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ショートショート|大いなる期待のレシピ
大きなお鍋を用意します。そこに水を注ぎ、〈目覚まし時計を気にせず眠っていい安心感〉を入れます。
火にかけてください。焦げつかないようヘラで軽く混ぜながら、〈平日に学校や職場で日曜日になったらこれをやろうと考えていた計画〉を放り込みます。うっすら埃をかぶっている本の読破だったり、ジャングルの様相を呈している庭の草刈りだったり、お好きなもので構いません。多くの場合、計画とは異なりロクに投入できませんが、間に合わせの材料で構いません。
それから〈せっかくの日曜日が終わってしまう寂寥感〉を加え、塩と胡椒で味を整えたら完成です。器に盛りつけ、粉パセリなんかも振りかけるとより見映えが良いです。
きっと期待したほどは美味しくないです。しかし日曜日とはそういうものです。改善の余地があるからこそ、逆説的にそれが完璧な日曜日なのです。朝に道を聞かば夕べに死すとも可なりという言葉もありますが、道を聞けなかったからこそ逞しく生きていける——我々は日曜日を糧にすることで、それを完璧たらしめるのです。
ハヴァ・ナイス・デイ!
第3回 私立古賀裕人文学祭
主催 古賀裕人氏
レギュレーション テーマ 完璧な日曜日
指定時間 1時間以内に書き上げること
📉 落選
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