井葉月、矢久保、一ノ瀬の3人が登場。それを見つけた山下は、若様軍団の2人に別れを告げ、サブステへ猛ダッシュ。山下軍団長に据えた「みづりんご軍団」が急きょ結成。この4人で、さゆりんご軍団の「白米様」を披露も、間奏で「やっぱり白米にはなれません!」と切り出し、たった数分で「みづりんご軍団」の解散が発表。それと共に一ノ瀬にお米の被り物が贈呈され、「みくりんご軍団」が爆誕した。曲が終わり山下が軍団に別れを告げ歩みを進めるも、3人が止めに入る。せーのの一声で衣装がオフショル仕様に。「皆さんのハートにズッキュン❤️」の掛け声で、真夏さんリスペクト軍団の「二度目のキスから」がスタート。センターステージに待つ吉田綾乃クリスティー、黒見明香、筒井あやめのもとへダッシュし披露した。

その後は、サイレンと共に映像がスタート。中身は「山下軍団、結成」とのこと。「8に愛された女」賀喜遥香、「最近まで雷を扱ってました」五百城茉央、「シュワシュワ、シュワシュワシュワ」川﨑桜の4名で「遥かなるブータン」を披露。すると間奏で、お米の被り物をつけたままの一ノ瀬が乱入。「美月さんを一番愛している私がいないのはなぜだ!」と猛抗議。それをみかねた山下は一ノ瀬へ入団テストを実施。「山下美月は…」「かわいい」「合格!」と無事に入団。一ノ瀬も合流し、5人で曲を最後まで披露した。

するとここで、山下”軍団長”から「今日で解散します!」と宣言。「さすがに結成が遅すぎました!」と原因を説明。しかし「このままではあまりにも寂しすぎるのでもう1曲!」と披露されたのが、完全新曲の「恋山病」。なんと、作詞と振り付けを山下自身が担当。忙しい合間を縫ってスタジオを借りて振り付けを考えたりと、山下のメンバー愛が伝わる瞬間だった。

続いて、映像では「やまandバニー」がスタート。左右のアイテムから好きなのを選んでねと進んでいくも、最終的に出来上がったのは、今回のライブグッズにもなっているサウナグッズで全身固められたコーデ。「違うの!今日は銭湯に行くの!」と衣装を総とっかえして「銭湯ラプソディー」を披露。さらに会場のボルテージが上がった。

ところで、先ほどの「ヤマバニ」。映像の監督を務めたのは、乃木坂46では「おひとりさま天国」などのMVを数多く手掛けてきた伊藤衆人監督。これには、ファンも納得しかなかった。

続いて「人間という楽器」「自分じゃない感じ」「好きになってみた」の3曲では、うさ耳をつけたメンバーが、再びファンとの接近戦を繰り広げた。

次の映像は、山下原案の短編集「忘れられない、ヒロイン」。普通の学生として過ごしてこなかった山下が、もしも普通の学生だったらという世界線の物語。このお話は、それぞれこの後披露される期別楽曲へと繋がる。5期生パートでは、川﨑ナレーションのもと、バスでよく見る人にまつわるお話が展開。そのお話がそのまま「17分間」に繋がる構成。これには1本取られた。

続く4期生パートでは、賀喜のナレーションで展開され「I see…」へと繋がり、3期生パートでは、与田のナレーションで「逃げ水」へと繋がる。本人は「曲と曲の繋がりの映像を作ってみたかった」と語っているが、こういうカタチでも期別パートを盛り込んでくるあたり、さすがの山下先生であった。

その後は、アンダーメンバー→選抜メンバーによるダンストラックがを挟み、ライブはいよいよ終盤へ。

花火の量が凄くて鼓膜がイカれるかと思った「世界で一番 孤独なLover」、火の量がエグすぎて汗でびっしょりだったという「インフルエンサー」、尊き「かきやま」センターの「ありがちな恋愛」、いつもお姉さんしてくれたという梅澤と吉田の2人に手をひかれた「帰り道は遠回りしたくなる」、そしてファンのクラップと歌声で一つになった「Sing Out!」の5曲でラストブロックは構成された。

最後の曲に選ばれた「僕は僕を好きになる」では、最終盤にサプライズでメンバーへ山下からのメッセージが。

メンバーの皆へ 

家族のようで、友達のようで、戦友でもあって、
乃木坂でみんなに出会って、初めて人を信じることができました。

ここまで続けてこられたのは、メンバーの皆の優しさのおかげです。
これからも乃木坂46を守り続けてね。 
                        乃木坂46 山下美月

ありがとうを伝えれてなかったという山下からのメッセージに、メンバーだけではなくファンも心を奪われたところで、ライブの本編が終了した。

アンコールは、「転がった鐘を鳴らせ!」からスタート。続く「ダンケシェーン」では、冒頭のソロを歌う久保史緒里が、「美月の温かい その背中が好きだった」と替え歌で愛情表現。これには山下も頭上で大きなハートを作り答えていた。ラスサビでは、センターに立った山下と向井の全力ダンケシェーンが展開。そして最後はもちろん「やっぱ美月だなー!」のコールを向井が発すると会場に「だなーーーー!!!!」が響き渡った。続く楽曲は、山下と久保のWセンターの「人は夢を二度見る」。尊きくぼしたのWセンターは永遠だと改めて思わされた。

そしてアンコールは「乃木坂の詩」で締めくくり、山下曰く、「賭けだった」という初日は大盛り上がりで終了。"超絶怒涛のスーパーアイドル"の最後のわがままは、最終日へと続いていくのであった。

Day2

いよいよ卒コンもDay2へ。筒井と小川の期別最年少コンビの可愛らしい影ナレを経て、OVERTUREがスタート。スーパーアイドル・山下のファイナル・カウントダウンがついに始まった。

「今日は私にとってアイドルとしての最後の1日です。ここまで皆さんとともに一緒に来ることができて本当に幸せでした。最後までよろしくお願いします!」

自ら開幕宣言を行い、初めての3期楽曲「三番目の風」からライブはスタート。センターステージで待つ残りの3期10人が待つステージへ着くと、「3期生、行くぞー!」と円陣で気合い注入。それは、この曲をパフォーマンスする11人の表情からも受け取ることができた。

