母性低め女が、妊娠出産エッセイを読んだら【#推薦図書】
子を産むことに対して、考え方は人それぞれだ。
女として産まれたからには、子どもが欲しいと願う人。
残念ながら恵まれなかった人。
私の周囲でも、いざ授かっても、自分の子どもを愛せなくて苦しんでいる人を知っているし、妊婦さんを"妊婦様"と呼んで、攻撃的に忌み嫌う人も知っている。
私は自分の中に母性をカケラも見いだせず、子どもを持たない人生を送ろうと決めた女、である。
かつて一瞬だけ「子どもをもった方がいいのか?」と考えたことがあった。
妊娠出産を経験していないと、婦人科系の病に罹患するリスクが高くなると知った時である。
だが「自分の健康のために子どもを産むなんて」と、エゴイスティックな自身の考えにドン引きし、子を持つことなく現在に至る。
そんな子ナシ40オーバー、シングルの私が、ある書籍を丸々1冊、一気に読み終えた勢いで、このnoteを書いている。
なんかスゴい本、読んじゃったなー。
妊娠出産エッセイ、小野美由紀・著『わっしょい!妊婦』の話である。
これまで、出産を経験した人たちから話を聞いて、出産にはドラマというか武勇伝があるなと思っていた。
分娩室に入って15分で産まれたという超安産型もいれば、24時間苦しんだという人もいた。
とにかくひとりとして、同じ経験を語る人がいなかったのである。
この本を読むと、出産だけじゃなく妊娠した段階から、こんなタイヘンなの!?子どもを産んだあの子も、この先輩も、こんな長い困難を乗り越えていたのか!
と改めて世の中のお母さんに敬意を表したくなる1冊だった。
妊娠出産を経験してない私は、知らなかったこといっぱい。
でも、女として共感できる部分もいっぱい。
ホントこの本、いろんな人の元に届いてほしい!
自分とは無縁とも言える妊娠出産エッセイを手に取ったのは他でもない。
著者の小野さんが主催していた『"書く私"を育てるクリエイティブ・ライティングスクール』という文章のオンラインサロンに、私が所属していたことがあるからだ。
(サロンは残念ながら現在休会中である)
何を隠そう、私がnoteをはじめたのも、小野さんからの「noteで発表してみたらどうでしょう」という一言がキッカケだったりする。
お世話になった講師の新作エッセイ。
これを読まない手はない!と購入した。
あ。
今「なーんだ、身びいきの本紹介か」って、
そう思ったでしょ?ただの宣伝かよって。
でもね、
そんな著者の独白から始めるエッセイは、冒頭から面白いにおいをプンプンさせていた。
著者35歳、夫さん45歳。
妊娠出産にまつわる、あれやこれやを赤裸々に、本当に「NGないのかよ」ってツッコミたくなるほどセキララに綴ったのが本書である。
サロン生の私から見て、妊婦の頃の小野さんは、妊娠前と変わらず、そりゃもう勢力的にお仕事をこなしておられた。
サロン生が提出する毎月の課題を丁寧に添削して下さっていたし、出張に出かけてたのも知っている。
正直、作家さんの働き方改革って、どーなってんの?と心配になるくらい働いておられたのだ。
「ちょっと夏バテ気味で」くらいは、おっしゃっていただろうか。
でもそれがまさか、
という、事態に陥っていたなんて思いもしなかった。
これまで同僚たちが、
「ちょっとつわりがひどくて」
と言うのを、
「そうなんだー、タイヘンだね。ムリしないでね」
とか、物わかりのいいフリして相づちをうっている場合じゃなかったのだ、いやマジで。
「ホント、それ」と思った。
なんとも知らないことが多過ぎる。
この書籍は、少子化の時代に「産めよ育てよ」と鼓舞するエッセイでは、決してない。
また、高齢出産を果たした著者や夫さんの、幸せ自慢のために書かれた本でもない。
軽妙な語り口のエッセイではあるけれど、新しい命を産み出すことに真摯に向き合ってきた夫婦の記録と考察だ。
サロン生でなければ、きっとこの書籍を手に取ることはなかっただろう。
これまで「女は子どもを産んで一人前」だとか「母親の無償の愛」だとか、世間からこうあるべきという"呪い"を押し付けられてモヤっていた私が、ガツンとのめり込んだ読書となった。
そうだ、私たちは呪いを解いていい!
もうホントに夏の読書感想文の推薦図書に指定したいくらいだ。
ただこの本、街の大型書店に購入しにいった時、新刊コーナーには置いてなかった。
バリバリの新刊であるにも関わらず。
あったのは、妊娠出産の棚。
これじゃ、バリバリの妊婦さんしか手に取らないじゃん!
本当は「は?妊娠出産?カンケーないし」と思っている人にこそ、ぜひ手に取っていただきたい書籍なんだけどなぁ。