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ショートショート / 詩

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#毎週ショートショートnote

🎖️ ピリカグランプリ すまスパ賞|ショートショート|誰モガ・フィンガー・オン・ユア・トリガー

「私がピストルの引金を引くのは上司に頼まれたからなの。決して私自身が好き好んでではなく……」と彼女は呟き、静かに水を飲んだ。 「それが役割ですから」と僕は返したが、自分でも気の利かない発言だなと思いゲンナリした。それで慌てて付け加えた。「あなたのおかげで、静止した世界が動き出すんです。その先には喜びも悲しみもあるけれど、それはあなたのせいじゃない。まずは誇りを持たないと」  彼女と僕は仕事仲間だ。だから彼女の苦悩も分かるつもり。上からの指示をこなす日々に嫌気がさすこともある

ショートショート|よるはあそぶ

 夜中、尿意で目が覚めた。布団から体を起こし眼鏡を探す。……ん? ないな。……睡眠中に無意識に私の腕が動き、定位置——枕元、読書に用いた文庫本の上——の眼鏡にぶつかりすっ飛ばしたのだろうか。  眠いし電灯を点けるのも億劫だし朝になったら探すことにした。トイレに行き用を足すという作業は近視であっても困難ではない。と高を括っていたが文庫本を踏んで足を滑らせ尻餅をついた。前言撤回。  朝、起床。仕事を全うしているのに憎まれて頭をぶっ叩かれる目覚まし時計って可哀想、などと考えている

ショートショート|お天道様が見ている

 アメリカが「世界の警察」と呼ばれるように太陽系のいわゆる警察は太陽その星であり、決まって燃えるような熱い心で取り締まっている。 「おい火星よ、『見かけの等級』という言葉を知らんとは言わせんぞ」と太陽は問い詰めた。火星は答える。 「は、はい。絶対的な明るさではなく、地球から見た際の明るさのことですよね……。距離によって見え方は違うと。存じてますよ、ええ……」 「お前には地球に賄賂——鉱物のオパールだそうだな——を渡してこの『見かけの等級』を改竄した容疑がかかっている。逮捕は

ショートショート|京都タワーという名のロウソク

「京都タワーって見た目がロウソクみたいだよな。細長いし、胴体は綺麗な白で、頭の方が赤っぽくて」 「ここだけの話、素材の半分は本当にロウでできてるんだよ。耐久力のためにもう半分は鋼だけど」 「またまた」と青年は笑い、こう続けた。「やっぱり関西の人間はウィットに富んでる」  8月、京都五山送り火が執り行われる。東山如意ヶ嶽に炎でダイナミックに描かれた《大》の字は印象深い。  さて、ではなぜこの行事が開催されているか、その理由についても把握している人間は少ないだろう。  そう、京

ショートショート|通信通信

 函館市のホテルで伝書鳩パーティーが開かれた。諸国の著名な飼い主が親睦を深める……のが建前だが、互いをライバル視しているためハシビロコウ——という鳥がいる——のように彼らの目つきは鋭い。 「半年前にな、アルハンブラ宮殿の庭からモン・サン=ミシェルの尖塔までウチの鳩が飛んだよ。まさに長旅だからトリップではなくジャーニーと呼ぶに相応しいじゃないか」 「距離の話をするならこっちも黙ってないよ。俺はオーストラリア人だがね、パースからブリスベンまでウチの鳩が手紙を運んだ。あの広漠な大

ショートショート|やはり弁当は心を込めて

 新しく弁当屋ができた。よく使う類のお店が近所にできるのはラッキーなことだ。  当然だが内装はピカピカだ。やつれ気味のスタッフが応対してくれた。店主かもしれない。たぶんまだバイトを多くは雇えていないだろうから。正面上部の壁にメニューが書き並べられたボードがかかっている。 「スタミナ弁当というのは?」と僕は尋ねた。 「疲れがとれる食材の豚肉やニンニクがメインです。この夏を乗り切れること間違いなしですよ」とスタッフは答えた。ふむふむ。 「こちらの精進弁当は植物性の食品だけが使わ

🎖️ 『毎週ショートショートnote』 ピックアップ|ショートショート|茶道・サ道・鎖道

 僕らは重大な何かを忘れている気がしながら、そしてその懸念すら忘れようと努めながら日々を生きていると思いませんか? 「サウナ——銭湯とかにあるあの暑い部屋のやつね——を存分に楽しむ活動が『茶道』みたいに『サ道』って呼ばれてて人気らしいよ。冗談じゃなくて本当の話」と彼女はハンバーグをナイフで切りながら教えてくれた。 「へえ、活動そのものも面白そうだけど『サ道』って響きがなんだかコミカルで良いね」と僕は和風パスタをフォークで巻きながら返した。ちょっとうまいこと言うじゃないか。