続く「自分じゃない感じ」で、残りの4,5期が合流。「ガールズルール」では、今日も山下の煽りで会場がヒートアップ。続く「13日の金曜日」「ハウス!」では、フロートやトロッコで、早速ファンとの接近戦を繰り広げた。

フロートで場内1周するも「ハウス!」の曲終わりまでには間に合わなかった山下。どうやら、「何分以上の曲じゃないと1周できない」という制約があるようで、それに合わせて曲のチョイスやサビの繰り返しを行うとのこと。しかし、この日はリハよりもフロートのスピードが遅く、内心焦っていたと。本来であれば、曲のおしりまでに次の曲の位置に着かなければいけないのだが、どこかのタイミングで間に合わせることを諦めて、曲フリを急きょ入れたとのこと。こういう気転が効くあたりが8年間の成長の一つなのだろう。

そんな山下がセンターに立ち、続いて披露したのが自身初センターの「僕は僕を好きになる」。この緩急も山下らしいチョイスであった。

MCを挟んで、自らの名前にちなんだブロックへ。初日は「美」をテーマにしたが、今日は「月」をテーマにしたメドレーが展開。山下美「月」、向井葉「月」、菅原咲「月」の、名前に「月」がつく3人(通称:トリプルムーン←個人的にそう呼んでる)が「満月が消えた」を披露、その後、センターステージで、「月の大きさ」「届かなくたって…」、メインステージで、35thアンダーメンバーと共に「狼に口笛を」を披露。アンダー楽曲多めのセトリには随分と興奮した。

次のブロックは映像からスタート。卒コン2週間前に山下が明かした「どうしてもセットリストに入れたい楽曲」があるという。

それは「自分がセンターに立ったにもかかわらず、ミュージックビデオ撮影の当日の朝に振り入れをし、撮影をしてから、それ以降1度も踊ったことがない“幻の楽曲”」だという。

「その当時未熟だった自分をすごい思い出して、今の乃木坂でこれからもっと、より今以上に輝いてほしいなっていうメンバーを私がこう選ばせていただいて、ユニット曲として披露させていただきます」

その楽曲の正体は、坂道AKBの「初恋ドア」

坂道AKBとは、AKB48、乃木坂46、欅坂46(現櫻坂46)、日向坂46から選抜された次世代メンバーによるユニット。この「初恋ドア」は、2019年に発売されたAKB48の55枚目シングル「ジワるDAYS」に収録された。(この楽曲は、指原莉乃の卒業シングルでもある)

ちなみに、当時の参加メンバーは、

AKB48:
岡部麟、小栗有以、坂口渚沙、下尾みゆ、福岡聖菜、矢作萌夏、山内瑞葵
NMB48:梅山恋和
HKT48:田中美久
STU48:瀧野由美子
欅坂46:小池美波、小林由依、菅井友香、鈴本美愉、土生瑞穂
日向坂46:加藤史帆、小坂菜緒、齊藤京子、佐々木美玲、渡邉美穂
乃木坂46:梅澤、大園桃子、久保、与田、山下(センター)

以上、25人である。

山下と共にこの楽曲を披露した「今以上に輝いてほしいなっていうメンバー」というのは、黒見、璃果、林瑠奈、松尾、弓木の5人。いわゆる「新4期(はりるみな)」である。

楽曲が発表された瞬間のどよめきは、想像以上に揃った5万人のコールになって、山下の悲願が無事に叶った瞬間であった。

続いて登場したのは、キャプテン・梅澤。この2人といえば、2020年に公開された映画「映像研には手を出すな!」の主役を、1期生・齋藤飛鳥と共にはった盟友。この2人で披露したのが、映画の主題歌「ファンタスティック三色パン」。この曲といえば、間奏のゲームが名物となっている。21年の真夏の全国ツアーで披露された際には、飛鳥がやたらとゲームに負け続けて、ひたすらぶりっ子をさせられていた記憶がある

今回は、1色ビーチフラッグ対決として、負けた方が罰ゲームを受けるというもの。第1戦は山下が負けてアイドル最後のぶりっ子を披露。知らぬ間に瞬足を履いて、見えないコーナーで差をつけていた梅澤に負けたことが納得いかない山下は泣きの1戦を希望し、第2戦へ。今回は山下が無事に勝利をおさめ、梅澤の罰ゲームはぶりっこかと思いきや「山下への心のこもったメッセージ」だった。楽曲がは一時停止し、梅澤は山下へメッセージを贈った。

なかなかね、伝えられる機会もないので、真面目にメッセージを送りたいと思います。

私はいつからかずっとやまのことが心配で。いつからか変わった気がして、すごくがむしゃらに頑張る姿と、何かもがいているように見える姿を近くで見てきて。根拠のない心配だったかもしれないけど、そういうとき私はなかなか力になってあげられなかったなと思って。私とやまは背負うものの種類がちょっと違うから、なかなか手を差し伸べて上げることができなくて、それが少し心残りです。

でも、本当にやまからはたくさん刺激をもらっていて。やまの卒業が初めて自分にも身近に感じて、やまが今まで以上にアクセスを思いっきり踏んでアイドルを終えようとしている姿を見て「卒業するってこういうことなんだな」ってすごく思ったし。本当にここまで頑張ってくれて、近くで同期でいられて本当に嬉しかったなと思います。ユニット曲も多かったしね。

きっと本当に背負うものがたくさんあったと思うんですよ。だからこれからは、背負うもの何もなしに外から見る乃木坂を楽しんで欲しい、私は頑張ります。そしてこれからは外から見える乃木坂がどんな風に見えるかを教えてください。本当にありがとうね。

キャプテンとして、同期として、そして仲間として、熱いメッセージが贈られ、最後は熱い抱擁を交わした。

続いて披露されたのは、ポケモンの主題歌として、生田絵梨花と松村の「からあげ姉妹」が歌うverの「1・2・3」。プライベートでも親交が深い伊藤理々杏と2人っきりで披露。「やっと披露できたね!」と喜び爆発の理々杏。その後ろには、たくさんの「りりした」の写真が。心なしか理々杏の目に光るものがあったのは気のせいだろうか。

続いて、久保と与田が登場し、「言霊砲」へ。この間奏では、いもうと坂として切磋琢磨してきた与田と久保からメッセージが贈られた。

与田:美月、まずは卒業おめでとう。頑張ったね。思い返すと美月とは嬉しいことも楽しいこともたくさん一緒に経験してきたし、その分しんどいことも辛いこともたくさん一緒に乗り越えてきたね。だからこそ今日美月のアイドルとしての最後の姿がすっごいキラキラしてて、それが自分のことのように嬉しく思っています。

最近は乃木坂の活動以外にも色んなお仕事をしててすごく尊敬していた分心配にもなりました。私は何もしてあげられなかったけど、美月が戦っている姿を見て「私も頑張ろう」って何度も思わされました。

あなたは3期の、乃木坂の誇りです。

今まで本当にお疲れ様!そして最後に美月、今度一緒にサウナ行こう!


