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#私の新型コロナ体験記 コロナにかかるとどうなる?【対談】 佐藤章×福山哲郎 5月11日

今回は、ジャーナリストで初めて新型コロナウイルスに感染されたということで、その体験を記された佐藤章さんにお話を伺いました。

※実際の対談の様子はこちらからご覧いただけます。

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新型コロナウイルス、最初はどんな症状?

福山:前日に体調が悪いなと思っていたら38度ぐらいの発熱になった、というのがスタートだったのでしょうか?

佐藤:記事を書くために徹夜をして、体調の異変を感じました。発熱したかな、というぐらい。体温を測ってみると、38度ありました。これは非常にまずいと思いました。コロナウイルスの取材中でしたから、これはもしかしたら、という感じでした。家族に事情を伝え、隔離しなければと思い書斎で就寝しました。

福山:次の段階は、4日間様子を見るか、帰国者接触者相談センターに電話をするかという形になるわけですよね?

佐藤:そうです。翌日の体温は37.5度でした。目安の37.5度だったんですが、私は取材ですぐにPCR検査が受けられないことを知っていたので、取材でお話を伺ったことのある上昌広先生に相談しました。それで、抗体検査をしている新宿のナビタスクリニックを紹介してもらい、検査を受けたわけです。発熱から3日目です。

福山:PCR検査より前に抗体検査をやられたということですか?

佐藤:はい。この検査は、腕から採血した血液を使い、15分ほどで結果が出ました。陰性でした。しかし、この検査はIgMという抗体検査なんです。IgMとは、イムノグロブリン(Immunoglobulin)といって免疫グロブリンの一種を検査するものですが、これは5種類ある免疫のうちの一番最初に出てくるもので、すぐに消えてしまいます。なので、国立感染症研究所のリポートによると、IgMの的中率は0%なんです。

福山:0なんですか?

佐藤:そうです。私が検査を受けたのは4月1日ですが、ちょうどその日に先のリポートが出たんですよ。ということで、その時はまだIgMの効果がわかりませんでした。

福山:その時まだ熱は続いていたのですか?

佐藤:いや、それがちょうどその日に平熱に戻ったんですよ。他の方の体験談なんかを読んでも、コロナの熱は、上がったり下がったりするみたいなんですよね。私の場合はちょうど3日目に下がりました。咳の症状もほとんどありませんでした。

福山:それだと風邪だと思ってしまいますよね?

佐藤:思いましたね。それに陰性という結果をもらったので、安心して家に帰って缶ビールかなんか飲んで、家族と過ごしてしましました。

相談センターになかなかつながらない?

佐藤:ところが、翌日になりまた熱が上がってきました。38度ぐらいになったので、さらにその翌日にかかりつけ医に行きました。医者に訳を話したら、コロナを疑われましたが、とりあえずは解熱剤などをもらって帰り、それを飲みました。相談センターには何度か電話をしましたが、まず電話がつながらない。解熱剤が効かない時もあり、夜には38度ぐらいまで熱が上がりました。一度は38.7度までいき、きつかったです。それで、6~7日目だと思いますけど、味覚がなくなりました。

福山:やはり味覚障害出るんですね。その頃って味覚障害の話はすでに出ていましたっけ?

佐藤:出ていました。なので、「あ、これはもう間違いないな」と思いました。かかりつけのお医者さんも、「これはコロナですよ」という感じで、その医者も、抗体検査はなかなか当たらないということは知っていましたので。私もいろいろと読んだりしていて、あ、これは当たらないんだなというのは後になってわかり、検査が外れたなという感じでした。

PCR検査を受けるまで何日かかったのか

福山:それで奥様が電話をかけ続けて、ようやく相談センターにつながるんですよね?

佐藤:そうですね。珍しく彼女が言い争う感じで、「じゃあどうしたら検査を受けられるんですか?」と言っている声が聞こえてきたんです。私が電話を替り、話をしても、保健所の方は、「いくら言っても無駄ですよ、私たちは輪番で電話に出ているだけですから」と言うのです。「検査を受けられるのは帰国者の方かその人と接触した人に限りますので、検査を受けることはできません」という一点張りでした。

福山:当時でもまだ帰国者・接触者と、そんなことを言っていたのですか?

