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永原トミヒロ展 2011

青白い街並みを描く永原トミヒロの新作展。

人影が一切見られない夢幻的な光景は以前と変わらないが、今回発表された平面作品には以前にも増して「郊外」の雰囲気が強く立ち込めていた。

田畑の向こうに立ち並ぶ建売住宅。現在の日本のどこでも見ることができる凡庸な風景だ。けれども、それらがひとたび青白い色合いを幾重にも塗り重ねたマチエールによって見せられると、たちまち現実的でありながら非現実的な世界に見えてくる。陽光なのか月光なのか、地面に降り注ぐ光の影が必ずしも一定の方向を向いているわけではないところが、そうした空想性をよりいっそう際立たせているのかもしれない。

窓のない家屋が立ち並ぶ茫漠とした風景は、おのずと寂寥感をかきたて、死の世界を連想させるが、この物寂しくも空ろな感覚は、中央と地方を問わず、現在の都市生活の核心にあることを思えば、永原の絵画はたんなる空想画というより、むしろ現実の本質を増幅させたうえで見せるという点で、リアリズム絵画というべきだろう。

初出:「artscape」2011年04月01日号

永原トミヒロ
会期:2011年2月21日~3月5日
コバヤシ画廊企画室[東京都]

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