山下:行こう!ありがとう!

久保:やま、まずは卒業おめでとう。

私たちは一緒にいる期間がすごく長かったから、楽しいことも、どちらかと言うと苦しいことも、一緒に涙を流したことも本当にたくさんありました。いつからか山下を1番アイドルとして信頼していたからこそ「言葉が必要ないな」と思って、言葉にするのを辞めてしまったときがあって。今日までずっと言えてなかったことばかりだなって思うんですけど。今日がアイドルとして最後の日っていうことで、最後に言わせてください。

山下をずっと尊敬していたし、ずっと大好きでした。伝えられないまま今日まで来ちゃったけど、あなたほどアイドルとして完璧な人を見たことがないし、そんな山下と隣にいられて、“くぼした”って呼んでもらえたり、一緒にこうやって歌えて本当に幸せでした。

これからは背負っていたものを全部置いて、自分のために幸せに生きてください。改めて本当にお疲れ様でした。卒業おめでとう。

山下:ありがとう。

間奏で贈られたこのメッセージに、涙を必死に我慢する山下の姿があった。

続いて登場したのは、4期の賀喜。「やまかき」コンビで「無口なライオン」を披露。笑顔と涙が交錯し、何度も抱き合った2人の姿に涙が止まらなかったファンも多いだろう。

その後は、梅澤の「ここらでひとっ風呂行こうぜ!」の一声で始まった「銭湯ラプソディー」を皮切りに、ファンとの接近戦が再びスタート。続く「裸足でSummer」では、メンバーが頭に乗せていたタオルを流用して恒例のタオルパフォーマンスに繋げるあたり、プロデューサー・山下の本領が発揮された瞬間であった。

ファンとの接近戦は、続く「おいでシャンプー」まで繰り広げられた。この「おいでシャンプー」といえば、間奏の「ナカダカナシカ」コールが有名だが、私は現場で「ミヅキチャンシカ」と実際に叫んでいた。(なんなら昨年の飛鳥コンでは、「アスカチャンシカ」と叫んでいた。)

3期の山下とのエピソードが聞けたMCを経て、次のブロックは期別楽曲のパートへ。一番最初に登場した5期とは「心にもないこと」を披露。曲中には、将来を担う若き5期生へありがたいメッセージ。

「絶対に明るい未来しか待っていないと私が保証するので、何も心配なく、無理をせず乃木坂を楽しんでくれたら」

そう言葉を贈ると、山下と5期生10人で声を揃えて「瑛紗、誕生日おめでとう!」とサプライズが。公演当日(5/12)に22歳の誕生日を迎えた、池田へのサプライズも大成功。「美月さんのようなアイドルになります!」と抱負を語り、最後は記念写真もおさめた。

続く楽曲は、4期生の「図書室の君へ」。ここで、大阪で舞台の公演を終えた柴田柚菜が合流。「大阪から来ちゃいました!卒業おめでとうございます!」そんな柴田と山下がセンターに立ち、披露した。当然、オリジナルセンターの彼女の姿も目に浮かんだ。

「乃木坂46が大変な時に頑張って耐えてくれた。みんなのことが頼りで、大好きでした。ありがとう!」

ありったけの感謝を伝えると、4期生は山下の元へ駆け寄った。

その後は、「乃木坂に入ってから好きになって、たくさん助けられた」という「何もできずにそばにいる」を全員歌唱で披露。山下の表情からも、この曲の想いを汲み取ることができた。

ダンスパートを経て、ついにライブは終盤へ。昨日同様、「世界で一番 孤独なLover」から始まったラストブロックは、久保とのWセンターの3期楽曲「不眠症」、「シンクロニシティ」「帰り道は遠回りしたくなる」「Sing Out!」を立て続けに披露。最後の曲へ行く前に、山下から同期へメッセージが贈られた。

「乃木坂の3期生だったからここまで続けてこられたし、生まれ変わっても私は絶対アイドルになりたいし、乃木坂の3期生になってまた11人の仲間と出会いたいなと思うぐらい、一生で一番の出会いだったと思います。私は明日から乃木坂から一歩踏み出しますが、3期生のみんなの一番のファンでありたい。今まで本当にありがとうと伝えなきゃいけないときがたくさんあったのに、全然感謝を伝えきれてなかったなって、本当にちょっと後悔してます。なので、これからも困ったことがあったら…全世界が敵になっても、私は絶対に3期生のみんなの味方でいます」

そう残した山下が本編ラストに選んだのは、3期生楽曲「思い出ファースト」。過去の3期生ライブでも、最終盤に披露されたこの曲。その意味は「君とここにいる奇跡」という歌詞が物語る。

山下に出会えた奇跡、山下が3期生として乃木坂にやってきてくれた奇跡を噛み締めながら本編が終わった。

いよいよライブは卒業セレモニーが待つアンコールへ。冒頭の映像は、山下が好きな声優・武田華さんのナレーションで作られた。

映像が終わると、純白のドレスに身を包んだ山下が登場。ファンへ向けてスピーチを始めた。

ありがとうございます。いよいよここまで来てしまいました。卒業を決めたのは自分のはずなのに、ここに来てやっぱり乃木坂46から出るのは本当にさみしいなって思います。でも、アイドルとしては、本当に私はもう悔いなく全部やりたいことをやり切れたなと思っています。メンバーには本編中に感謝の気持ちを伝えることができたと思うので、今から私を支えてくださったいろんな方にちゃんと感謝の気持ちを伝えたいなと思います。

