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私は"カボチャ"だと学んだ日【#私のテーマカラー】

「お似合いの色ですよね。お好きなんですか?」

突然、職場の後輩女性に声をかけられた。
その時、深いグリーンのセーターを着ていた私。

まさか、この私が色でほめてもらえる日がくるとはっ。少し嬉しくなった私は、「実はね…」と昔のことを彼女に打ち明けた。

倉田エリさんの企画  #私のテーマカラー

ずっと書きたいと思っていて、企画最終日、やっと書けました。
皆さんの投稿も読みに伺うのが楽しみな企画です!

かつて、グレーとかベージュとか落ち着いた色の服ばかり選んで着ていた。
父親からは、
「いつもいつも、どぶねずみ色の服を着て」
となじられ、同僚たちには、
「ブラインドと同化していて、いるんだかいないんだかわからない」
と、愛情たっぷりに揶揄される。

…ひどくね?とか、もっと言い方あるよね?とか思うものの、事実なので反論できない。
私は洋服選びが、壊滅的に苦手だったのである。

しまいには、「もうっ、グレーもベージュも禁止!」と同僚たちから禁止令まで出た。
えええ?いったいどうすれば?

自分なりに試行錯誤を重ねた。
地味な存在だったら、淡いパステルカラーなら似合うかな、とか。
たまにはハッキリした赤で冒険してみよう、とか。

…似合わなかった、それはもう残念なほどに。
誰も何も言わなかったけれど、鏡の向こうにいる自分が「似合わね~」と言っていた。

多分、若い頃ならどうにかなった。
多少似合わない色も、若さでカバーできる。
でも年をとると、似合わない色は顔がくすむ。
どうにもならないことを痛感した。

そんなある日、パーソナルカラー診断をしてくれる方を見つけた。自分に合う色を教えてもらえるのだそう。
しかも30分1,000円。

いいじゃん、いいじゃん。試してみよう!
面白半分で早速予約を入れて、診断してもらいに行った。
ほんわかした感じの若い女性が、テキパキと診断してくれる。
目の色で、2つのベースカラー4つのシーズンの内、自分がどれに当てはまるか分けるのだという。
その後は、いろんな色の布を顔回りに当てて、どの色が映りがいいか鏡で見ながら、写真も撮ってもらう。30分なので、さくっと。

…あぁ。
自分の目で見て、深く納得した。

地味で存在が薄いからって、淡い色が似合うワケじゃないのね。
例えば赤は赤でも、くすんだ赤なら私にも着こなせるんだ。

診断の結果、私にはこっくりとした深いグリーンやイエローが似合うと判明した。
「…こっくり?」
と聞いた私に、診断してくれた彼女が頷いた。
「イメージは"カボチャ"です」

おおっ、わかりやすい!
それ以降は、カボチャをイメージして服を選ぶようになった。
今まで選んだことない色だったけれど、鏡の向こうの自分が血色いいし、しっくりくる。

まぁいつもカボチャでいるワケにはいかないので、その時写真に撮って「似合う」と言ってもらった他の色も試している。

もちろん、グレーやベージュも身につける。でも差し色で、グリーンのスカーフを合わせて工夫する。

おかげでもう、地味は地味なりに
「いるんだか、いないんだかわからない」
と、笑われることはなくなった。

写真を撮るとわかっている日には、自分の顔映りのいい服を着て行くようになったし、顔色がいいと自信があるように見える。それはマスクの日々になっても変わらない。

「実はね、昔、グレーやベージュを禁止されたんだ」
と後輩女性に打ち明けたら、彼女は目を丸くしていた。

彼女は昔の私を知らない。
いつの間にか、変化している私がいた。

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