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お前のバカで目が覚める! 第12回「ぴあ独占!○ティちゃんロングインタビュー」

【注記】
これは、ぴあが発行していた情報誌「weeklyぴあ」に2003年7月14日号〜12月22日号の半年間連載していたコラムの再録です。文中に出てくる情報や固有名詞はすべて連載当時のものです。現在のポリティカル・コレクトネスや倫理規範に照らし合わせて問題のある表現が数多くあり、私自身の考えも当時から変化している点が多々ありますが、本文は当時のまま掲載し、文末に2023年現在の寸評を追記しました。

ぴあ独占!○ティちゃんロングインタビュー

「……というわけでみんな、これからもピューロ○ンドに遊びに来てね☆」

 ……あ、ごめん。いったん止めて、録音止めて! なんか疲れちゃった、休憩入れよ。あ、だいじょぶだいじょぶジャーマネに取りに行かせるから。ねぇ吉岡ちゃん、吉岡! カルカン持ってきて。早く、急いで! まっしぐらで持ってきて!

 あれあれぇ、あなたたち、なんか面食らってる? 別にあたいのことね、あんまり○ティちゃんだと思って気ィ遣わなくていいですから。あたいだって普段はただのメス猫なのね。春先には発情するし、またたび吸えばトリップするし。だからさ、その辺もっとフランクに行こうよって話。

 あたい今まで雑誌でインタビューってされたことないのよ。意外っしょ?なんかイメージ壊れんのビビって事務所が許してくんないのね。まあ事務所っつうかサ○リオなんだけどさ。今回は他ならぬ「ぴあ」さんのたっての頼みってことでしぶしぶ、それでもしぶしぶよ? オーケー出たんだから。釘刺されましたよ、くれぐれも猫かぶってろって。最初から猫だっつの。なんちて。ウケるっしょ? 今のウケるっしょ?

 でもね、イメージのこととやかく言うんだったら、まずあれやめてほしいのよ、「ご当地○ティ」ってやつ。最初に北海道で「まりも○ティ」やらされたときは、あたい屈辱で泣いたもん。ほら、それまで一応正統派アイドル路線で売ってたからさ、アイドルがかぶり物するようになったらおしまい、みたいなプライドがあったのね。それに、猫にまりも被せようって発想がシュールすぎてついていけなかったし。今じゃもう慣れたけど。牡蠣とか落花生とかゴーヤとかかんぴょうとかひと通り被ったから。かんぴょうって、ねぇ。

 こないだも箱根の強羅に行かされたのね。だいたい「ゴウラ」って、響きがマッチョだし字面もヤクザだし、なんかヤンキーの子供の名前みたいじゃん。○ティちゃんっていうあたいのブランドイメージと正直かち合わないなぁって思ったのよ。そしたら案の定、やらされたの「黒玉子○ティ」よ? このあたいが顔黒塗りしたのよ? でも、一番キツかった仕事は小田原の「かまぼこ○ティ」かなぁ。かまぼこの断面にあたいの顔だけ「機関車トーマス」みたいにくっついてんの。しかも紐ひっぱるとその顔がところてんみたくニョーッてせり出してくるのよ。不条理一周して笑ったねあれは。

 あたいがそうやって地方にドサ回りしてるおかげでみんな食えてんのよ。蛙もペンギンも、客の見てないとこじゃあたいのこと「姉御」って呼んでますから。それにここだけの話、マイメロの中身、あれあたいだから。付け耳だから赤い頭巾かぶってごまかしてんの。なのにギャラは一人分っておかしいっしょ? ぴあさんからも言ってよ。

 ちょっと吉岡、カルカンまだあ? ……あーあ、ミ○キー獲って食いてぇなぁ。

(初出:『Weeklyぴあ』2003年9月29日号)

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【2023年の追記】

自分で言うのも野暮ですが、全24回あるこの連載の中でも一、二を争うくらい好きな回です。私のイメージとしては、キティちゃんのかぶりものをした阿部サダヲが、こちら側に雑誌編集者がいる体で一人芝居しているのを想定して読んでもらえると幸いです。

この連載は、今考えても「これ、よくこのまま載せてくれたなあ……」と思うほど、どれだけ芸能人や固有名詞を茶化してもスルーだったのですが、唯一この回だけは「広告主だから万が一何かあるとまずい」という理由で、「○ティちゃん」「サ○リオ」「ピューロ○ンド」が伏せ字になったのを覚えています。

ていうか、伏せ字にした程度じゃ何も覆い隠せていないと思うのですが、本当に社内で問題になったりはしなかったんでしょうか。私が担当編集だったら、ひよって全部書き直しさせたかもしれません。だって、著名な作家ならともかく、これがデビュー作の無名の大学生ですよ?

「ぴあ」というど真ん中のエンタメ情報誌にもかかわらず、業界の事情を何ひとつ知らずに毎回のびのびと芸能人の悪口を書いていた私に、「おもしろくない」以外の理由で一度も原稿をボツにしなかった当時の担当編集の方には、本当に頭が上がりません。

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