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20代の頃、朝が弱い「夜型」なのは仕方ないこと?

最近20代の友人から朝起きるのが凄く苦手だと言う相談をされました。本人なりに努力をしているそうなのですが、どうにも苦労しているとのこと。

僕自身も思いつく限りのアドバイスをしましたが、改めて調べてみると面白いことが分かりましたので、ちょっと書きます。


■眠りに影響を及ぼす要因

朝が弱いと聞くとまずは生活習慣が気になりますよね。睡眠の質と量に一番関係があるのが生活習慣と環境だからです。

例えばですが、

  • 普段の就寝時間

  • 夜食の有無(就寝前にいに負担のかかるものを食べていないか)

  • 飲酒の有無とアルコールの摂取量

  • 寝る前の行動(スマホやテレビ・PCを見ていないか)

  • 入浴の有無

  • 寝具の具合

  • 周囲の騒音の有無

  • 消灯をしているか

  • 生活リズム(一定かどうか)

などです。

そもそも寝不足だと当然ながら、寝起きは悪くなります。就寝直前の寝酒は睡眠の質を下げますし、胃の中に食べ物があると消化にエネルギーを割かれ、やはり睡眠の質は下がります。

睡眠の質を上げるためには、睡眠の前にリラックスをして副交感神経が優位の状態をつくる必要があります。

また、暑いときや寒いときはそれによって目を覚ますことがありますし、電気をつけっぱなしで寝てしまった時も夜中に目を覚まします。周りがうるさかったり、寝る態勢が悪かったりしても目を覚まします。

後輩に対しても、まずは上記のような生活習慣の内容を聞いて、それに沿ったアドバイスをしました。

■年齢とクロノタイプの関係

世の中にはご存じの通り、朝に強い人(朝型の人)と夜に強い人(夜型の人)がいます。

生活習慣により朝型・夜型かは左右されますが、実は、年齢によっても朝型・夜型(クロノタイプというそうです)が変化するそうです。

Till Roennebergらが行った大規模調査(※1)では、25000人の被験者を対象に「仕事や学校のある日」とそうではない「自由な日」での睡眠習慣について質問をしました。

その結果分かったのが、クロノタイプは、「子供の頃は朝型だったのが、10代の思春期に入ると夜型化していき、20歳頃をピークにまた朝型になっていく」ということです。

Russell G. Foster et al."Human Responses to the Geophysical Daily, Annual and Lunar Cycles".Current Biol.2008より引用(※2)

追跡調査ではないので、「過去70年のライフスタイルの変化によるものなのでは?」という疑問も浮かびますが、文化の異なる別の集団でも同様の分布を示すそうで、どうやら人間にそもそも備わった性質のようだと結論づけています。

■クロノタイプに影響を与える遺伝子

前述したTill Roennebergらの論文では、クロノタイプが変化する原因についてはホルモンなど内分泌な要因の関与について示唆しているのみで、遺伝子的な機序については詳しくは述べていません。

しかし、2019年に『Nature Communications』に発表された英国のSamuel E. Jonesらの研究によると(※3)、これまで知られていた時計遺伝24個を大きく上回る351個の遺伝子がクロノタイプに関連した時計遺伝子であることが分かったそうです。


Samuel E. Jones et al."Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms".nature communications.2019より引用



同研究のメンバーを取材したWiredの記事によると、この研究を率いた英国エクセター大学医学部のマイケル・ウィードン博士は次のように話しています。

「もっている時計遺伝子の数によって、朝型の度合いが決まります。研究からわかったことは、351個ある時計遺伝子のうち最も多くもっている上位5パーセントの人は、最も少ない下位5パーセントの人と比べて、平均で25分早く眠りにつくということです」

https://wired.jp/2019/04/06/morning-person-genetics-how-to/

また、論文の執筆者でエクセター大学医学部に所属するサミュエル・ジョーンズ氏によると、これらのうち特にサーカディアンリズム(概日リズム)に関係している遺伝子は、「脳と網膜」で活性化されている傾向がみられたそうです。

遺伝子の発現が脳と網膜で活性化されているということは、「朝に日光を浴びることで概日リズムのリセットがされる」という、これまで知られてきた事実と符合しているように思われます。

■最後に

サミュエルらの論文では、クロノタイプに対する遺伝的要因の影響たが、環境要因(生活習慣、社会的要因など)も重要な役割を果たすことが強調されています。
つまり、クロノタイプは遺伝と環境の相互作用によって決定されると考えられるのです。

なので、10代後半~20代の頃に、夜型の傾向が強くなるのは仕方ないですが、生活習慣を見直すことで少しでも克服するように努力をするのが大事ということですね!

もしくは根本解決として、自分のクロノタイプに合わせた生活ができるように仕事や働き方、生活環境を変える努力をしてみるのもいいですね。

後輩にも改めて「がんばれ!!」と伝えます(笑)
では!

■参考

1.Till Roenneberg et al. "A marker for the end of adolescence".Current Biol.2004
2.Russell G. Foster et al."Human Responses to the Geophysical Daily, Annual and Lunar Cycles".Current Biol.2008
3.Samuel E. Jones et al."Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms".nature communications.2019
4.https://wired.jp/2019/04/06/morning-person-genetics-how-to/



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