私はいつも、ライブの時とかにMCで話す機会があると、絶対に言葉を準備していて、前日の夜、当日の朝とかに「きょうはこの気持ちを伝えたいな」とか、いろいろメモに書いていつもお話してたんですけど、きょうはあえて何も考えずに来てみました。なので、ちゃんとその気持ちで皆さんに感謝を伝えたいなと思います。



まず、ここまで私を育ててくれた皆さん。さっきの映像とかも、私はまだ映像見れてないけど、ナレーターさんが私の好きな『ラ・ラ・ランド』の声優さんで、そういうところも愛にあふれてるなとか、今回のライブは私がセットリスト考えさせてもらったりとか、いろいろ衣装はこれにしますとか、新曲を作ったりとか、本当に映像とかもたくさんわがままを言って、知らないスタッフさんもきっとたくさん関わってるんじゃないかなと思うんですけど、本当にたくさんのスタッフさんのおかげで、すてきな門出の場所を作っていただけたなと思います。

そして今回ドレスを作っていただきました。私が卒業する時はこういうの着たいっていうのが実は昔からあって、今回それをかなえていただいて。ドレスに月のマークが入っていたりとか、本当にこのスパンコール一つひとつを衣装さんが毎日毎日一生懸命つけてくださったんだろうなとか、本当にもうスタッフの皆様には感謝してもしきれないなと思います。ここまで支えていただき、そして何もわからなかった私を育てていただき、本当にありがとうございました。

そして今回のライブはですね、衣装に月が入っていたりとか、ずっと空のイメージで月があったりね。山下美月の月をイメージして作らせていただいたんですけど、おじいちゃんが美月という名前を私にくれて。もともとは別の名前だったらしいんですけど、美しい月の日の夜に生まれてきたから美月だって言ってくれて、山下美月っていう名前になったそうで。それが生まれて24年後にこんな東京ドームのステージになるとは、きっと天国のおじいちゃんもおばあちゃん思ってなかっただろうし。

そして、きょうはお父さんとお母さんも見に来てくれてて。お父さんは本当にめちゃくちゃライブとか、あとファッションショーとか、フェスとか、乃木坂のライブ以外も本当全部見に来てくれて、ツアーも全国を一緒に回ってくれて。そんなにセトリも変わんないしいいよって言ってたんですけど、毎年来てくれました。

お母さんはいつも私がこうメンタル的にしんどい時とか、つらい時に、私はあんまり人にそういう姿を見せるのが苦手なので、いつも1人で抱え込んじゃっていたんですけど、そんな私を優しく包み込んでくれて、お母さんのおかげで心が折れずにアイドルを続けてこれたなって思います。お母さんはあんまり人混みが苦手らしくて、今までライブとかはそんな頻繁には来てなかったんですけど、きょうは来てくれました。でも配信は毎回絶対に見てくれて、本当に家族にも愛されて、1人っ子だったけど全然さみしくなかったです。ありがとうございます。

そしてやっぱり1番に感謝を伝えたいのはファンの皆さんです。皆さんが思ってる以上に私は日々ファンの皆さんのことを毎日毎日考えてて、夜寝る前とかも絶対考えてたし、ファンの皆さんにきょうはこんなことがあったらから絶対にこれを書こうとか、毎日毎日メモに書いて、ファンの皆さんに伝えたいことを送るのがすごく楽しかったし、私が本当に何の取り柄もなかった女子高生の時から、デビューライブで1番前に私のオーディション中の写真とかを掲げてくださるファンの皆さんとかを見たりして、なんで私のこと好きになってくれたんだろうってずっと思ってたんですけど、私はファンの皆さんのことが本当に大好きだったから、もうそんなことはいつの間にか考えなくなっていました。

体調がちょっと優れなくても、ライブでステージに立てばキラキラ歌って踊ることができたし、もうダメかもしれないってなった時も、ブログのコメントとか、今までいただいたファンの皆さんからのお手紙とかをたくさん見返して、こうやって私のことを支えてくださる皆さんがいるから、皆さんのおかげで強くなることができました。

アイドルとしてはもうきょうで終わってしまうんですけど、アイドルとしても私はきっと多分、自分で言うのもなんだけど、すごく強かったと思う。でも1人の人間としてはめちゃくちゃもろくて弱かったと思うし、だからこれからも少しお休みをいただくんですけど、また皆さんにお会いする機会は絶対に作るし、皆さんが安心して応援できるような存在にこれからもあり続けたいなって思うので、どうかこれからもずっと見守ってくださったらうれしいです。よろしくお願いします。

私はさっきも言ったように、普段から伝えたいことをファンの皆さんに伝えてきたと思うし、アイドルとしてちゃんと感情を表そうって思ってたので、最後に何話そうかなってさっき着替えながら考えていたんですけど、アイドルって大変なお仕事だと思っている方も多いと思うんです。でも、アイドルってめちゃくちゃいい仕事だし、私にとっては救いでした。アイドルになれたから私は今まで生きてこられたと思うし、誰かの希望になれたらいいなと思って毎日頑張っていました。実際に希望になれたかは分からないけど、こうやって卒業コンサートにこんなにもたくさんの人が来てくださった事実だけで、私は8年間あきらめずにここまで走ってこれて本当によかったと思います。

さっきも言ったけど、私は生まれ変わっても絶対にアイドルになりたいです。そしてまた皆さんとも絶対に会いたいし、皆さんが私のことをアイドルにしてくれたので、また来世も皆さんが私のことをアイドルにしてください。

出会ってくれて本当にありがとうございました。

涙を浮かべながら、15分間のスピーチを喋り終えた山下は、自身が作詞したソロ楽曲「夏桜」を歌い出した。後ろのスクリーンに映し出される手書きの歌詞。目を潤ませながら精いっぱい歌う山下の姿に、多くのファンの涙腺は既に機能していなかったことだろう。東京ドームに詰めかけた5万人が作り出した、ピンク×白のスタンドを見て山下本人は何を思っただろうか。

続く曲は、「くぼした」のWセンターの3期生楽曲「未来の答え」。ここで残りのメンバー全員が合流し、1人ずつ山下の元へ感謝を伝えに駆け寄った。涙する者、笑顔で最後のひと時を過ごす者、抱き合う者。一瞬ながらもそれぞれの時間が過ぎていくのを見て、スタンドで見ていた私は涙が止まらなかった。

最高のアイドルでした!乃木坂を選んでくれてありがとう!

