🎖️ 青ブラ文学部 優秀賞|ショートショート|愛も変わらず
遠足を翌日に控えた小学生のようにワクワクしている。似たようなものだな。僕の場合、明日は待ちに待ったデートだ。仕事の都合で僕だけ海外に住んでおり、同棲や結婚はまだ難しく、デートもたまにしかできない。だからすごく貴重。
それなのにこの遠距離恋愛が6年も続いているのはありがたいことだ。きっと彼女と相性が良いのだろう。
お気に入りの服はクリーニングに出しピカピカでシワの1つもない状態にし、クローゼットでスタンバイさせてある。靴も洗った。髪は3日前に美容師に切ってもらい、眉毛と鼻毛も整えた。
さて、問題なのは髭だ。口髭と顎髭をたくわえている状態なのだが、どうすべきだろうか? 綺麗さっぱり剃り上げてしまって清潔感を前面に出すのも良い。残してダンディさを醸し出すのも全然アリ。剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。
彼女の住んでいるマンションまでレンタカーで迎えに行った。久しぶりに会って冗談抜きに涙が出そうだ。それからランチをとるため予約しておいたレストランへ向かう。車中では彼女と熱心に語り合う。もちろんこれまでも電話で近況報告などはしていたが、実際に会って話すとやはり臨場感(というか)が違う。これまでにあった嬉しかったこと、あるいは悲しかったこと……。話題は尽きそうにない。
ふと僕は思い出して言った。「そうだ、髭を剃るべきか否かずいぶん悩んでね。結局、顔の右半分は剃って、左半分は残すことにしたよ。髭がない方が君の好みなら僕の右側を歩いてね」
彼女は笑いながら返した。「うん、気づいてたよ。人間性の変わらないあなたってとってもステキ。実は私も靴をパンプスとスニーカーのどちらにするか迷って、結局、右足はパンプス、左足はスニーカーにしたの。私たちって本当に相性が良いよね」
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人生に必要なのは勇気、想像力、そして少しばかりのお金だ——とチャップリンも『ライムライト』で述べていますのでひとつ