Netflix『Vagabond/バガボンド (배가본드)』全16話
既にシーズン2が撮影中と噂されている「Vagabond」。その魅力は、超本気で取り組んだ海外ロケです。
「배가본드/VAGABOND」は、韓国SBSで2019年9月20日~2019年11月23日の金・土に放送されました。韓国内であれば、全16話が無料で視聴できます。当然、日本語字幕はありませんけど。
一人で甥フンを育ててきたスタントマン、チャ・ダルゴン。しかし、甥フンを乗せたモロッコ行き民航旅客機B357が墜落。生存者は一人もいないはずだったが、甥が旅客機の中で撮った動画に映っている男と偶然遭遇する。国家情報院の工作員コ・ヘリとともに墜落事故の裏にある巨大な不正を暴いていく。
グローバル市場を目指し、テレビドラマとしては破格の250億ウォン(約26億 円)の莫大な製作費をかけて制作されました。
2023年にTBSが製作した「Vivant」が1話1億円かけたというので話題になっていましたが、全10話なので約10億です。日本のドラマは頑張っても2億円くらいで作ってるので、それに比べればかなりの金額ですが、覚悟がたりなかったですね。金額というより、中身が。その差が明確に表れているのが、海外ロケです。
「Vagabond」は、モロッコとポルトガルで海外ロケを行っています。広大な砂漠や美しい異国の都市の姿が映し出され、その中をジェームス・ボンド張りに、屋上を走る・跳ぶ・登るのパルクール!よく撮影許可取ったなと感動ものです。巨額の製作費のかなりの部分が海外ロケの費用に使われたのではないかと想像します。モロッコの撮影は2か月に及んでいます。
海外でドラマを撮るには、まず現地のコーディネイターと契約します。撮影場所の選定や政府との調整、撮影場所との取り決めや宗教的な配慮も必要だったりします。何といっても政府が公認しているコーディネーターでないと許可が出なかったりしますし、コーディネーターのランクもピンキリです。ハリウッド映画などで使うコーディネーターの契約料はとても高額になります。
なので、費用が限られている場合、安価な一般のコーディネーターを雇い、事前調査(リサーチ)を短めにしてしまいます。当然、事前に提出しなければならない撮影計画書に詳細が書かれておらず、交渉に時間がとられないよう撮影許可が難しそうなシーンは避け、少ない機材やスタッフで短期間で撮ろうとします。機材やスタッフも増えると準備が大変になるので、大半を現地調達することになります。その結果、国内ドラマの海外ロケのシーンが「観光地紹介」みたいな薄っぺらい映像になってしまいます。
海外では特に撮影も大変で、緊張の連続となります。「Vagabond」は、国内、国外を通して製作スタッフと出演者が一体となり、11か月という長期間力を合わせて作り上げました。長時間に及ぶ昼間の撮影、そして時々あった夜の飲み会のおかげで、ドラマが終わった後も友情が続くんじゃないかという思わせる"極上のチームワーク"が出来上がり、視聴者をドラマの世界に引き込んでいきます。どこにもけち臭さは感じませんし、全編を通して映像の一体感があります。
恐らく、「Vivant」は「Vagabond」を意識して作られたともいますが、2つの作品の映像を見比べ、日本のドラマ制作のレベルを感じてください。
監督には、次々とヒット作を生み出してきたユ・インシク監督。そしてユ・インシク監督といくつもの作品を書いてきたチャン・ヨンチョル、チョン・ギョンスン。優れた映像美を見せるイ・ギルボク撮影監督が加わり、最高のスケールと完成度の高い作品となっています。