最後に駆け寄った久保は、黄色い薔薇の花束を渡しながら山下にありったけの感謝を伝えた。

その後の「好きになってみた」では、3期生10人に見送られ、山下1人フロートに乗車。続く「人は夢を二度見る」にかけて、アイドル人生最後の接近戦で、東京ドームに詰めかけたファンへ、最後の感謝を伝えた。

ステージに戻ると、各期を代表して1人ずつ山下へ感謝のメッセージを贈った。

まず登場したのは、5期代表・一ノ瀬。5期生の中では、誰よりも山下を愛している自信があるという一ノ瀬が最後に感謝を伝えた。

一ノ瀬:まず、ご卒業おめでとうございます。せっかくこんな機会をいただけたので、美月さんの好きなところ、ちょっと言っても良いですか?
山下:嬉しい!何?

一ノ瀬:まず、いっつもキラキラなそのスペシャルフェイス。すっごい可愛いお顔が大好きで。あと、ノリが良くて何でも楽しんでやるところが大好きで。あと、急に手を握ってくれたり抱きしめてくれるところも好きで…(涙)。まだいっぱいありますよ?リハーサルで誰よりも全力で踊るところも好きだし、私服は可愛いのになんかダサくて面白い靴下履いてるところも好きだし、いっぱいあるんですけど…すごい助けてもらったこともいっぱいあって。

私は結構こういうキャラクターというかこういう性格をしてるので、あんまり悩んでることとか辛いなって思っても表に出すことが苦手なんですけど、美月さんはもうダメだなってときに絶対隣に来てくださって、声を掛けてくれたり、ご飯に連れて行ってくださったり…本当に美月さんに助けていただいたことが多すぎて。

なので、本当にすごい寂しいんですけど、美月さんにしていただいたことを私もこれから入ってくる後輩とかにたくさんできるように頑張るので、見ててください。本当にずっと私の憧れのアイドルでい続けてくれてありがとうございました。これからも幸せでいてください。大好きです。

山下:すごい美空は強い子だね、本当に。いつも裏で泣いてたり、今日も本番前に目合って泣いちゃったじゃん、2人とも(笑)。でも、それを表では絶対に出さないプロアイドルだと思うから、ちゃんとこのまま頑張っていたら絶対良いこといっぱいあるから。ずっとね、応援してるね。

一ノ瀬:ありがとうございます。

4期からは、賀喜が登場。乃木坂46としての最後の「やまかき」の時間である。

賀喜:なんかこんなときが来るとは思っていなくて、ちょっとふわふわしてるんですけど…まずは、ご卒業おめでとうございます。

美月さんは私があまりアイドルに興味がなかった、昔は、そのときにできた初めての推しで、携帯のホーム画面とかLINEのアイコンとか、画像フォルダも美月さんの写真でいっぱいで、いつも見て癒やされてて。それくらい大好きで憧れでした。そんなキラキラ輝いている美月さんに憧れてオーディションを受けたことがきっかけで、私は今ここにいます。 笑って泣いて、素敵な経験をたくさんさせていただいて、大切な仲間もできて、優しい人たちに囲まれて、今すごくもったいないくらい幸せだなって思うのは、本当に美月さんのおかげです。本当に本当にアイドルになってくださって。あのとき目の前が真っ暗かもしれないって思った私の希望になってくれてありがとうございました…(涙)。

忙しい中でもいっぱいご飯とか誘ってくださって、いっぱいお話聞いてくださって、すごい思い出もいっぱいあって。全部楽しい思い出がいっぱいなんですけど、ずっと1つ後悔してることがあって。

美月さんの卒業を聞いたときが、ちょっとだけ私が頑張り方っていうか、前の向き方がわからなくなっていたときで。その後に2人でお話したときに、美月さんは泣いている私にすごい私の良いところを言ってくださって、褒めてくださって。その後に、「私はグループから卒業するけど、どう?乃木坂頑張れそう?」って隣で私に聞いてくださった言葉に対して、「はい」って頷けなくて。下向いて「任せてください」ってあのとき言えなかったのを今日までずっと後悔してて。本当に最後まで頼りなくて、心配ばっかりかける後輩でごめんなさい。

でも、やっぱり美月さんみたいな人になりたいので、これからたくさん頑張るので、美月さんがいっぱい私に伝えてくれた、褒めてくれた唯一無二のところとか、私にしかない良いところとかを持って自分なりにこれからもっと頑張るので、卒業してもずっと見守っていてください。本当に今までありがとうございました。

山下:こちらこそです。ありがとう。かっきーはそんなに頑張らなくて良いんだよ?すごく頑張っていて頼りになるし、それは何よりスタッフさんとかメンバーのみんながわかっているから、自分だけで抱え込もうとか、かっきーの良いところは私が1番知ってるんだから、自分では良いところにもちろん気付けないと思うんだけど、かっきーは本当に素敵な人だから。そのままでずっと変わらずに。乃木坂をこれからもよろしくね。

賀喜:はい!ありがとうございます。

山下という、憧れの人と共にグループを引っ張り続けてきた賀喜。最後の力強い返事で、山下は大きな安心を得ただろう。

そして、同期・3期からは、プライベートでも親交が深い理々杏がセンターへ。歩み寄るその時から、理々杏の目には涙が溜まっていた。

理々杏:今日はちょっとどうせここに来たら頭が真っ白になるんだろうと思って手紙にしてきたので、ちょっと待ってください…(涙)。ちょっと長いけど許してください。

やまへ

ついにこのときが来てしまいましたね。随分と前からいつか来る今日の日に泣かずにしっかりと思いを伝えられるように何度も何度も繰り返しイメージトレーニングをしてきたけれど、たぶん今の私は涙でボロボロになっていたと思います。3期生として乃木坂に加入してから、休みの日は一緒に遊びに行ったり、仕事終わりにご飯に行ったり、長い休みがあるときには旅行に行ったりしているけど、正直何がきっかけで仲良くなったかは覚えていないです(笑)。

