薬が手放せない呼吸器持病持ちでも妊娠できるのか母性内科で聞いてきた
中度の気管支喘息、複数食物アレルギー(ナッツ・魚介類全般・一部フルーツ・動物)持ちで10年以上薬が手放せないアラサーでも本当に妊娠できるのか?持病持ちの妊婦を診療科の垣根を超えて診療してくれる母性内科の外来に行って専門医に聞いてきました。
※取材ではなく個人的な体験談になりますので実際行ってみたらこんな感じだったルポとして読んでください
妊娠中は花粉症の薬が飲めない?
妊娠した知人が「妊婦 / 授乳中だから花粉症の薬が飲めなくて辛い」と言っているのを聞いた時、妊娠すると風邪薬だけじゃなくて抗ヒスタミン剤も飲めないの!?と衝撃を受けた。
喘息とアレルギーの持病がある私は季節にかかわらず花粉症の薬に使われる抗ヒスタミン剤を含む3つの薬を10年以上常用しており、特に抗ヒスタミン剤は1度でも飲み忘れると一気に体調が悪くなるので服用できないと生活がままならなくなってしまう。ちなみに私が服用している薬は以下の3種。
・抗ヒスタミン剤(アレルギー症状を抑える。花粉症の薬と一緒)
・ロイコトリエン受容体拮抗薬(喘息や鼻炎を抑える)
・吸入ステロイド(喘息発作予防)
これまでも何度か減薬を試したが弱い薬に変えた途端、喘息症状の悪化と湿疹が出るので減らすことは難しい。
自分のキャリアや精神的に親になる自信が持てず結婚してから4年ほど妊活を先送りにしていたが精神云々の前に物理的に親になれないのでは?という疑問が出てきた。
本当に出産するかどうかは置いておいて、自分が妊娠出産できる体なのかは知っておいて損はない。
薬を飲んでも妊娠ができるのか?服用しながら妊娠する場合、胎児にどんな影響が出るのか?本格的な妊活に入る前準備として情報を集めようと決めた。
食物アレルギーの妊婦、胎児への影響は?
薬と同じくらい不安だったのがアレルギー除去食による栄養の偏りで胎児によくない影響が出るんじゃ無いかということ。特に私は魚介類アレルギーのためDHAをほぼ摂取できない。
母体のDHA不足が子供の発達に影響するという記事を読んで以降、これがとても心配だった。また様々なメディアで「妊娠してからは和食を中心とした生活を!」と書かれていても、ほぼ全ての和食に魚が使われている関係上、私は洋食を中心とした食生活を送らざるを得ない。アレルギーがあるとはいえ食生活の偏りが胎児にどのような影響が出るのか専門家からのアドバイスが欲しかった。
ちなみに「妊娠 アレルギー」で検索をかけても子供に食物アレルギーがあるケースは載っていても妊婦本人に食物アレルギーがある場合の情報は載っていなかった。一般的にアレルギー自体が大人になると快方に向かうことが多く、私のように大人になってから重症化する方が珍しいのだから仕方がないのかもしれないが…。
ハイリスク妊婦に該当するか?
妊娠準備をするにあたって地味に気になっていたのが自分はハイリスク妊婦に該当するかどうか。
不妊治療など実際に妊娠しないと分からない項目などもあるので正確な点数は加算できないが、妊娠リスクスコアでは 初産+気管支喘息=3点
「ハイリスク妊娠に対応可能な病院と連携している病院での受診を検討してください」と書かれてはいるものの、個人病院でアナフィラキシー入院歴のある患者を本当に診てもらえるのか?という疑問があった。
ハイリスク枠で優先的に枠が取れるならそちらの方が安心だし、逆にハイリスク扱いにならないのであれば選べる病院の枠が広がる。上の2点に比べると些細な疑問ではあるが、人気病院は分娩予約も争奪戦という噂も聞いた。聞けるなら余裕のある早いうちに聞いておきたいと思った。
アレルギー体質の遺伝について
これは私よりも旦那が気にしていたこと。成人してからアレルギーが酷くなった私と違い、旦那は幼い頃重い食物アレルギーに苦しめられていたらしい。その治療はかなり壮絶だったらしく、両親二人ともアレルギー体質だと子供も重度アレルギーになるのではないかと不安がっていた。個人的には両親共に花粉症持ってる人なんて日本にたくさん居るし今時珍しくないのでは?とも思うが私自身は幼少期にアレルギーで壮絶な経験をしているわけでは無いので実際どうなのか聞いてみることにした。
診療科の壁にぶちあたる
まずはかかりつけの呼吸器科の医師に妊娠・授乳中に今飲んでる薬を飲んでも良いか聞いてみた。
呼吸器Dr.「吸入ステロイドは肺にしか作用しないことがわかっているので服用し続けて大丈夫。他の内服薬に関しては産科の専門医ではないので確かなことは言えない。産婦人科の先生に聞いてもらうのが確実だと思うよ」
当たり前だが呼吸器科の医師は呼吸器の専門家であって産婦人科の知識は持ってない。なら産婦人科の先生なら答えてくれるのでは?と子宮頸がん検診のついでにかかりつけだった妊婦検診も扱っている産婦人科の医師に聞いてみた
婦人科Dr.「呼吸器のことは専門外なのでちょっと分からない。呼吸器科の先生は何て?」
私「婦人科の先生に聞いてくれと言われました」
婦人科Dr.「そうかぁ〜」
婦人科の先生は逆に呼吸器科のことには詳しく無く結果的に診療科をたらい回しにされてしまった。
この婦人科の先生から実費診療でよければ「妊娠と薬外来」という診療科があることを教えてもらったが、診療費がいくらかかるか分からない上に、あくまで薬と妊娠だけの相談なので食事の偏りによる影響については答えてもらえない。
呼吸器内科と産婦人科両方の科に詳しい医師はいないのか!?