佐藤:そうです。職員の方とやりとりしても意味がなかったので、その後かかりつけのお医者さんに電話をして、そのお医者さんが保健所に一生懸命伝えてくれて、ようやく翌日に検査を受けることができました。後で聞くとかなり強く言ってくれたみたいです。結局、PCR検査を受けられたのは発熱してから10日目のことでした。

福山:長いですね。それも熱と付き合いながらだから結構きついと思います。ただ、佐藤さんの場合には容体が急変せずにPCR検査を受けられたわけですが、最近は家庭待機の時に容体が急変するということもずいぶんと増えてきていますよね?

佐藤:そうですね。4日間37.5度以上という検査の目安はひっこめましたが、厚労大臣が「私どもにとっては誤解だ」と言っていて、あれがなければ結果が違った人たちもたくさんいただろうという気がします。

PCR検査は、どんな検査なのか

福山:検査に行かれた病院はどのような様子だったんでしょうか?

佐藤:検査を受けるときに使った入り口は、脇にある裏口のような小さな扉でした。入口から3mぐらい離れたところにぽつぽつと椅子が10脚ほど置いてありました。椅子に座って1時間ほど待ちました。それで、呼ばれて仮の診療室のようなところに入り、完全防護のお医者さんが2人出てきました。胸のレントゲン検査、尿検査、問診をして、PCR検査となりました。

福山:肺炎を確認しなくてはいけないので胸の検査もするんですね?

佐藤:そうです。PCR検査は、左右の鼻の孔に綿棒を入れて拭うというようなことをします。それから、口の中、喉の奥を拭いました。午前中の検査後にいったん自宅に帰って、午後に再び病院に呼ばれ、そこで結果を聞かされました。レントゲン写真を見ながら、軽い肺炎にかかっていると言われました。自覚症状はなかったのですが、写真を見るとうっすらと靄がかかっているような感じでしたね。この日は木曜日でしたが、PCR検査の結果が出るのは週明けになると伝えられました。

福山:木曜日の午前中に検査を受けて、それで週明けですか?

佐藤:そうなんです。それで、週明けに電話がかかってきて、結果を聞いたところ、陰性だということだったんです。またもや陰性なんですよ。お医者さんは、「PCR検査は絶対ではない」と何度も強調していました。肺炎については、「他のウイルスの可能性もあります」ということでした。仕方ないなと思いましたが、何とも言えない微妙な気持ちでした。ただ、検査を受けられない人もいっぱいいるわけなので、その人たちも同じ気持ちだと思うんですよ。

福山:相談センターへ電話された方は、2月から4月末までで約100万人いらっしゃいますが、検査を受けられた人は79,000人ぐらいです。受けられたのは100人に8人ぐらいなので、受けられなかった方の不安は相当大きいですよね。検査を受けても、陰性だとなれば普通に外を出歩きますよね?

佐藤:そうなんです。私は自覚がありますから一切外には出なかったですけれども、用事があれば出ざるを得ない人は結構いると思います。

抗体検査は、精確なのか

福山:どうして陽性だとわかったんですか?

佐藤:私はジャーナリストですから、私の身体も取材対象なんです。そこで、これは絶対に知らなければならないなと思い、もう一度、ナビタスクリニックに抗体検査を受けたいと電話をしました。2度目の抗体検査は、IgGというタイプです。最初に受けたIgMはすぐに消えてしまうのに対して、IgGは非常に長く残っていて、国立感染症研究所のレポートによると陽性の的中率は96%です。かかったことのある人の過去の履歴までわかります。これが23日目のことでした。

福山:では、PCR検査を病院で受けた後、約1週間から10日後ぐらい経って抗体検査を受けに行かれたわけですね。その時の体調はどうでしたか?

