アイスクリいぬはこうして生まれた
(自称)カプセルトイクリエイターのフクサワです。
毎度おなじみTAMA-KYUさんより新作カプセルトイ「アイスクリいぬ」が2021年7月27日付で発売となりましたので、記憶が新鮮な内に開発エピソードなんかをお届けしようと思います!
アイスクリいぬの特徴
まずは本作の特徴から。アイスクリいぬはその名と風貌の通り、アイスクリームのような見た目をした犬のキャラクターです。
「◯◯のように見えて実は◇◇」といった具合に、見かけにトリッキーな仕掛けを施しがちな虚匠フクサワの作品らしく、カップに入れた状態での後ろ姿は一見するとアイスクリームそのもの。パッと見では動物キャラクターに見えない、リアルなアイス感にまずこだわりました。
そして正面を向くとアイスの一部に顔がついていてイヌであることがわかる、そんなギャップのあるキャラクターを目指してデザインしました。
食べ物とどうぶつの掛け合わせはキャラクター企画の定番ですが、本作は犬とアイスの両モチーフをただ組み合わせただけに留まらず、「犬とアイスそれぞれの特性」をプロダクトとして取り入れられるよう、機能面や設計面でも工夫を凝らしてキャラクターをデザインしています。
ポイントは脚の位置と形状で、犬のように "後ろ足立ち" させられたり、アイスのように2段3段と重ねられたりする仕掛けを施しました。犬らしくスタンディングし、アイスらしくスタッキングもできる、これがアイスクリいぬの特徴です。
この2つの特性により、アイス屋さんでアイスを2段3段と重ねるあの光景を再現できたり、或いは後ろ足立ちをさせることで目線を斜め上に向けられ、机の上など低めの位置に飾った際でも飼い主と目が合いやすくできるようになりました。
特に後者の「目が合いやすく」はキャラクターデザインを進める際にもこだわったポイントです。私はこれまでも複数のカプセルフィギュアを企画してきましたが、いざ現物を飾ろうとすると目線の設定が難しいなとかねがね思っていました。
例えば顔が真正面を向いているフィギュアの場合、デスクなどに飾ると目線が机上と並行になり、下の写真にある「単三にゃん池」のように鑑賞者と目が合いません。
それならばと顔が斜め上に向いたポーズのフィギュアを作ると、デスク上に置けば自分と目線が合いますが、逆に位置が高めの棚などに飾ると、下の写真にある「カプセル暮らし・羊」のように完全に天を仰ぐことになります。
こういった目線の設定を任意で調整できるための解決策として、本作では4足立ちと2足立ちの2ポーズで飾れるという2WAYスタイルを採用することにしました。(※2足立ちといっても、実際には2本の後ろ足とお尻の3点で立つことになります)
実際に仕上がったフィギュアを設置してみるとこれがなかなか意図通りで、飾る場所を選ばずフィギュアの目線を調整しやすくなったな〜と実感しました。アイスクリいぬを迎え入れていただいた飼い主の皆様は是非お試し下さい!
開発経緯と没ネタ集
アイスクリいぬの原案は遡ること3年ほど前、今回同様に「食べ物×動物」のキャラクター雑貨を企画していた際に生まれた「ソフトクリーヌ」というフィギュア&ペンスタンドのアイディアが元になっています。
この時のソフトクリーヌは数社と製品化を検討するも諸々の事情でボツに。そこからしばらくはお蔵入り企画として寝かせていましたが、1年半ほど前からTAMA-KYU さんへ企画提案させていただく機会が増えたことから、案を練り直すことに。
そして昨年9月、ソフトクリーヌをよりカプセルフィギュアに合ったキャラクターデザインの「ソフトクリイヌ」に練り直し、さらにその派生として半球状でスタッキング機能を備えた「アイスクリイヌ」や、当時流行していたマリトッツォも意識しつつつの「シュークリイヌ」など、「クリイヌシリーズ」として企画をブラッシュアップしていきました。
この経緯から当初の個人的な本命は「ソフクリイヌ」(或いはソフクリイヌとアイスクリイヌのセット)でしたが、その後企画会議を経た結果、TAMA-KYU さんからは「アイスクリイヌ」でいきましょうとのことに。やはりスタッキングできる用途面や同一形状で複数のバリエーションを展開できるところがカプセルトイ向きだったのかな⋯(ソフトクリイヌ&シュークリイヌも続編の機会があればと展望しています⋯!)
その後は年末までに諸々の仕様が固まり(コーンは無しでオリジナルカップ入りのカプセルレスに決定)、翌2022年夏の発売目標から逆算して諸々のスケジュールが決まり、年末年始頃にはせっせとデザインのディテールを検証しつつ三面スケッチを描き起こしたり
2月頃には原型をチェックしながら細かな形状修正を行ったり
春先には塗装サンプルを確認しながら微妙な色合いの調整や模様の修正を行ったり⋯
名称をアイスクリーム感重視でカタカナ表記の「アイスクリイヌ」にするか、可愛らしさ重視でひらがな表記の「あいすくりいぬ」にするかで複数の見解が出て、最終的にカタカナ+ひらがなの「アイスクリいぬ」に決定したり、
一部の塗装見本2ndがイメージと合わずに発売一ヶ月ほど前の時点で塗装変更の判断を下したり、ギリギリの行程からどうにかこうにか納得のいく仕上がりまでにじり寄り、夏真っ盛りの7/27に発売へとこぎつけました。
そんなわけで無事誕生した見た目も涼し気なアイスクリいぬは人気フレーバーを中心とした全6種のラインナップ。表情にもバリエーションがありますので、ダブルやトリプルと言わずにクワッド・クインティ・セクタ⋯とたくさん揃えて積み上げてみてくださいね。
余談
余談ですが、そもそもモチーフとしてソフトクリームやアイスクリームに執着した原点は学生時代にまで遡るような感覚があります。私はアルバイトとして5年間ほどファミレスのフロア店員を勤めていた時期があり、膨大な数のソフトクリームを巻き、アイスクリームを掬ってきました。ソフトの巻き加減や先端のフニョっとした尖り具合、アイスのザラッとしたテクスチャやディッシャーで掬って盛り付けた時にできる独特のヘリなど、当時刷り込まれたアイスの印象がアイディア出しの段階から随所で反映されました。傍目からでもわかりやすい例がアイスのヘリ部分で、原型制作用のスケッチには注釈付きでリクエストし、製品でも見事に再現することができました。発案者としても随所で満足のできるクオリティに仕上がったと思います!
アイスクリいぬの飼い主の皆様はぜひお手にとってアイスのディテール表現もご堪能下さいませ。