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『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』 硬梨菜, 不二涼介

 フルダイブ型VRゲームが主流となった現在、僅かな大作の下に、向上した映像技術に対しシステム面が追いついていない混沌としたゲームが数多くリリースされている。
 いわゆる「クソゲー」と呼ばれるモノ達である。

 この物語の世界観では、フルダイブ型VRゲームが多くの人に楽しまれています。しかし、フルダイブ型VRゲームを「クソゲー」にしないためには大量の資金と人員が必要となります。従って、成功するゲームはごく僅かしかなく、多くは「クソゲー」と呼ばれることになってしまいます。

 一度「クソゲー」というレッテルが張られてしまうと、ゲーマーたちからは忌み嫌われ、僅かにプレイする「クソゲーハンター」は「ヘンタイ」という称号が与えられます。主人公の陽務楽郎ひづとめらくろうは、「クソゲー」の中にも愛すべき何かを求め、数限りない「バグ」を潜り抜けてクリアすることに喜びを感じていました。それは、さまよう魂の浄化であり、地縛霊と化した「クソゲー」を成仏させる神聖なもののようです。

 陽務楽郎ひづとめらくろう(キャラクター名はサンラク)は、「クソゲー」の頂点を極めた「フェアリア・クロニクル・オンライン」(通称フェアクソ)を攻略し終え、空虚さに包まれたそんなとき、「クソゲー」の対極に位置する「神ゲー」と評判の高い「シャングリラ・フロンティア」を試しにプレイします。

 これまで「クソゲー」の理不尽なゲームシステムで試され、鍛えられてきたサンラクの選択とスキルが、神ゲーの中で活躍する様が痛快な物語です。

 原作は硬梨菜かたりなによるWeb小説で、小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載されています。2017年5月19日から始まり、不定期に投稿されており、2024年8月27日で926エピソードになります。書籍化はされておらず、「週刊少年マガジン」で不二涼介ふじりょうすけによるコミカラズされ、2024年9月で19巻が発行されています。

 アニメは、2023年10月1日から25話が放送されており、第2期が2024年10月13日から開始することになっています。

  「シャングリラ・フロンティア」内では、ゲーム・システムの設定がしっかりしており、物語がとても面白くなっています。背景となる世界や敵キャラも細かく書き込まれており、出現するイベントはお互いに関連し、更に大きなイベントへつながっていきます。イベント名やモンスター名も凝っていて、興味深いものがあります。実世界の人間関係もしっかり描かれているので、ゲーム・クリアだけでなく、その背後に見える開発会社とのかかわりも楽しみです。

 問題は、話がこれからどんどん膨らみそうな気がするし、後半になるにつれてストーリー展開が遅くなる様なことになると、恐らく50巻は超えてしまいそうなところです。結末を迎えるのに、あと10年かかるとすると、作者はもちろんですが、読者もしんどいですね。

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