その8 ◆ステップ2 地球への旅 2.Body maintenance(後編)


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 さあ、ここからは、ピカリィの独壇場です。
 あるいはクリオネのように、あるいはパワー全開のヒトデのように、弾けつつ踊りつつ、宇宙船を飛び回ります。

『 E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)
 E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)
 E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)


…………せめてそれだけはきっちりキープして、

人間は、食べて寝てカラダを癒して、やっと生きてイケル
あなたが無理をかさねぼろぼろになって死んでも、
世界は苦も無く回っテイク
アナタが我慢をかさねてもそこまでの意味はなく、
世界はクールに動いていく
骨身削る無理も我慢も寿命をちぢませもったいない、
千々に砕けるなんてモッテノホカ、ちゃんと自分まもって
もっともだいじな自分のカラダ、そっと丁寧にいたわって
ちゃんとカラダを最後まで使い切るため、生ききって
カラダの小さな悲鳴を聞き逃さないで、しがらみ振り切って

理不尽なな現実に反抗も逃げることもせず
悲惨に自滅とか、誰も救われないし報われないし浮かばれないし
ほんとのトコロ。いたむココロ、どこにもないその落としどころ

だから、判断力もにぶるほどカラダが疲れ切っていたら
しっかりと食べて、ゆっくりと寝て、身体のリズムととのえて
ほかのことやめて、それだけに集中
ほかのこと放り出し、終着しよう、それだけに執着

すべてはカラダから始まる、だからなるべく早く気づいてその不調に
すべてはカラダからつくられる、だからなるべく深く悟ってその貴重さに

E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)
E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)
E・S・ P。(Eat,Sleep,Please ease 食べろ、寝ろ、安楽にして)


せめてこれだけは、基本だから、カラダ大事だから、
ES P。ES P。ES P。プリーズ!!


ちかちかとまたたきながらリズミカルに歌い終えると、ピカリィは、はじらうようにムズムズしながらぷしゅー……としぼんで、もとのクリオネのようなカタチに戻ります。

 おぉー、とピカリィの熱演にに応えるように、みんなは自然とパチパチと拍手をしていました。
「とにかく寝る、食べる、楽にする、そうよねえ」
 ママはうなずきます。
「テレビで見ると、体調イマイチの配達員さん、みんなのために無理を続けて睡眠不足がたたって、居眠りしちゃって・・・・・・とかあるもの。いい人ほど無理をしちゃうけど、それが最悪な結果の引き金をひくこともあるわよね」
「そうだなあ。仕事でも、無理をするのが当然とか、そういう根性論みたいなところもあるよなぁ。それでカラダこわしたり。自分だけの問題じゃないから、大変だ」
パパがため息をつくと、

『たくさん無理して倒れて、長く寝込むよりも、すこしずつちゃんと休養をとってほしいヨ。でも、いろんな事情でそれがむずかしいこともあるって、ピカリィだって知ってル。むしろ、がんばっている人ほど、自由に休みをとるのが難しい。悲しいけどネ』

 ピカリィはしんみりと言います。

『だから・・・、いよいよカラダがピンチだったら、E・S・ PのPを、PleasureじゃなくてPOOP(ウンチする)に変えてほしイ。ちゃんと食べてよく寝ていいウンチを出す、これ、大事。胃腸はとっても繊細だから、すぐに下痢したりベンピしたりして、SOSを出すよネ。カラダの悲鳴。それに気がついてほしいヨ。それに、ひどい病気やケガをしたトキには、自分でトイレに行けて健康なウンチができるありがたさ、ホント─────に、しみじみと感じるハズだヨ!!!  健康な時には当然と思っているけど、E・S・ P、じつはとっても幸せなことなんダ!』

「そうねえ。排泄にトラブルがあると、とってもつらい。あれはカラダの悲鳴だったのね」
 ママが言うと、みんなうなずきました。
 誰にだって、覚えがあること。
 みんなはしばらく、じっと、ちゃんと食べて寝られてトイレができるありがたみを噛みしめます。
 笑い事ではなくて、ほんとうのこと。
 ずっと血便が出ていても、カラダが悲鳴をあげていても気づかず、悪性の貧血になって倒れて、やっと気づくということもあるのです。

 食事、睡眠、排せつのサイクル。
 これのバランスを毎日チェックできる一番あなたに親切な監督官は、あなた自身だけなのです。

 こんなしんじみとした気づきの時に、急にママがあたりをきょろきょろ見まわしました。
「あれ。そういえば、この宇宙船にはトイレっぽい個室がないよね? もし、もよおしちゃったらどうしよう?」
「ほんとだ。ピカリィは光だからトイレとかしなさそうだからいいけど、ぼくたちは人間だから、そのうち・・・」
ケンタの声も不安そうです。

『大丈夫だヨ』

 ピカリィはチカチカッとまたたいて、ウインクしました。

『ここの時間と空間の流れと密度は地球と違うかラ。マザーヴォイスに守られている限り、みんなはおナカすかない。のどもかわかない。トイレにも行きたくならナイ。そのかわり、ひたすらココロが吸収して、消化して、考えを排泄するヨ。ここはそう、そのための空間、これはそのための旅』

「そういえば、やたらあせってるのに、不思議とのどがかわかないな」
パパがうなずきます。
「やっぱり、なにもかも不思議なのよね、夢のようで夢じゃなくて、でもやっぱりふつうじゃないし」
「ちょっと残念だな。ぼく、宇宙食たべてみたかった」
「そうね、ママもちょっとそう思う」
みんなはトイレ問題が解決したからか、ほっとした顔をしています。

…………その間も、宇宙船はどんどん旅を続けていきますよ。

その9  太陽への旅 INPUT(インプット)【魂のアンチエイジング・ココロの救急箱】


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