いつの間にか一緒にいて、気づいたら何でも話せる自分にとってとても大切な存在になっていました。やまのことを好きな理由はたくさんあるけど、その中の1つがお仕事へ向かう姿勢です。やまはどんなお仕事にも1つひとつ全力で向き合っていて、何事にも手を抜かず努力を重ねていて、近くで見ていても思わず尊敬してしまうほどかっこいいです。 でも、そのおかげで心配になってしまうこともありました。

おうちで倒れたという話を聞いたときは自分のことのように苦しくて、アイドルとしてのやまは本当に大好きだけど、そのときばかりはお仕事をお休みしてくれることで、少しだけホッとしたりしていた自分がいました。だからね、大変でやまがこのグループを辞めたいって言われても正直冗談でも引き止められないなって思っていたんです。

でもそこから、やまはきっと色々なことを経験したり、ファンの皆さんからたくさんの応援を受け取って、あるときに「なんだかんだアイドルとして過ごす毎日が楽しい」って話していたときは、私は関係ないのにすごく嬉しかったし、こうして新しい人生の道を見つけて前向きに歩いている姿を見ると安心して、冗談交じりに「寂しい、行かないで」って言えます。

今回の卒業シングルで、ありがたいことに側にいられたことはずっとずっと私の中で願っていたことだったから、叶えたかったことだったから、それが叶って私はすごく嬉しかったんだ。でも、私の力不足で本当に辛いときに近くにいれなくてごめんね。これからはセンターとしてではなく、親友としてどうぞよろしくお願いします。

やまが今まで頑張ってきた分、いっぱいいっぱい幸せになってね。

本当はこの言葉を言ってしまうと終わってしまうから言いたくないけど、言いますね。

卒業おめでとう。
本当に今までお疲れ様でした。
                            理々杏より。


山下:ありがとう、理々杏。嬉しい。理々杏と最初に乃木坂に入って出会ったのは理々杏が中学校2年生のときで。沖縄出身だったから、沖縄から1人で14歳の女の子が、兄弟も私たちいないしね、そんな中で1人で上京してきてきっと心細いだろうし、心配だなっていう気持ちで実は最初一緒にいて。

でもいつしか理々杏の方が年下なのにお母さんみたいに思えてくるときとか。

でも、私が初めて親友だなって思える人が理々杏だったから、本当にそんな人と出会えて嬉しかったし。私は卒業の相談とかをメンバーにしたらその子に気負わせてしまうんじゃないかなって思っててほかのメンバーにはあんまりそういう話はしていなかったけど、理々杏にだけは旅行に行ったりしたときとかね、夜ホテルとかで夜な夜なそういう話をしてて。だから本当に一緒に幸せも苦しみも全部半分こで今までやってこれて、理々杏がいたから私はここまでこれました。本当にありがとう。これからも親友でいてね。

理々杏:もちろんです。ありがとう。

言葉を詰まらせながらも、手紙を読み切った理々杏。一人っ子という共通点から始まった2人の物語は、年月を重ねるにつれてお互いにとって大事な大事な親友へと進化した。もう、乃木坂46での「りりした」が見れないのは寂しいが、これからも大きな友情を深めていってもらいたい。

そして。ついに最後の曲へ。「最後は私らしく笑って終わりたい」と選んだのは、自身の卒業シングル「チャンスは平等」。思い返せば、やまコン初日もこの曲で幕が上がり、アイドル最後もこの曲で締める。最後まで山下らしさ全開であった。

楽曲披露が終わり、メインステージに戻ろうとすると、東京ドームの天井に「美月 ありがとう」のメッセージが浮かび上がり、最後の挨拶で一礼をすると、ファンからの最後のメッセージが。

たくさんの"あい"を ありがとう

「えー、ビックラブ。笑」
なんとも、山下らしい表現。笑

「アイドル人生めちゃくちゃ最高で楽しかったです!毎日笑顔であふれていました。月へ帰ってお休みをしますが、また少ししたら地球へ戻ってきます(笑)。本日は本当にありがとうございました。また会えるのを楽しみにしています!」

そう残した山下は、梅澤と久保、そして5万人のファンに見守られながら、ひと休みのために月へと帰っていき、2日間の卒業コンサートの幕が降りた。

山下先生、この曲を選んでくれてありがとう。

今回の卒コンで披露した全49曲の中で、この卒コンでどうしても聞きたい曲が私には一つあった。

それは、23thシングル「Sing Out!」である。

先述したが、私は19年1月に乃木坂に出会い、乃木オタになって最初に発売されたシングルという、私にとって特に強い思い入れがある1曲だ。

だからこそ、今回の卒コンでやってくれないかなぁという淡い願望が私にはあった。

古くからのファンの方ならご存知だろうが、山下は「Sing Out!」の活動は不参加。初選抜となった「シンクロニシティ」から今回の「チャンスは平等」までの期間で、参加しなかった唯一の表題曲である。

というのも、この時期の山下は、「神酒クリニックで乾杯を」(BSテレ東)へのレギュラー出演を皮切りに、連ドラ初主演となった「電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-」(テレビ東京系)など、ドラマ出演が続いていた。

そんな中、出演予定だった「マイナビ presents 第28回 東京ガールズコレクション 2019 SUMMER/SPRING」の出演を体調不良によりキャンセル。ファンからも心配の声が上がっていた。

ドラマ撮影が進んでいく中で、
選抜発表、ジャケット撮影、MV撮影、レコーディング
などの制作活動と両立することが難しい状況が続いており
スタッフさんと話し合った結果
23枚目シングルの活動をお休みさせていただくことになりました

後の活動再開時の報告VTRでは、「2019年に入ってから約半年で2週間ぐらいしか乃木坂46の活動に参加できていなかった」と振り返っている。

「色んなお仕事をさせていただいているのはグループのおかげなのに、そのグループに貢献する活動ができていないっていうのは、自分を責めているというか、本当に力不足だなと思います」

先述したブログでも、

ドラマ撮影と体調不良が重なってしまい
思うように乃木坂46としての活動が
できていない現状をとても悔しく思います
ファンの皆様にご心配をおかけしてしまって
不甲斐ない気持ちで一杯です
本当にごめんなさい

一番頑張らないといけないタイミングだったのに
皆様の期待に応えられず本当に申し訳なく思います

悔しさを露わにしていた。

それでもって、「Sing Out!」の歌詞である。

ここにいない誰かもいつか 大声で歌う日が来る
知らない誰かのために…
人はみな 弱いんだ 
お互いに支え合って 前向いてゆこう

一人ぼっちじゃないんだよ
Say hello! Say hello! Say hello!