そう思っていた時、偶然妊娠と薬外来のリストを掲載していた国立S育医療センターのホームページで母性内科という診療科があるという事を知った。
母性内科とは
母性内科は全国でも数少ない診療科で、1981年に日本で初めて大阪母子医療センターに設置されました。その後、1998年に神奈川県立こども病院に設置され、2002年に当センターの開設に併せ、成育医療の一貫として母性内科が設置されました。母性内科の目的は、「各種合併症妊娠及び妊娠に伴う母体の変化を、診療科の垣根を越えた総合的見地から診察・治療し、その病因・病態の解明や治療法を開発すること」です。
引用元:国立成育医療センター 母性内科HPよりhttps://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/
ざっくり言うと産婦人科と慢性疾患持ちの妊婦の診療科(内科など)両方の知識を併せ持ち、持病持ちの妊婦の相談・診察・治療をしてくれる診療科といったところだろうか。
まさに私が求めていた診療科じゃないか!
S育医療センターの場合、糖尿病やリウマチ。高血圧など喘息を含めたかなり幅広い持病に対応しているようだった。妊娠前の相談もOKということだったので、アレルギーによるDHA不足の件も含めてこちらで相談することに決めた。
ちなみにこの母性内科。かなり珍しい診療科のようで医師の知人に聞いても「そんな科があったの?」という反応だった。かかりつけ医と産婦人科間で診療科をたらい回しにされている妊婦はけっこう多いと思うので幅広い地域で母性内科の診療が広まると良いと思った。
紹介状を書いてもらう
S育医療センターの母性内科を受診するためには紹介状が必要になる。(紹介状がない場合選定療養費がかかる)
本来ならかかりつけの婦人科医か喘息で通院している医師に書いてもらうのが良いのだろうがあいにく引っ越したばかりでそれまで通っていたかかりつけの病院はは遠く、近場で通っている婦人科の病院はまだ無い。
喘息で通院している病院は母性内科が無いとはいえかなり規模の大きい病院のため少々頼みづらい…。やむを得ず初診で行った婦人科に事情を話して紹介状を書いてもらった。
受付〜問診
電話で診察予約を取りいざ診察!1ヶ月以上待たされるかと思ったが意外と2週間程度で診察にありつく事ができた。
どのくらい診察時間があるか分からないため診察当日スムーズに聞きたいことを聞けるよう、事前に聞きたい事のリストを作っておいた。
・薬は服用できるのか?妊娠するまでに薬を減薬した方が良いのか?
・DHAが摂取できない事による胎児への影響
・自分はハイリスク妊婦なのか
etc...
実際にS育医療センターに出向き初診受付をすると5〜7枚程度の問診票を渡された。
これが結構な量で正直書くのが大変。持病の事からこれまでの生理の周期や開始年齢。母親が自分を出産した年齢。風疹などのワクチン接種歴。既婚か未婚かこれまでの妊娠出産歴など問診内容はかなり幅広く、書き切るのに結構な時間がかかってしまった。自分の母子手帳があれば持っていくと問診票を書くのが楽になるかもしれない。
アレルギー度合いの参考になればとかかりつけ病院で受けている血液検査のデータも持っていった。
いざ診察
問診票を提出した後しばらく待っているとほどなくして診察室に呼ばれる。今回私を診察してくれたのは母性内科所属の呼吸器科の先生。インターネットで調べても、主治医に聞いても分からなかったことをここぞとばかりに聞いてみた。
Q: 今飲んでいる薬は服用できるのか?減薬は必要?
A: 現在飲んでいる薬は全て服用できる(※偶然胎児に異常が無いとされている薬のみ処方されていた)むしろ減薬して喘息発作が起こったら困るので薬は減らさない方が良い。
Q:DHAが摂取できない事による胎児への影響
A:正直そこまで影響は無い。むしろタンパク質や炭水化物など必要な栄養素がバランスよく取れる方が重要。(※肉は食べられるので問題ない)DHAを取らないことで障害リスクが上がるという説は医療現場ではそこまで重要視されておらず、魚由来のサプリでアナフィラキシーを起こす方が悪影響になる。
Q:自分はハイリスク妊婦なのか
A:ここまでアレルギーが多いとハイリスク妊婦で間違いない。
Q:出産する病院の選び方
A:ハイリスク妊婦対応かつ呼吸器科の専門医が当直でいる病院がベスト
Q:アレルギー体質の遺伝について
A:両親二人ともアレルギーの場合は、最初から子供にアレルギーがある前提でアレルギー科に予防で通うのもアリ
※あくまで私の病状や服薬事情を踏まえた上での先生の回答になります。この記事をもとに何かしらのアクションを起こしても一切責任を負いません。
母性内科を受診したら不安が消えた
他にも細かい質問をいくつかさせてもらったが体感で1時間弱しっかりお話を聞いてもらえた。呼吸器科と産婦人科。母体と胎児両方の観点からバランスの良い答えを毎回出してくれるので納得できる回答が多く、これまでたらい回しにされて抱えていた不安のほぼ全てが解消出来た。
特に薬に関しては「服用を止めない方が良い」という情報を聞かなかったら無理に薬を止めようとしてアレルギーや喘息が悪化し、胎児にかえって悪影響な状況を作っていたかもしれない。
出産する病院を選ぶポイントなども教えてもらえ出産前の心構えを作る良い機会にもなった。持病持ちでも妊娠できるかどうか不安な人はぜひ母性内科の受診を候補に入れてみて欲しい