★その7  地球への旅 2.Body maintenance(前編)


◆ステップ2 地球へ


 そして…………

 宇宙船はゆっくりと方向を変えて、母なる地球を映し出しました。
 ああ、なんと美しい星なのでしょう!

 青く美しい地球は、美しい死と静寂がはちきれんばかりにみなぎった宇宙の中で、生命力にあふれ、涙が出そうなほどの存在感です。
 見ているだけで、心の中に感動がみなぎってきます。
「まさか、こんな景色がみられるなんてね」
 ママが声を詰まらせて、パパの側に寄りそいます。
「もう、これだけで、魂が、わかがえりそう」
 じーんとしながらスクリーンの中の地球を見ていると、ふっと照明が暗くなり、マザーヴォイスが響いてきました。

《次も、基本のステップです。心のケアの次は、カラダ。
頭のてっぺんから足の先まで、カラダを意識しながら、聞いてください》
 宇宙船の中の照明が、ふーっと暗くなります。
 みんなは空中でもぞもぞしながら、落ち着いたマザーヴォイスに耳をかたむけました。


☆ステップ2.Body maintenance(カラダのメンテナンス)


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《カラダは、この世を旅する、替えのきかない乗り物です。
 しかも借りものであり、しっかり、人生の最後には
 あえて名前をつけるならば「宇宙創造主」に返却しなければなりません。

 宇宙からの借りものであるこのカラダを
 雑に扱うか、たいせつにケアするかで、旅の難易度・しんどさは、まるで違います。
 まだまだ走れるはずなのにポンコツになったり、
 整備をおこたって事故にあい、旅の途中でリタイアしたり。
 もともとのカラダの性能や、しかたのない事故などで
 人生の旅の距離や質が違ってくるのは避けられません。
 それはまた別のチャレンジでのりこえていかなければならないことです。

 でも、カラダを手荒に扱って自分で旅の可能性を縮めるのは、もったいなさすぎです。

 自分だからといって、身体を粗雑にあつかうのは、やめてください。
 大切な父母をいたわるように、あなたのカラダに優しくしてください。
 ずっとあなたの祖先たちがカラダを大切にしてきたおかげで、
 今のあなたは存在できているのです。

 かけがえのない自分の子供をしつけるように、
 だらだらと甘やかさず、本当にいいことをカラダにさせてください。
 甘やかすのと大切にするのとは違いますし、厳しくしすぎるのも、また違います。

 時々、身体のすみずみを念入りにケアしてあげることは
 自分という神殿に捧げものをするようなもの。
 たくさんの見返りが期待できるのです。

 あなたのココロの感じかたは、カラダの状態で左右されます。
 人生の味わいのベースは、カラダでつくられているのです。
 カラダのメンテを怠ると、たいせつにされていないと感じ、魂も老化してしまうのです。
 転ばぬ先のケアが、アンチエイジングのカギです。

 おまけに、自分のカラダをきちんとケアできるようになれば、
 大切な人たちの体調にも、ちゃんと気づけるようになります。
 それは、すばらしい愛と共感、幸せの世界への第一歩です……』

 マザーヴォイスがゆっくりと消えていき、じょじょに宇宙船が明るくなってきます。

 うううむ、とパパがうなりました。
「これは耳が痛いなあ。パパはさいきん、ずーっとお疲れなままだぁ。満員電車にゆられて通勤、頭をつかった仕事でヘトヘト、それでもなんでか寝付けなくて。ついつい酒を飲みながら、パソコンいじり。あげく、睡眠不足の運動不足に暴飲暴食。自分の身体と思って、こんな粗末ににあつかっているけれど、そうだなあ、宇宙からの借りものなんて考えたこともなかったよ」
 ため息をつくパパに、ピカリィがふわりと近づきました。
 クリオネのような丸みのある光りのカラダのあちこちがぐんぐんとふくらみ、手足の太い、原始的な人間のカラダのようなスタイルに変化しました。
 そして、全身から黄金の光の波を放ち、その光は何倍にもなって、パパの身体をつつみこみます。

『家族のためにがんばっているパパはスゴ・スゴォイ。ステキだけど、自分のカラダをいたわらないなんて、本末転倒だヨ。だって、パパのかわりはいないヨ? 誰だって、自分の代わりはいナイ。未来を大事にするなら、人生の旅の乗り物である身体をだいじにすることが、イチバン大切!!

 わかっちゃいるけど、とパパは首を振ります。
「とにかくやることはいっぱいだし、疲れているし、時間はないし。いったいどうしたらいいんだ? オレ、そんなに器用じゃないよ」
 落ち込むパパに、ピカリィはささやきます。

『パパ。もしもカラダがつらいのに、その原因をとりのぞけない、なにをケアしたらいいかもわからないピンチのトキには…………リズムに乗ってラップ《ココロの救急箱》モードの登場だヨ!』

「ん、また《ココロの救急箱》か?」
『そう。指を切ったら、とりあえずのバンドエイド、みたいにネ』

 窓の地球がいちだんと美しく輝きだします。
 またも、宇宙船の中の照明が切り替わりました。
 ちょっと早めのテンポの音楽が流れ、ショータイムのはじまりです。
 ピカリィが生き生きと踊り始めました。

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その8  地球への旅 2.Body maintenance【ココロの救急箱】

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