今思い返せば、好きな歌のワンフレーズとして何気なく歌っていたが、山下のことを思って、秋元先生が書いた詩に聞こえる。

大切な先輩がセンターとして頑張っているのに、自分の体が追いつけずに傍で活動が出来なかった悔しさ、そしてこの先輩に育ててもらった恩、さらにその先輩と同じ地で卒コンを開催することができた感謝。

山下にとって、この曲をセットリストに入れたかった並々ならぬ思いと、私は受け取った。

改めて大きな声で言いたい。
この曲を披露してくれてありがとう。

アンダラ大好き山下さん

今では、グループ内外関わらず多くのメディアで活躍している山下。そんな山下を私は「アンダラ大好き山下さん」と勝手に呼んでいる。

私のフォロワーさんならご存知だとは思うが、私はアンダラが行われる度に記事を執筆し続けている自称「アンダラ大好きお兄さん」である。(ライブ当時はまだ25歳なのでお兄さんでいさせてください…)

活動休止期間はあるものの、アンダーでの活動は一度もなかった山下。それでも、合間を縫ってアンダーライブを毎回見にきていたのだ。

終演後にインスタのストーリーズを更新して「え!いたの⁉︎」と、毎回驚かされていたものだ。

34thアンダラ



31stアンダラ(理々杏インスタより、左から山下、梅澤、岩本、理々杏)

今回のセットリストをまとめるにあたって、一つ気になったことがあった。

山下自身が一度もアンダーとしての活動がない割には、アンダー楽曲の割合が多いなぁと。

そこで、一度もアンダーの活動がないメンバーの卒コンにおけるアンダー楽曲の数を調べてみた。

対象のメンバーは、松村沙友理、白石麻衣、桜井玲香、西野七瀬、生駒里奈、橋本奈々未の6名だが、桜井と西野、それに橋本は、全国ツアーないしバースデーライブの中で卒コンが組み込まれている(アンコールでセレモニーを行った)ので、この3名は除いた残りの3名の卒コンセトリを対象とする。

松村沙友理(21年6月卒コン実施):0曲
白石麻衣(20年10月卒コン実施):0曲
生駒里奈:(18年4月卒セレ実施):0曲

山下美月:(24年5月卒コン実施):3曲
(Day1:欲望のリインカーネーション、Day2:届かなくたって…,狼に口笛を)

この3曲は、いずれも自身の名前からインスピレーションを受けて披露された曲なので何とも言えないが、先輩の3人がいずれも0だったことを考えると、外から見続けてきた山下が、いかにアンダーないしアンダーライブを好きでいたかというのがわかると思う。

盟友・久保史緒里が語る「アイドル・山下美月」

山下を語る上で外すことはできないのが、同期・久保史緒里とのコンビ、通称「くぼした」。卒コンを終えた直後の5月15日に放送されたニッポン放送「乃木坂46のオールナイトニッポン」では、久保の目線から山下について語る場面があった。

この前週のANNでは、普段メインパーソナリティを務める久保に変わって、山下がメインパーソナリティとして放送をしていた。
その放送では今まで山下を支えてきたスタッフから事前アンケートを取り、山下の7年間の活動をクイズ形式で振り返る企画をしていた。
その中で、事務所の代表であるYK氏から「2人が初選抜入りしたとき、先輩との楽屋で馴染みやすいよう配慮ができず、ずっと立たせてしまった」

初選抜になったときに私、ykさんに呼ばれて。『今後頑張っていこうね』っていう話のほかに、『実は山下を心配している』っていう話をされて。

私、その当時って、わりと仲良くさせてもらっている先輩がいたこともあって、山下ってすごく真面目だし、自分からワイワイできないタイプだったから、それがykさんとしては、『先輩の輪の中に入っていくのが大丈夫かな』っていう心配をしてたらしくて。

そこを久保に担ってほしいっていうのを……これは多分山下も知らない話なんだけど、『先輩との距離感とか距離の詰め方とか、そういうのを久保が担ってほしい』『教えてあげてほしい』っていうのを実は初選抜当時に頼まれてて。でも私も緊張するし、何ができるわけじゃなかったけど、2人でいるとそこで完結しちゃうから、2人だけでいないようにしたりとか。

2人の始まりって、『お見立て会』っていう初めてのステージで、“シンメ”と呼ばれる対になるポジションに立たされたことだったんだけど、そこから『3人のプリンシパル』っていう舞台があって。それは選ばれないと舞台に立てないっていうものだったんですけど、それも終わってみたら、最多出演数というのが2人並んで一緒で。もちろん最初は大人の方が決めた立ち位置みたいなものだったかもしれないけど、『3人のプリンシパル』を経てすごい意識はするようになって、2人で取材したり……。

そういうことがどんどん増えてたんで。最初の頃は、与田、大園(桃子)、久保、山下での仕事がやっぱり多かったんだけど、例えば4人で雑誌の撮影して、2人(与田と大園)はその後も仕事があるけど、私と山下は暇……みたいなことが結構あったんですよ。

で、2人で『やることなくなっちゃったね』って言って、ファンの方に向けて配信をしようって言って、自分たちで配信をしたりとか。2人が初選抜でセンターになってるのを、たまたま同じタイミングでテレビで観て、『何か泣ける』って言って一緒に泣いたりとか、そういうことをしてたから、一緒に泣いた数の方が多分多いの、山下に関しては。

そういうのをすごくともにしてくれたメンバーだったので、何か特別な気持ちはもちろんあるわけですよ。それは、最初は大人の方に決めてもらったものだったかもしれないけど、今考えてみると、2人で何か作ってきた関係でもあるんじゃないかなと私は思ってるので。そうだったらいいなと思っているんですけど。

ライブでね、自分の気持ちを曲に乗せて伝えさせてもらうところがあったんですけど(Day2:言霊砲)、私、一切考えずに言ったんですよ。緊張するから、いつもはめっちゃ考えて行くのに、一切考えずに行った。で、出た言葉がもう『大好きでした』ってことになったんだけど(笑)