佐藤:体調はほとんど戻っていました。それで、抗体検査は、1度目と同じように血液を採って、15分後に診察室に呼ばれて、結果は陽性とのことでした。その時は、「おめでとうございます」と言われました。要するに、コロナを乗り越えましたということです。そこで抗体、免疫を持つということになりますから。

福山:抗体があったということは、本当は陽性だったということですよね?

佐藤:そういうことです。ただ、厚労省とか東京都の統計には入らない陽性者ですが。

福山:でも、これは、佐藤さんが抗体検査について、取材を通して特殊な知識を持っていたからで、普通の方はわからないですよね?

佐藤:そうですね。ただ、ナビタスクリニックでは一般の人も受け付けています。保険が適用されないので、1回5,500円の検査となりますが。

福山:陽性と判明して、その間ご家族は一緒だったわけですが、ご家族はどんな反応でしたか?

佐藤:実は妻も味覚がなくなりました。娘も37度ぐらいの熱が出ましたね。ただ、娘はすぐに熱が下がりました。妻は味覚障害が1~2日ぐらい起ったので、一緒にIgGの抗体検査を受けました。結果は、陰性でした。IgGも的中率は96%ですから、4%は外れるんですよね。娘の場合は、熱が一度出たきりだったので、陽性か陰性かわかりません。

福山:もし陽性だった場合は、まさに今議論になっている8割の無症状・軽症者の中の1人だったかもしれない、ということですよね。

佐藤:そういうことです。私ももちろん軽症ですから、その8割のうちの1人です。

これでホントに大丈夫なのか。あやふやな日本の検査体制

福山:重篤者を中心に病院を手配するという当初のクラスターの考え方は理解をしますが、どこかの時点で完全にフェーズが変わっているわけですよね?

佐藤:そうですね。COVID-19に対する取り組みを韓国政府がまとめたレポートを読んだのですが、やはり日本との彼我の差がすごい。韓国は、PCR検査を拡充する前に医療体制の再構築をやりました。全国69の病院をコロナ専用にして、病院にいた患者を他の病院に全員転院させました。それで、物凄くキャパシティが大きくなりました。PCR検査をやって患者がいっぱい出ても収容できる余裕を、検査拡充の前にまず作ったんです。日本は最初、医療崩壊を招くから検査は抑えというようなことが暗黙の了解とされていましたが、それは間違ったやり方で、その時韓国は着々と医療体制を再編していたんですね。日本もそれを横目で見て、見習わなくてはいけなかった。ところが、その時、日本の政権は、誰もが開催は不可能だろうなと思っているオリンピックにかかりきりになっていて、一切対策をやらなかったんです。それが一番、今の日本の苦しい立場につながっていると思います。

福山:各国は無症状・軽症者も含めて検査を行うことで、全体の感染状況を見立てられるような取り組みをやってきたんですよね?

佐藤:そうです。例えば検査数が多いアイスランドに比べて日本は本当に少ない。全体像はまったく見渡せないですね。感染者数の実態もわからないですから、一番貴重な指標である実行再生産数(rt)が、非常にあやふやな数字です。自粛解除の基準も科学的ではないものになるのではないかと思います。

福山無症状・軽症者の方が市中にたくさんいればいるほど第2波の可能性が高くなるわけです。

佐藤:まったくその通りです。ですから、今自粛を解いても、無症状・軽症者ははっきり言っていっぱいいるわけですよ。

福山:大切な話をひとつ聞き忘れていました。どこで感染したと思われますか?

佐藤:感染はだいたい発症の5日ほど前と言われています。ちょうど熱が出る5日前に会食をしたのですが、そこで手を洗わずにサンドイッチを食べてしまったんですね。手でつかんだ瞬間、「あ、そういえば今日手を洗っていないな」と気が付いたんですが、まあ1回ぐらいなら大丈夫だろうと思って食べてしまいました。原因はそれしかないと思います。ひとつ教訓なんですけれども、皆さん、油断しないでください。油断が必ず感染につながります。

福山:今日は、ありがとうございました。

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