言えないのもつらかったですよ。めっちゃ好きなのに。ありがたいことに2人での仕事が増えて行けば行くほど意識しちゃって、やっぱり言えなかったなって。意地で言えなかったっていうのはあるけど、最後に言えて良かったなって本当に思ってるし、なんかお互いそうだった気は勝手にしてるんですよ。そうだったら嬉しいなと思ってます。

(山下の)卒業間近にして、『山下にとって、私のいない“乃木坂人生”だったら、どんなだったんだろう?』っていうのを、ここ最近すごく考えるようになった。もしかしたら、私っていう対にされる存在がいなかったら、もっと楽だったんじゃないかなとか。自分の逆も然りとか、いろいろ考えた。『もし山下のいない“乃木坂人生”だったら』とかも考えたんだけど。

私目線で言わせてもらうと、山下がいない“乃木坂人生”は、多分本当につまらなかったと思いますから。彼女がいてくれて、今すごい楽しく乃木坂やれてるなと思うので。『山下が久保にとって山下はどんな存在でしたか?』って言われたら、いなければいけない存在でした。なので、最後、卒業を見送れてよかったなと思っています。卒業おめでとう! 大好きです」

※一部、文章改変

この言葉を残して、「はいこれで封印!もうこの話はしないから!」と笑顔で締めて、その後の選曲としてチョイスしたのが、くぼしたが揃って初めてWセンターに立った「未来の答え」だった。これをリアルタイムで聞いていたリスナーは涙を流す人が多かっただろう。例に漏れず私もこの1人である。

加入当初の数奇な出会い、運命の糸で結ばれたかのように繋がったシンメから始まったくぼしたの物語。まさに、これが8年前から思い描いていた「未来の答え」だったのだろう。

公式お兄ちゃんも認める「山下ってやっぱりスーパーアイドル」

山下が輝く姿は、もちろん公式お兄ちゃんの目にも届いている。5月17日に放送されたTBSラジオ「金曜JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD」では、初日に参戦したバナナマン・設楽統が山下について語る場面があった。

設楽:改めて思ったけど、山下ってすごいスーパーアイドルだよね。
日村:スーパーアイドルだろうね、あの子は。
設楽:山下ってさ、器用なんだよね、何事も。だからあんまり凄そうに見えないというか、さらっと出来ちゃうから。演技もそうだし、歌もそうだし。だから、逆にいうと器用すぎてこなしちゃうから。
日村:あー、目立たないんだ。
設楽:だから改めて、山下ってそういう意味では結構完璧なアイドル像に近いというか。そつないって感じ。
日村:上手いセカンドの人が、上手すぎてファインプレーにならないみたいなね。
設楽:だから改めて思ったけど、そう。
日村:でも、山下っていうのはやっぱすごい存在だったと思うんだよね、乃木坂の中でね。輝き方が素晴らしかったしね。
設楽:まぁ、そうじゃない?
日村:もう間違いなく、主役張っちゃうような女優さんになっちゃうでしょ、あの子。
設楽:そういう方面に行くんじゃない?
日村:行くだろうね。
設楽:まぁ主役もそうだろうけど、名バイプレイヤー的になっていくかもしれないし。わかんないけどね。

(中略)

設楽:俺が観に行った日は、山下の意向がすごい(構成で)。曲もあれやりたい、これやりたいもあるだろうけど、企画とかVTRとか、やりたい事てんこ盛りで。それがもうね、全部に説得力があるんだよね。地に足ついてるというか。だから、演技力もそうだし、ダンスとかもそうだし、カッコいいブロックもあるし。まぁ1日目は本人も言ってたけど、「楽しい、笑顔で」って感じで、2日目はしっとりというか、ファイナルっぽい感じにっていう棲み分けをしていたと思うんだけど。そつないっていうか、でも盛りだくさんなんだけど。歌もダンスもお笑いブロックもちゃんとしてて。凄かったよ。

設楽が言う「器用で凄そうに見えない」。乃木坂工事中に。それを体現したかのような回がある。

それは、2022年10月16日OAの#382 「5期生富士登山」の冒頭。設楽の「3期生も(富士登山に)行きたいよな」との問いかけに。すぐに無言で頷いた山下。「今行けないよ、忙しいんだから」と諭されるも「いや、行きます!いつでもスケジュール空けるので」とマジの目をしながら喋った山下。山下のことだから本気で行っちゃいそうなのがリアルに怖い。

それ以外にも、ご褒美のためならと果敢に白塗りに挑戦したり、

ヒット祈願で空中ブランコに挑戦したりと、

様々な形でグループに爪痕を残し続けてきた山下。それら全てが全て全力で本気だったから、器用そうで凄そうに見えなかったのかもしれない。公式お兄ちゃんの話を聞くと、グループのこれからのためにどれだけ捧げてきたかを改めて思い知る機会になったと思う。

さいごに。

私のnoteでは、沢山のライブを現地参戦した記憶を織り交ぜながら書き続けてきたが、卒コンを書くのは実は今回が初めてだったりする。それだけ、私の心にグサッと刺さりまくったいいライブだった証とも言えるだろう。

その上で、今回の記事のタイトルはすぐに浮かんできた。「わがまま」の意味を調べるとこう出てくる。

相手・まわりの者の意に反して、無理な事でも自分がしたいままにすること。
したいほうだい。

名前をテーマにしたブロックしかり、軍団ブロックしかり、その勢いで自分の軍団作っちゃうし、VTRしかり、セットリストしかり、山下のこだわりがたくさん詰まったライブだった。私にはそのこだわりが、山下の最後の悪あがきというか、わがままのようにも見えた。もちろんいい意味で。

そして、「超絶怒涛のスーパーアイドル」。乃木坂工事中に初登場時とラスト出演時に披露したサンシャイン池崎のネタ。

もうこれを使うしかないと思った私は、山下のゲーフラにも採用した。

それでも、グループの内外問わず、まさに超絶怒涛の活躍を見せた山下。一時期は心が折れかけたけれども、仲間に、スタッフに、そしてファンに支えられて8年間全力でアイドルを続けることができたと思う。そんな山下らしさが詰まりに詰まったライブだったと思う。

そんなやまコンも、ついにBlu-rayが発売された。誰もが認める完全無欠のアイドルの最後の姿を、いま再び。


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